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若くしてがんと闘う「AYA世代」の孤独と葛藤

記事公開日:2018年03月30日

青春の真っただ中であるAYA(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)期に、がんと闘う若者たちがいます。彼らが抱える悩み・不安・葛藤とは? ここではAYA世代を15歳~30代として、がんと共に自分らしく生きる道を考えていきます。

AYA世代が抱える孤独「友だちが離れていく」

1年間にがんと診断されるAYA世代は、およそ2万人。進学・就職・結婚・出産と、重要なライフステージにあたるAYA世代のがん患者は、さまざまな問題や悩みを抱えています。

中学・高校と野球に明け暮れる毎日を送っていたKさんの夢は、六大学野球でプレーすることでした。

「もう生活の中心でしたね。野球を中心に回ってるみたいな感じでした。」(Kさん)

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そんなKさんが、がんと診断されたのは高校1年のとき。骨肉腫という骨のがんでした。左ひざに人工関節入れる手術の結果、全力で走ることはできなくなり、青春のすべてだった野球は、諦めざるを得ませんでした。

「野球がなくなった今、自分は生きてていいのかなとか、生きる意味ないんじゃないかなってところまで、考えちゃってました。」(Kさん)

Kさんをさらに苦しめたのが、深い孤独です。学校に戻ったものの、青春をおう歌する仲間との間に距離を感じずにはいられなかったのです。

「やっぱり以前とは接し方が違うというか、よそよそしかったりとか、普通にばか騒ぎできなくなっちゃってる感じ。あ、俺、多分いま同情されてるんだろうなとか。昔のような関係には戻れないのかなって。」(Kさん)

AYA世代のがん患者を多く診てきた、国立がん研究センター 小児腫瘍科の細野亜古医師は、がん患者の全体に占めるAYA世代の患者は非常に少なく、同じ境遇の人が周りにいないこと、また、AYA世代のがんについては社会的な理解も進んでいないことから、当事者はとくに孤独を感じやすいと言います。

就職・仕事の葛藤「がんを打ち明けるべきか」

孤立と並んで大きな問題となるのが、学習、進学、就職です。まず、学習の問題から見てみます。

「息子をがんで亡くした両親です。学校では、テストが受けられなかったり、出席日数が足りずに進級が難しいと言われたりで、精神的に取り残されることが苦しかったと思います」(息子をがんで亡くした親)

15歳でがんを発症した大西さんも、自らの経験をこう語ります。

「病室で勉強しようにも、抗がん剤がしんどくて、座っているのもつらい状況で、ほとんど勉強できない。高校の入試は、病院の先生が治療のスケジュールを調整してくれて、その日に合わせて外出ができるぐらいに免疫を戻して、受けられるようにしてもらいました。」(大西さん)

細野医師は主に小児がんを治療している施設で、高等科の学習支援があるのはわずか10%と、高等科の学習支援が遅れていることも指摘。「義務教育ではないが、高校生への学習サポートは必要」と言います。

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就職や仕事への悩みも深刻です。

大学4年生で慢性骨髄性白血病になった、ゆいさん。就職活動では、病気のためにさまざまな問題に直面しました。中でも最も悩んだのが、会社に対してがんのことをどこまで明らかにすべきかということです。

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「がんになったのをきっかけに内定を取り消しになった、辞めさせられたとか聞いていたので。私は、そのときは体調も落ち着いて、普通に大学も通っていたので、わざわざ、自分から辞めさせられそうなことを伝える必要はないのかなと。」(ゆいさん)

その後、ゆいさんは希望の会社に就職。しかし、がんは治っていないため定期的に病院に通っています。仕事の責任が次第に重くなる中、いつまで病気のことを隠し続けていくのか、心は揺れています。

「部長や課長が病気を知ったら、この仕事を任せるのは辞めようみたいな、変なフィルターがかかるのが怖いなというのは常にあります。今まで頑張って積み上げてきたのに、その先に行けなくなるのは、自分の能力でできなかったなら、しょうがないなと思うんですけど、自分でコントロールできないところでそうなったら絶対悔しい。」(ゆいさん)

番組には、こんなカキコミが寄せられました。

「内定をもらった後にがんのことを伝えました。最初は内定取り消しになるかと思いましたが、入院期間や治療方法を伝えることで、入社時期を遅らせてもらうことができました。」

「私はがんで仕事を即日解雇された経験があります。あのときは計り知れない感情を抱き、失うものが大きかったです。」

これから就職活動を迎える皆さんは、どう考えているのでしょうか。

「自分の場合は病気だけでなく、人工関節という障害もあるので、障害のことは伝えなきゃいけないし、隠して入って何か迷惑を起こしたときに、みんなに迷惑かかり過ぎますよね。そうなったら申し訳ないんで、最初に伝えたほうがいいのかなって思っちゃいます。」(Kさん:高校1年のときに骨肉腫)

