生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

13 「私の胎児は私が使う」

中絶胎児の利用は、胎児の扱いについて誰が最終的な決定権を持ちうるのかを改めて問うことになった。

中絶胎児の組織を使って治療を試みている病気の一つにパーキンソン病がある。パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」が減少する原因不明の病気で、身体の震えなどの症状が年齢とともにひどくなる。現在、アメリカのパーキンソン病患者は50万人から150万人と言われている。
患者に、 希望を与える新しい治療が始まったのは10年ほど前のことだ。アメリカのコロラド大学で、胎児細胞を使った移植手術がおこなわれるようになったのだ。
この手術は、パーキンソン病患者の脳に細い管を差し込み、その管から胎児の脳細胞を移植するのである。ただし、移植手術をおこなっても、病気が完全に治るわけではない。

パ-キンソン病の父を持ったレイ・ライスもこの実験的治療法の話を耳にし、これこそが自分の父親を救う最後の手段ではないかと思った。父親のパーキンソン病は、薬物治療では効果が得られず、状態は悪化していた。レイは一つの案を父に打ち明けた。それは、彼女が妊娠して、その胎児を中絶すれば、胎児の細胞を父親の脳に移植できるという考えだった。父親は熟慮の末、娘の案を断った。
アメリカでは胎児組織が乱用されないように基準を設け、その中では以下のことを禁じた。

(1) 胎児組織の提供に対して代価を受け取ること

(2) 胎児組織を提供する人が指名した人へ胎児組織を移植すること

(3) 胎児組織を提供する人の親類へ胎児組織を移植すること

1998年の時点でアメリカの15の州では胎児組織の利用を法律で禁止していた。
1996年、州法で胎児利用を禁止しているアリゾナ州で、中絶の権利を主張する団体とパーキンソン病患者が一緒になって、州に対する訴訟を起こした。弁護士によれば、胎児組織の利用の禁止はアメリカ人が自分の病気に有効な治療と研究を受ける権利を侵害していることになる。さらに弁護士は「このような権利が奪われる一方で、既に死んでいる胎児の地位があまりに高められようとしている」とも語っている。
一方、中絶に反対する人々は、胎児組織が治療に使われることを知れば女性が何のこだわりもなく中絶をおこなうようになり、さらに、胎児組織が病気の治療にますます利用されるようになれば、中絶が禁止できなくなるのではないかと恐れている。

あなたは、中絶した胎児の組織を治療に使うことは認められると思いますか。

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