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障害者雇用プロジェクト お互いを知ることから始まる“両思い”

記事公開日:2018年07月06日

今年4月から、企業に義務づけられる障害者雇用の割合(法定雇用率)が引き上げられ、障害者雇用に注目が集まっています。そんななかで始まったハートネットTV・ブレイクスルー2020→「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクト」。まず動き出したのは、発達障害のある大学生たちのグループです。果たして、両思いに近づけるのか!?

障害者雇用 すれ違いの原因は“分からない”?

今年4月に障害者雇用促進法が改正され、企業に求められる障害者の法定雇用率が2.2%(45.5人以上の企業)に上がりました。これに伴い障害者の雇用への注目が高まっているものの、働きたい障害者と起用したい企業との間でマッチングがうまくいっていないという現実があります。 そこで始まったのが「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクト」です。第1回の放送ではさまざまな立場の人が集まり座談会を開催。意見を出し合うなかで、すれ違いは雇用前から始まっていることが浮き彫りになってきました。

“両思い”実現へ向け、発達障害のある学生団体BeUの代表・名田憲史さんが第1回の座談会で提案した「障害学生のお仕事体験プロジェクト」が早速動き出しました。

画像(発達障害のある学生団体代表 名田憲史さん)

前回の収録後に名田さんがSNSでアンケートを実施すると、企業のインターンシップを希望する学生は74%にも達しました。この結果を受け、名田さんは仲間と一緒にインターンを受け入れてくれる企業を探し始めたのです。

名田さんの計画を聞いて名乗りを上げたのが、同じく座談会に参加していた町工場の経営者、大野雅孝さんです。全国各地の中小企業の経営者たちが集まる会で、インターンシップについて直接企業に訴える場を準備してくれました。

画像(障害者雇用に取り組む町工場の経営者 大野雅孝さん)

4月7日、名田さんは一緒に活動する小林暉さんとともに大野さんのイベントを訪れました。まずは経営者たちに第1回の放送を見てもらいます。真剣な表情で見入っていた経営者たちでしたが、その後名田さんが早速インターンシップの受け入れを呼びかけると戸惑いの声が。

「大学生で発達障害っていうのがイマイチよく分からないんだけど。こういう子が障害者で、っていうのが、ちょっと分からなくて…。雇う側が理解してないと進まない」(経営者)

発達障害という言葉自体は知られてきたとはいえ、その具体的なイメージはついていない方がまだ多く、よく分からないという不安感が経営者側の消極的な反応につながっているようです。

発達障害学生は製造業の人材不足を救うか

そんななか興味を持ってくれたのが、大野さんのイベントに参加していた平宮健美さんです。川崎市で町工場を経営しています。製造業にはなかなか人が集まりにくく、人材不足に悩んでいる企業も少なくありません。平宮さんはインターンシップ実現に向けて協力を申し出てくれました。

画像(川崎市で町工場を経営する平宮健美さん)

5月、名田さんたちは早速、平宮さんのもとへ。子どもたちをはじめ地域の人々とともに工場見学イベントに参加しました。

平宮さんやその仲間の経営する工場で、金属を加工する様子などを見学。さらにステンレスの板を組み合わせて貯金箱を作る作業を体験しました。

これまで町工場の仕事に触れる機会がなかった名田さんたちにとって実りある時間となった今回の見学会。また平宮さんも、町工場の仕事を知ってもらうことで興味を持ってもらえるのではないかと感じていました。

画像(名田さんと一緒に発達障害の学生団体を運営する小林暉さんと、町工場の経営者の平宮健美さん)

町工場見学に参加した小林さんは、発達障害のある人とモノ作りの現場は相性がいいのではないか、と言います。

「僕がやってみて、すごくこだわっちゃったんですよね。この隙間をどれだけ埋められるかみたいなところとか、どれだけ精巧にできるかみたいなところをやってみて、でもそれが直接製品の質につながるっていうところを感じたので。やっぱりそういうこだわりを持っている人は発達障害の人は多いので、すごく向いているなと思いました。」(小林さん)

一方で、就職活動で主な媒体から得られるのはやはり大手の企業などの情報が多く、町工場の情報は得にくい面が否めません。

「はまるところにははまるんだけれど、そもそもはまり方の探し方がよく分かっていなかったり、情報が出ていないっていうところがすごく問題かなと思っているので。やっぱり平宮さんみたいな方々と知り合えたのはすごくありがたいなっていうか、嬉しいなと思いましたね。」(小林さん)

今まで求め合っていたものが出会うきっかけにつながった今回のAction。しかし、大野さんのイベントで、経営者の方々からの意見に見られたように、発達障害がどのようなものなのかという理解はまだ広がっていないという現実があります。

出会い、知ることが両思いへの第一歩

5月下旬、小林さんたち学生団体はインターンシップを前に、まずは企業の人たちに発達障害のことを知ってもらおうと、学生と企業が本音をぶつけ合う座談会を計画しました。

平宮さんが経営者仲間に参加を呼びかけてくれたことで、当日は15人の町工場の経営者が集まりました。早速、学生と経営者が本音でフリートーク。

画像(自身の状況を経営者に話す学生)