「僕は日常生活に支障を来すような後遺症がないので、伝えても(その必要性があまりない)。就職活動するときも、伝えても何か考慮してもらえることはないし。」(佐藤さん:20歳のときに精巣がん)

一方、がんの治療を受けながら働いている人もいます。

ネット通販の会社で働いている箕輪さん。29歳のとき、乳がんになりました。その後、5年にわたる闘病を経て仕事に復帰しましたが、去年、がんが再発。迷った末に会社に打ち明け、治療をしながら働き続けたいと訴えました。

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「完治が見込めないということなので、病気と付き合って、生きていかなきゃいけない。そう思うと、治療だけの人生になってしまうのは嫌なので、社会とつながりをもちながら、働きながら、やっていきたいなと思って。」

どうしたら箕輪さんの願いに応えられるか。会社がまず行ったのは、病状やどんな治療を受けているかを、社員全員で共有することでした。その上で、抱えきれない業務を周囲の社員たちで分担していきました。

今は週に3日働いている箕輪さん。仕事ができる喜びをかみしめています。

「みんなにいろいろ迷惑かけながらやってるから、限られた時間の中でどれだけ、今担当してるやつを、売り上げ上げられるかっていうのを、みんなと一緒にできるようになって。それはすごい嬉しいの、最近。」(箕輪さん)

同じ立場の人たちに、病気があっても働けることを伝えたい、と箕輪さん。それには自分から、上司や社長に「何ができる・できない」を伝える、お互いが理解し合える環境を作っていくことが大事だと言います。

結婚・出産の苦悩 「それでも子どもがほしい」

恋愛・結婚・出産というテーマは、健康であっても悩みがつきないもの・・・。がんと闘うAYA世代の人たちは、どんな悩みを抱えているのでしょうか。

22歳のときに慢性骨髄性白血病と診断された、ゆいさん。体に合う薬が見つかり、一命は取り留めましたが、医師からは完治は難しいかもしれないと告げられます。

「がんイコール死だと思っていたので、『もう死ぬのかな』みたいな。『この先どうなるんだろう』ってことばっかり考えてました。」(ゆいさん)

人と深く付き合うことができなくなったゆいさん。恋人のいない時期が何年も続きました。そんな悩みを受け止めてくれたのが、発病してまもなく知り合った友人でした。がんであることを気づかいながら、食事や遊びに連れ出してくれました。

「薬を飲んで、気持ち悪くなってるところとか、何もできない動けないみたいなところを見ていたので、辛いだろうなって感じる部分はあったんですけど、それ以外は全然分からないし、普段の彼女の振るまいとか見てると忘れちゃうというか。そうだったんだっけみたいな。」(ゆいさんの友人)

自然に縮まっていった、ふたりの距離。ゆいさんの方から、交際を申し込みました。一年半前から同棲を始め、結婚も考えるようになりました。しかし、夢が現実に近づくほどに、不安も膨らんでいます。

ゆいさんは今も、がんを抑える薬を飲み続けています。ふたたび症状が悪化し、命が危ない状況に陥る恐れもあります。さらに、子どもを授かるには、薬の服用を一時中断しなければなりません。恋人に両親を紹介されましたが、がんであることは打ち明けられずにいます。

「私の場合、一生治療を続けていくというところで、自分だけじゃなくて相手と相手の家族とかまで私の運命を何か背負わせていいのかみたいなのを、やっぱりずっと考えて先に進めないというか。」(ゆいさん)

「確かにね、僕の方の両親に話すってね。病気のことだったり、子どものことを話すっていうところは、両親もびっくりするとは思うし、多分親だったら、まずは(孫を)ほしがるだろうなっていうのはもちろんあるので。」(ゆいさんの恋人)

AYA世代にとって、出産は大きな問題です。
番組のカキコミにも、妊娠・出産への不安が多く寄せられています。

「治療の結果、20歳のときに子どもが望めない状態になってしまいました。その後、結婚を意識した方もいましたが、妊娠できないことがネックとなることもありました。」

「恋愛や結婚も考えておりますが、子どもができない現実を考えると、なかなか前に進めず、恋愛にも消極的になってしまいます。同世代であろう家族を見ると時々悲しくなることもあります。」

AYA世代の出産について、細野医師はこう説明します。

「専門用語で、生殖能力のことを妊よう性といいます。がんになったことで妊よう性が失われたり、その能力が低下したりすることには、幾つか要因があります。一つは、生殖臓器の損失。例えば子宮や卵巣、精巣にがんができて、その臓器を切除した場合です。もう一つは、がん治療による影響です。生殖臓器以外のがんでも、放射線の照射や抗がん剤の治療の薬の影響で、生殖機能にダメージを与えてしまうことがあります。」(細野医師)

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とはいえ、治療したら妊よう性がすべて失われるわけではありません。

