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北陸発!LGBTQ “本音”座談会(2) 家族との関係・カミングアウト

記事公開日:2022年06月20日

地方に暮らすLGBTQなどの性的マイノリティの人たちは、地域の慣習、親の考え方、当事者の少なさなど特有の事情により、生きづらさを感じることが多いといいます。とくに北陸地方は、2015年に全国で行われた意識調査によると、LGBTQに対して不寛容だという結果が。そこで北陸出身の当事者のみなさんに集まっていただき、“本音”座談会を開催しました。(2)は家族との関係・カミングアウトについてです。

家族・親とどう関わればいいのか

北陸出身のLGBTQ当事者4人を招いて開催された“本音”座談会。参加してくれたのは次の4人です。

画像(出演した北陸出身のLGBTQ当事者のみなさん)

座談会後半では、テーマが家族におよびます。

今回、番組では北陸4県の200人を対象にアンケートを行いました。その中で「家族にLGBTQ当事者がいたら否定的な感情を抱く」と答えた人に、どうして否定的な感情を抱くのかを尋ねました。

すると、およそ4割の人が、どう関わったらいいか分からないと回答。また結婚、子どもを持つなど標準的な生き方から外れているのが心配と回答した人が3割にのぼりました。今回の参加者、かずえちゃんも家族との関係に悩んできた1人です。

かずえちゃんが、初めて母親にカミングアウトしたのは、24歳のとき。「男性が好きなんです、ごめんなさい」と、泣きながら打ち明けました。

「私はぜんぜん分からんかったけど、かずし(かずえちゃん)自身から『死にたいぐらいつらかった』、『自殺したかった』と言って泣いて、つらかったんやろなって」(母・智美さん)

画像(かずえちゃんの母 智美さん)

つらさを受け止めてくれた母。しかし、ゲイというセクシュアリティについて、完全に理解してくれたとは思えませんでした。

かずえ:お母さん、言ったがの。「あんた女と結婚すればいいが」って。

母:それはなかったと思う。私が言った覚えある?

かずえ:自分は言われた覚えがある。だから「お母さん、わかってるのかなあ?」って。

母:かずしが覚えているってことは何気なく言ったんかなあ?

一方で、かずえちゃんも「一度話せばわかってくれる」と思っていた部分があり、家族との対話を避けていたと言います。

互いにぎこちなさを残したまま、かずえちゃんは30代でカナダに留学。そこで、堂々と生きる同性愛者たちを目の当たりにしたことが、転機になります。

「街を歩いていても、男性同士で手つないだり、女性同士で家族を作ったりが当たり前の景色としてあったんです」(かずえちゃん)

カナダにいた3年間、家族との橋渡しをしたのは、妹の里奈さんでした。福井からカナダを訪れた里奈さんは、かずえちゃんとパートナーの写真を、日本の家族に送って報告しました。

画像

かずえちゃんとパートナーのもとを訪ねた妹の里奈さん

「妹が来たことで、『かずしの彼氏ってこんな顔してるんや』とか、『すごく幸せそうで、お母さんよかったわ』とか、(家族が)聞きたかったことの一線を超えられました」(かずえちゃん)

そして、かずえちゃんは帰国の直前、SNSにこう書き込みました。

「海外生活でいろんなことを学んだけど一番に学んだこと。それは、いつも自分らしく自分に正直に生きる!ということ。同性愛者で生まれたことは、ぜんぜん後悔してない」
(かずえちゃんのインスタグラムより)

「ゲイとして生きる」というかずえちゃんの言葉を、母の智美さんは日本で受け止めました。

「泣きながら読んだのを覚えています。20代のときのカミングアウトとはまたぜんぜん違って、すごく頑張ったねって。自分の子どもやったら、やっぱり幸せになってほしいって気持ちは、男であれ女であれ一緒かなって」(母・智美さん)

