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視覚障害のある中高生の悩み 困りごとを大人も一緒に考えてみた

記事公開日:2022年09月05日

視覚障害のある中高生4人がスタジオに集まってトークを開催!「おしゃれをしたいけど1人で服のコーディネートがうまくできない」「みんなと同じようにできなくて劣等感を抱いてしまう」など悩みを抱える生徒達へ専門家をはじめ、成田悠輔さんやお笑い芸人ぺこぱの2人など、大人が寄り添い、一緒に解決のヒントを探します。視聴者からのアドバイスも交えながら、視覚障害がある若者たちの思いと向き合います。

ファッションを楽しみたい!

最初のお悩みは、ファッションについてです。

【お悩み①】
同世代の人たちが楽しんでいるようなファッションを、私も一人でコーディネートできるようになりたい!ですが、なかなかうまくいきません。何か良い方法はありませんか?

質問を寄せてくれたのは、都内の盲学校に通う全盲の高校1年生、小松愛陽(まひる)さんです。

「友達と出かけたり、家族でショッピングに行ったりするときにおしゃれがしたいんですけど、一人で上手に服を組み合わせられません。お母さんに教えてもらったコーディネートを、友達に聞くと『似合うんだけど、ちょっとその組み合わせは・・・』と言われてしまいます。
今は友達にどんな服を着ているのか触らせてもらって、『こういう着方をするといいよ』『こういう色が流行ってるよ』と教えてもらったり、お店に行って、マネキンがどんな組み合わせでどういう服を着ているのか触ったりしています。今、流行りのファッションを知って、自分で服を組み合わせられるようになりたいです」(小松さん)

画像(東京・高校1年・全盲の小松愛陽さん)

小松さんの悩みに共感するのは、芸人ぺこぱの松陰寺太勇さん。仕事はスーツでキメていますが、私服には自信がないそう・・・。

「実は僕も私服のファッションに関してはセンスが絶望していまして・・・(笑)。私服がダサいっていう理由で彼女に3回連続フラれたこともあります。お出かけする時は、僕はいまだに自分の妻に『今日のファッションどう?』って確認してから外に出るようにしてますね」(松陰寺さん)

画像

ぺこぱ 松陰寺太勇さん

視覚障害教育を研究する奈良里紗さんは、高校生のときに弱視がわかり、いろいろと試した結果、編み出した方法があると話します。

「私自身がいちばん活用したいのはファッションのプロ、店員さんです。私は上下1着ずつぐらい持って試着室に入って、『この上に合う下は何がありますか?』と聞きます。今、着ている透け感のあるトップスも、『透ける』っていう感覚がわからなくて・・・。チクチクする服の素材は何なんだろうとか、疑問やコーディネートを、店員さんとコミュニケーションを取りながら教えてもらっています。友達に聞くと、そのお友達のファッションセンスにかなり依存するので(笑)」(奈良さん)

画像(視覚障害教育研究者 奈良里紗さん)

視聴者のみなさんからもアイデアをいただきました。

店員に全身コーディネートしてもらい服を購入。ラベリングする。
(東京都・弱視・仙人さん(44))

東京都に住む、弱視の仙人さんは、店員に全身コーディネートしてもらって服を購入し、ラベリングするそう。

洋服の組み合わせがわかるようにタグにワッペンをつけたり、切り込みを入れたりと、同じ印をつけて保管。それをもとに「色や素材で組み合わせを変えてスタイリングしてみると、幅も広がり楽しめるようになる」とのことです。

画像(仙人さんのアイデア)

さまざまなアイデアに小松さんも「やってみようと思います!」と興味津々です。

日常生活で自分のできることを増やしたい

続いては、自分でできることを増やしたいという悩みです。

【お悩み②】
僕は全盲で、見える人に助けてもらうことが多々あり、迷惑をかけているなと感じることがあります。今あるテクノロジーやツールがさらに改良されれば自分一人でできることがもっと増えるかも・・・と期待していますが、その進歩を待つ日々がもどかしいです。今の僕だからこそできることはありますか?

