生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

07 「やはり、親は私」

代理母として子どもを産んだ女性が、自分にも養育権があると主張したのが「ベビーM裁判」であった。

アメリカ、ニュージャージー州のビル・スターン(38才)とベッティー・スターン(38才)夫妻は、自分たちの子どもを希望したが、妻が多発性硬化症と診断されたため妊娠のリスクを考え、ニューヨーク不妊センターを訪ね、ニュージャージー州の主婦、メリー・ベス・ホワイトヘッド夫人(29才)と代理母契約を結んだ。彼女への報酬は、生まれた赤ちゃんの養子契約書に署名し、子どもを引き渡した後で、1万ドルが支払われると決められた。
メリー・ベスは9回目の人工授精で妊娠した。

1986年3月、女の赤ちゃんが生まれた。メリー・ベス夫人はその子を一目見て、他人に渡すことはできない、自分で育てたいと決意。1万ドルの受け取りと養子契約書への署名を拒否し、自分の子どもとして出生登録をした。メリー・ベス一家は子どもを取り返そうとする依頼人のスターン夫妻から逃れるためフロリダ州へ移り、その間メリー・ベスは授乳しながら自分の子どもとして育てた。
一方スターン夫妻は代理母契約をもとに子どもの引き渡しを求めて、裁判を提起。裁判所では子どもを「ベビーM」とよぶことにした。
1年後の1987年3月、ニュージャージー州第一審裁判所の判決が出た。代理母契約を適法とみなし、依頼人のスターン夫妻側に永久的な養育権を認めた。そして代理母のメリー・ベス夫人には訪問権すら認められなかった。
この判決に不服なメリー・ベス夫人はニュージャージー州最高裁判所に上訴。判決では、金銭供与を伴う代理母契約は、乳幼児売買を禁止した州法に反するため無効とされた。そして、ベビーMの父親を遺伝上の親でもある依頼人の夫ビル・スターンとし、母親を遺伝上の親であり、産みの親でもある代理母のメリー・ベス夫人とした。しかし、二人が共同で養育することはできないため、双方の家族生活を比較して、子どもの「最善の利益」という基準に従って、養育権をスターン夫妻に認めた。そしてメリー・ベス夫人には訪問権だけが認められた。
この裁判によって、ニュージャージー州では、有償の代理母契約は認められないことになった。しかし無償で、なおかつ代理母が途中で親権を主張したとき、それが認められる場合に限って禁止する理由はないとした。

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