生命操作 -復刻版-

ケーススタディ30例

03 「凍結受精卵は誰のもの?」

不妊症の夫婦が体外受精をおこない、複数の受精卵を凍結保存したが、その夫婦が離婚を決意。受精卵を「ひきとる」ことができるのは、夫か、妻か?

1988年、不妊症だったメアリー・スー・デ-ビスとジュニア・ルイス・デービスの夫妻は、体外受精をおこなうことにした。地元の妊娠クリニックで、メアリー・スーから9個の卵子を取り出し、全て夫の精子で受精した。2個の受精卵をメアリー・スーの子宮に戻したが、子どもは生まれなかった。残った7個の受精卵は凍結保存したが、その後、デービス夫妻は凍結受精卵を使うことなく、離婚することになった。 離婚手続きをおこなう法廷で、メアリー・スーは、自分が受精卵を使って妊娠するか、自分が使えない場合は他の女性に提供したいと主張した。一方ジュニア・ルイスは、受精卵の管理権が欲しいと、次の3点を要求した。

(1)7個の凍結受精卵の共同管理権を認め、それらの受精卵を夫妻共有の所有物とする。

(2)メアリー・ス-や他の女性が彼の許可なしに凍結受精卵を使うことを禁じる。

(3)(1)と(2)が認められない場合、凍結受精卵で妊娠できるのはメアリー・スーだけとする

二人の主張はテネシー州最高裁判所で争われることになった。
同裁判所は、誰も自分の意志に反して親になることを強制されないとして、ジュニア・ルイス勝訴の判決を下した。結果として受精卵は使われずに凍結保存されたままとなった。同裁判所は、受精卵の地位について「未着床受精卵は、財産でもなく人間でもなく、人間としての生命を潜在的に内包しているという点で、特別な敬意を必要とする中間的位置を占めるもの」と述べた。 メアリー・スーは連邦最高裁判所へ上訴したが、訴えは退けられ、テネシー州最高裁の判決が有効とされた。同最高裁は、離婚した夫婦のうち夫の「子どもを持たない」権利も含めたプライバシー権は、妻の凍結受精卵を提供したいという望みよりも上回ると述べた。

受精卵はヒトなのか、モノなのか、それとも判決で示されたような中間的なものなのでしょうか。

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