この悩みを寄せてくれたのは横浜の盲学校に通う、全盲の中学1年生の寺島奏良(そら)さんです。毎日の生活をサポートするさまざまなツールを使っても、苦労することがあると言います。

「たとえば、冷凍商品に書かれてある『これは唐揚げで、何分何十秒で温めてください』という説明は墨字(点字ではない文字)なので、携帯のアプリで読み取るのですが、機械なので、漢字の読み方が変わったり、意味も変わっちゃったりするんです。もっと一人でできることを増やしたいという思いがあるので、技術の進歩がもどかしいです」(寺島さん)

画像(横浜・中学1年・全盲の寺島奏良さん)

寺島さんの思いに、奈良さんは共感しながらもアドバイスを送ります。

「寺島さんはとても立派だなと思いながらも、生きづらそうだなと思うのは、『一人でできることを増やしたい』っていうところ。0から100まで、全部一人でできる必要があるのか。いろいろな人の手をちょっとずつ借りながら生きていくと、楽になるんじゃないかなと思います。
障害があると私たちは、どうしても身内や家族、親しい友人などの限られたリソースに依存しやすいんですね。そうすると、相手の予定や都合に自分も合わせなきゃいけない。
今からでもちょっとずつコミュニティを増やして、ヘルパーさんをお願いしたり、友達にLINEで聞いたり、いろいろな手段を持っておくことが大切かなと思います。
頼るのも練習なんですよね。頼りすぎてしまったり、頼り方を間違えてしまったり、頼み方にもコツがあるんです。自分がやってほしいように相手にうまくやってもらうのって、結構、難しいのですが、。私も障害者になって17年くらい経って、なんとか落ち着いたかなというところがあります。失敗をたくさんしながら、できるようになるといいんじゃないかと思います」(奈良さん)

続いて回答するのは、アメリカ・イェール大学助教授で実業家の成田悠輔さん。成田さんは、障害は技術によって解決できる面があるのではと指摘します。

画像

イェール大学助教授・実業家 成田悠輔さん

「できることっていう意味で言うと、怒りの声をあげるのも重要だと思うんですよ。僕は『障害』という言葉自体に問題があると思っていて、障害を持っている人たちの側に何か問題があるかのような思い込みをしちゃうじゃないですか。でも実際は、テクノロジーが未熟だったり、周りの人間や社会の人間観、社会観が貧しかったりするから、障害のようなものがあると感じているだけだと思うんです。
たとえば僕は視力が0.0いくつしかなくて、(眼鏡をかけていなければ)、細かい文字は読めないし、みなさんの名札も見えなくて、ほぼ生活できないんですよね。もし眼鏡という技術がなかったら、たぶん障害になるんだと思いますし、昔だったら生きていくのに支障が出るレベルだったと思います。眼鏡が開発されたことによって健常者、何の問題もないということになる。
そういう意味で言うと、今の技術が足りなくて障害のラベルを貼られていることに対して、もっと怒っていい。障害と呼ばれているものをなくしていくテクノロジーやツールを作っていくのが大事なんじゃないかなと思いました」(成田さん)

視聴者からはこんなアドバイスも。

公共施設や、お店、道路など何か足りないもの、点字ブロック・スロープ・音声ガイドなどをつけてもらうことをお願いしてみては?
ここにあったら便利だと的確に言えるのは、視覚障害があるからこそできること!将来の自分を助けることになるかも!
(埼玉県・大学生・弱視・はなさん(20))

自分の障害を理解してもらうには?

障害を周囲に理解してもらうことについての悩みも届いています。

【お悩み③】
僕は、盲学校の中では“見える人”。でも学校の外では“見えない人”。これから社会に出て、自分の障害を理解してもらうために、どんな工夫が必要だと思いますか?

都内の盲学校に通う弱視の高校1年生、相原晴(はる)さんからです。

「僕は学校の中ではよく見える人間なので、全盲の方たちの誘導を担っています。でも、学校から一歩でも外に出ると、明らかに他の人よりも見えにくいので、段差があると転びますし、周りに人が多いとぶつかります。そういうとき、自分の見えにくいところを理解してもらうのが難しくて・・・。
そもそも“弱視”という概念自体があまり知られていないので、見えないことを説明するのが難しい。
ほかには、助けを必要としていないときに限って、『手引きしますか』と言われて申し訳なくなったり、逆に手引きが必要なときには、人が多すぎて、誰も目もくれないみたいな・・・。どうすればいいか迷うことがあります」(相原さん)

画像(東京・高校1年・弱視の相原晴さん)

相原さんの悩みを聞いたぺこぱのシュウペイさんは、声をかけていいのか迷うときがあると言います。

「そうですね。助けたいと思っている人も、声をかけていいのか迷ったり、声をかけても『いいです』って断られたりするのかなと不安に思ったりする。どういうときに助けが必要なのか、なかなか・・・(判断が難しい)。みなさんの話を聞くと今後の行動も変わっていくと思うので、やっぱり知ることが大事なのかなって思います」(シュウペイさん)

