生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

08 「5人の親、でも私は誰の子?」

生殖医療の進歩から、子どもを希望する人たちは、養子をもらう以外の方法で、遺伝的つながりの全くない「自分たちの子ども」をもつことができるようになった。

アメリカ、サンフランシスコに住むジョンさんとルアンさん夫妻は子どもを望んでから6年経っても妊娠できず、代理母に依頼することにした。夫妻は、生まれた子どもを実子として育てる旨の代理母契約をパメラさん(37才)と結び、彼女には出産後1万ドル支払われることになった。また依頼した夫妻はどちらにも生殖能力がなかったため、精子と卵子も第三者からの提供をうけた。

1995年4月ジェイシィーは生まれた。ジェイシィーは、卵子の提供者、精子の提供者、代理母、そして依頼した夫妻の合計5人の親をもった。
しかし、依頼した夫妻は、ジェイシィーが生まれる1カ月前に離婚の申し立てをしていたため、代理母のパメラさんは、自分が愛情ある家庭で子どもを育てようと、裁判所に養子にするための申請をした。しかし裁判所は彼女にはそれを認めず、依頼人であるルアンさんをジェイシィーの法的後見人としたが、親権は認めなかった。
ジェイシィーの出生から6カ月後ルアンさんはかつての夫ジョンさんから月386ドルの養育費を求める裁判を提起した。しかし彼はジェイシィーをうみ出した精子も卵子も提供者からのものという理由から、法的父親でないと主張し、養育費の支払いを拒否した。カリフォルニア州法では、父の資格は遺伝子上の父、養父、子どもが生まれたときの母親の結婚相手、子どもに扶養を施している者を指すが、彼はこのどれにも当てはまらなかった。
1997年9月、カリフォルニア州オレンジ郡第一審裁判所は、ジェイシィーには法的両親はおらず、よってジョンさんには養育費の支払い義務はないと判決を下した。この判決から、5人の親をもつジェイシィーに法律上の親は存在しないことになった。
ルアンさんは、実子として育てることを希望し、上訴した。
1998年3月、カリフォルニア州中間上訴裁判所の判決が出た。依頼した夫妻は生まれた子どもと遺伝的関係がないとしても、夫妻が妊娠・出産に関わったときの意思が重要として、彼らがジェイシィーの親であり、養育する責任があると判決を下した。さらに、妻に人工授精を承認した夫はその子への責任があるとするカリフォルニア州法から、すでに離婚しているジョンさんにはジェイシィーが18才になるまで養育費を支払うことが決められた。3年におよぶ闘争の後、ジェイシィーはようやく法的両親をもつことになった。

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