学生A「発達障害のグレーゾーンで。」
経営者「グレーというのは、なりかけているということなのでしょうか?」
学生B「(診断はされていないものの)狭間にいるっていう感じですかね。」

日常ではどんな不便があるのか、就職する時に障害をオープンにするのか? 経営者が投げかけるさまざまな質問に、学生たちもまた自分の特性や苦手なことなどについて丁寧に答えていきます。学生の話を聞いていた経営者は次のようにアドバイスをしました。

画像(学生にアドバイスを伝える経営者)

「こういうのが苦手っていうのは伝えたほうがいいし、そっちのほうが自分にとっても楽だから。で、たぶんそういうふうにやっていると『こういうのはできないの?』って質問をしてくるようになると思うんですよね、企業側が。で、その時にできそうかどうかっていうのも、また判断していけばいい。」(イベントに参加した経営者)

小林さんはこのイベントの感想を次のように話します。

「苦手なことは言ったほうがいいよとか、障害もどんどん出していったほうがむしろありがたいというふうに言ってくれたのは、僕ら学生同士で話しているだけだと出てこない発想なので。そこはすごく良かったなと思いますね。」(小林さん)

発達障害のある学生たちの「自己紹介書」

参加した経営者の1人は学生たちの印象を次のように語りました。

「みんなすごく自分のことをすごく考えてきたんだろうなっていうのを感じましたね。世の中一般の黒いスーツ着て、就活していくみたいな流れには乗りにくい人たち。でも、とがったものを絶対に持っている人たちなので、町工場との相性っていうのはすごいいいと思います。お互いにとってチャンスじゃないかなっていうのはすごく思います。」(経営者)

「自分のことをすごく考えてきたんだろうな」と感じたという経営者。実は、自分を知ってもらおうと学生たちは「自己紹介書」を準備をしてきていたのです。

自己紹介書には、自分はどんな障害があるのか、障害者手帳や通院の有無といった基本的な情報のほか、障害の特性や配慮してほしいことについても記されています。

画像(自己紹介書の例)

例えば「曖昧な指示が苦手」という特性がある場合には、「あそこに置いて」と言われても「あそこ」がどこなのか分かりません。そこで、配慮してほしいこととして「具体的に指示をしてほしい」と伝えます。

セールスポイントも載せています。障害の特性を強みに変えてアピールするのです。

「自分の強いところもしっかり出して、強いところと弱いところっていうのをしっかり両方認識した上で、人に伝えられるようになることが働くっていう上ではすごく重要なのかなと思いました。」(小林さん)

画像(セールスポイントの例)

平宮さんもまた、こうしたイベントに誘うことで、興味を持ちながらも一歩踏み出せないでいる経営者たちの背中を押せるのではないかと感じていました。平宮さんは今回のイベントで次のような意義を感じたと言います。

「会社の中でなかなか溶け込みにくい人がいたけれど、毎朝ミーティングの時に『どんな工程でやろうか』など改めて確認しながら進めていったら、その人がどんどん才能を発揮していったっていうのを(参加した経営者の1人から)後で聞いたんですね。(こうしたイベントが)そういう人たちとの会話のきっかけを作ることにつながってきたんですよね。」(平宮さん)

そして小林さんは今後もプロジェクトを進め、実際にインターンシップを実現できる場を作っていきたいと展望を語りました。

お互いを知る工夫によって、両思いへの予感がしてきた「障害者雇用もっと両思いを増やそうプロジェクト」。第1回の放送後、プロジェクトには約200件(放送時点)もの反響が寄せられています。特に多かったのはすでに働いている当事者からの声でした。

「自分の苦手なことをどういうふうに周りに伝えればいいのか、悩んでいます。電話対応に強い恐怖感があり、近くで電話がなってもでることができず、ずっとうつむいて緊張し、仕事に集中できなくなってしまいます。素直に周りに伝えられれば、少しは楽になる気がしますが、これは甘えではないかと思ってしまい、伝えることができません。」(うつともパパさん・男性・30代)

「精神疾患を抱えている方が、仕事を長く続けていく上で工夫している点や、企業側の配慮の仕方などを取り上げてもらえると参考になると思います。」(うつ病患者の当事者であるクニまんさん・男性・40代)

プロジェクトでは、今後、すでに働いている人たちの“両思い”のために何が大切か?についても考えていく予定です。プロジェクトの経過は、番組やホームページ、SNSなどで、随時お伝えしていきます。

さらに「みんなの声」も募集しています。障害者雇用での“両思い”を増やすために、みなさんが職場で工夫していること、解決したい職場での悩み、プロジェクトへのアイディアなどぜひお寄せください。
詳しくはこちらへ…障害者雇用 あなたの「声」を聞かせてください!

初回放送「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction1」の内容は、記事「もっと増やそう両思い! 障害者雇用プロジェクト始まります」で読むことができます。

※この記事は2018年6月18日(月)放送のハートネットTVブレイクスルー2020→「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction2」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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