画像(ぺこぱ シュウペイさん)

成田さんは自身も実践していることを提案します。

「自分の弱さを積極的に開示していくしかない気がします。僕は、遅刻したり、締め切りを破ったりがひどすぎて、自分でも衝撃を受けるんです。最近では、締め切りを過ぎてからあらゆる仕事を始めるという状態になってしまって(笑)。だから自分がダメだということを、笑いながら開き直るぐらいのほうが、結果としてはいいのかなと感じています。自分で変えられないものを変えようとして、苦悩しすぎるよりも、その制約の中で何ができるかを考えるしかないんじゃないかな。
少なくとも僕の遅刻とか締め切り破りに関しては、積極的に相手に理解してもらったほうが、相手もそれを先読みして仕事の設定をしてくれるようになります」(成田さん)

視聴者からはこのようなアドバイスが届きました。

自分の見えにくさや助けてもらいたいところを具体的に言うのがポイント。
「向かいに座っている人の表情は見えません」
「声をかける時には自分の名前を言ってから挨拶してね」
など、相手が想像しやすいように伝えるといいと思います。
人づきあいもスムーズにできるようになったと感じています。
(静岡県・弱視の先輩・ちかみどり☆さん)

自分ができないことを相手に伝えるのは、コミュニケーションを円滑にするというアドバイス。相原さんは、明るい表情を見せてくれました。

「自分からキョロキョロしながら助けを呼べばなんとかなるかもって思いました。ありがとうございます!」(相原さん)

劣等感と向き合うにはどうすればいい?

最後の悩みは、劣等感について。

【お悩み④】
学校で見えないのは僕だけ。ひとりだけ行動が遅れてしまったり、体育のチームプレーでは僕が入るチームが負けてしまうなど、いつも申し訳なさと劣等感を抱いてしまいます。大学受験でも配慮をお願いしなくてはいけません。この劣等感とどう向き合っていけばいいでしょうか?

名古屋にある高校の通常学級に通う、弱視の永井煌(こう)さんから寄せられました。

「たとえば大学受験の時間延長に関しては、みんなが同じ時間でやっているなか、自分だけ合理的配慮として1.3倍の時間をもらっていいのかと劣等感を抱いてしまいます。これから大学進学をすることになりますが、サークルとかゼミとか、みんなと同じようにやりたいっていう思いと、やっぱりできなくて劣等感を抱いてしまうのではという思いの両方があります。今後、大学受験、大学進学、社会人になっていくときに、そういう思いとどのように向き合っていけばいいのか、すごく悩んでいます」(永井さん)

画像(名古屋・高校3年・弱視の永井煌さん)

永井さんのお悩みに、奈良さんはこう答えます。

「まず大学受験や試験で配慮を受けるのは、私たちの当然の権利です。たとえば、私たち視覚に障害のある人が80パーセントのパフォーマンスを出せる環境で受ける試験と、見える人が100パーセントのパフォーマンスを出して受ける試験は、スタートの時点で私たちは遅れています。それは公平な試験でしょうか?
スポーツをするときに、オリンピックとパラリンピックが分けられていたり、それぞれクラス分けがあったりするのは公平性ですよね。一生懸命に受験勉強した人たちと、フェアに戦うために1.3倍の試験時間の延長をもらうことについては、永井くん自身が自分の障害をもっと理解していくことが大事なのではと思います」(奈良さん)

画像(スタジオの様子)

永井さんへ寄せられた視聴者からのメッセージです。

入試ほか、もろもろのチェックを経て、あなたも級友も、同じクラスに在籍しているのです。
堂々と級友を頼ったり、級友から頼られたりしてください。きっと、頼ったり頼られたりのための会話の送受信は、大人になってからも大事な生活スキルです。
(長野県・会社員・やまたかさん(41))

「自分は視覚障害があるから、人と比べてどうしてもできないことがあるのを認めつつ、チームの中で自分が役立てることを楽しむようにしていけばいいかな。それを探していきたいなと思いました」(永井さん)

視覚障害のある中高生の悩み
(1)流行のファッション・声優の夢に挑戦したい!
(2)生活の悩みや困りごとに大人がアドバイス ←今回の記事

※この記事はハートネットTV 2022年7月13日放送「大人のみなさん、答えてください!視覚障害のある中高生のお悩み~スタジオトーク編~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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