「妊よう性は、薬の種類や量によって変わってきます。抗がん剤治療などによって、一時的に妊よう性が低下しても、時間が経って戻る場合もあります。最近は、妊よう性を保ちながら病気を治そうとする治療方針に変わりつつあります。」(細野医師)

問題は、大変な治療の最中に、妊よう性についても考え、判断していくのは容易ではないということです。皆さんはどう向き合っているのでしょうか。

20歳のとき、抗がん剤治療を受けていた佐藤崇宏さんは、将来、子どもをもつことができるのか不安を抱いています。

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「やっぱり子ども、かわいいですよね。当時だって、もうちょっと考えていたら、違う選択肢を取っていたのかなとか。そういうことを想像すると、後悔というか。」(佐藤さん)

佐藤さんが精巣腫瘍と診断されたのは、大学受験を間近に控えていた頃。左の睾丸に、がんができていました。治療は急ピッチで進められ、診断の翌週には腫瘍を摘出することに。医師の説明を理解するだけで精一杯でした。

さらに手術後、医師から「再発を防ぐため、抗がん剤治療を行うのが望ましい」と提案されます。副作用によって精子を作る機能が低下し、将来、子どもをのぞめなくなる恐れもあると言います。

佐藤さんの人生に大きな影響を与えかねない重い選択。しかしこのとき、もう二度とがんになりたくない思でいっぱいでした。

「いずれにせよ、抗がん剤治療はするっていうのは、一度決意してしまった部分があるので。子どもを残すかどうかっていうことが大事に思えていなかった。今みたいに、ずっと悩み続けるテーマになるだろうなんて、想像すらしてなかった。そこが僕に本当に必要なのかどうか、さっぱり分からないままスルーしちゃったんでしょうね。」(佐藤さん)

辛い抗がん剤治療に耐え、健康を取り戻した佐藤さん。大学に進学し、アルバイトもできるようになりました。命の危険が去った今、にわかに頭をもたげてきたのが、将来、子どもを授かれるのかという不安です。

子どもを授かり、育てる喜び。それは一体、どのようなものなのか? 佐藤さんは、母の直美さんに聞いてみたいと考えました。耳が聞こえない直美さんは、女手一つで佐藤さんを育ててくれました。

直美さん:(佐藤さんは)見た目は健康そうに見えるけども、夜中には病院に連れていったり、また具合が悪くなると、夜になって、おじいちゃんの車で、病院に行ったりした。
佐藤さん:実際に、俺を育てたでしょう? 育ててきたでしょ? で、育ててみてどうだった?
直美さん:楽しかった~。あの頃はかわいかったとか、あのときも…次から次へと話して。楽しい。アルバム見ても。ねえ。

「(直美さんの話を聞いて)正直びっくりしたというか。こんな子どもだし、苦しい状態だっただろうし、その中でも楽しかったって言える子育てって一体何だろうなと。逆に悔しくなっちゃったんですよね。実際に子どもが問題なくできるような状態であったら、自分もこういう経験ができたんだなと。」(佐藤さん)

AYA世代の若者ががんになったとき、妊よう性を守るには、どうすればいいのでしょうか。

「抗がん剤治療などでダメージを受ける前に、精子や卵子を取り出して冷凍保存しておく方法があります。今はもう、ほとんどの患者さんに、その話をきちんとしてから抗がん剤治療をするのが常識になっています。でも、その治療をすぐにしなければいけない場合など、とくに女性の場合はタイミングがありますので、保存ができないケースもあります。」(細野医師)

佐藤さんはその後、思いきって医療機関を受診し、精子の状態を調べてもらう決断をします。結果は、精子の状態は少しずつ回復していて、子どもができる可能性はあることが分かりました。

最後に、AYA世代のがんの当事者の皆さんに、今の思い、社会へのメッセージを伺いました。

「僕らがんを経験した人だけじゃなくて、不妊で悩んでいる方もいる。特別養子縁組などの制度について、社会的な理解をもって、変えてもらえればいいなと思います。」(佐藤さん)

「自分も、特別養子縁組とかも選択肢として持っていきたい。子どもと向き合う、子育てをするということを、前向きに進めていけたらいいかなって思うようになりました。」(大西さん)

「がんになったことがない人が、がんはマイナスなことみたいなイメージをあまりもたない…前向きに、気軽に言える世の中、過剰に深刻ぶらないっていう風に、いつかなってくれればなって思います。」(ゆいさん)

これまで見過ごされてきたAYA世代のがん。当事者の声に耳を傾け、問題を共有して、社会的な支援へとつなげていくことが必要です。

※この記事はハートネットTV 2016年9月6日(火)放送「“AYA世代”のがん(1)闘病・進学・就職」と2016年9月7日(水)放送「“AYA世代”のがん(2)恋愛・結婚・出産」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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