かずえちゃんの母親へのカミングアウトは一度だけで終わらず、その後もいろいろなやり取りを通したことで、互いの深い理解につながりました。

かずえ:24歳でゲイだとカミングアウトして、お母さんはどう思っていたのかなが気になってた。カミングアウトしたとき、お母さんが泣いたんですけど、僕は「息子がゲイだということが悲しくて泣いた」と思っていたんです。それが39歳になった今もずっと気になっていたけど聞けなくて。でも今回、このインタビューがきっかけで聞くことができました。すると、お母さんは、「(かずえちゃんが)ゲイであることを誰にも言えず、何十年も背負ってきたことに親として気づけなくて泣いた」と言ってくれて、話せて本当に良かったなと思ったんです。僕は「自分のせいでお母さんが泣いた」と思っていたけど、そうじゃなかったんだって。お互いに話せて本当に良かったなと思います。

画像(かずえちゃん)

U:私は22歳のときに初めて女性とお付き合いして、25歳ぐらいで母にカミングアウトしているんです。やっぱり女性と付き合い始めた22歳から25歳までの間は親とすごく距離を取っていたというか、線引きしているというか、あまり関わっていなかったことを思い出しました。嘘をつくことが嫌で、距離を置いていたみたいな感じなのかな。

画像(Uさん)

たにし:私の場合は不定性で、しかもパンセクシュアルっていう全性愛者です。好きになった人の性別を問わない形なので、自分の性が女性に振り切っているときに好きになった人が男性であれば、ほぼストレートみたいなもの。私自身はゲイの方やレズビアンの方が直面するような、親との関係の悩みは薄いほうなのかなと感じています。 最初は高校生のころに同級生の女の子が好きになって、そのことを親に伝えたら、「えっ、気のせいじゃない?」みたいな感じでサラッと流されちゃって・・・。親はそれがセクシュアリティの悩みとは思ってもいなかったみたいです。でも、そのあと時間をかけて、親には理解してもらっています。今は私のお店にも来てくれますし、寛容になっているかなと感じます。

画像(たにしさん)

親へのカミングアウトの悩み

座談会にオンラインで参加してくれた福井県出身のトランスジェンダー、たっとさん(現在は名古屋在住)も親との関係性に悩む当事者の1人です。

「親にはカミングアウトして10年ぐらい経っていて、自分がトランスジェンダーであることに対して、一応、理解はしてくれているとは思います。でも、いまだに親の前では男子トイレに入れません。自分自身も、親とその話をすることをダブー視しているところがあります。それと、付き合っているパートナーの親御さんからは交際自体を反対されている状態です。僕のトランスジェンダー自体を否定しているわけではないけれど、子どもができないから結婚とか付き合うことはやめなさい、他の人にしなさいと言われている状況です」(たっとさん)

親にセクシュアリティを受け止めきれてもらえず、パートナーの親にも交際を認めてもらえない。たっとさんは、今も地元の福井県に戻れずにいます。

「僕は福井が大好きなので、本当だったら福井で仕事をして、生活したいと思っているんです。でも、親も、僕がトランスジェンダーであることを周りや近所の人に言っていなくて・・・。親に悪気はないのですが、どう話せばいいかわからないようで、『自分の子ども以外には、周りにそういった人はいない』と感じるところもあるのかなって。福井で生活するのは難しいのかな」(たっとさん)

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たっとさん

松中:たっとさんの「親に悪気はない」という言葉にすごく共感しました。どの親もおそらく自分の子に幸せになってほしいと思っているけれど、自分が経験してきた“幸せ”が参考になってしまうから、多くの親は異性愛が幸せだと思ってしまう。LGBTQ当事者が「北陸には居場所が少ない」と言うのと同じように、カミングアウトを受けた親も孤立している可能性もあるのかな。そのことも少し考えなきゃいけないなと思いました。

たにし:以前、息子さんからゲイだとカミングアウトを受けたストレートのお父さんが「本当は息子と一緒に来たかったんだけど、今日は1人で来ちゃいました」って、お店に来たことがあったんです。そういうふうにアクティブな方であれば、情報収集のために自ら動くこともできると思うけれど、みんなができるわけじゃない。(親に)理解してもらえなかったとしても、だからといって自分を自分で責めることはしないでほしいなと思います。

番組には、たっとさんのお話を受けてこんなメッセージも届きました。

私は福井出身のレズビアンで、名古屋でパートナーと暮らしています。たっとさん、大変だと思います。私も家族には受け入れてもらってないというか、女性と暮らしていることを事実として認識はしているけれど、雑談とか話には決して出してもらえないです。そういうところに壁を感じますね。

地域を変える働きかけも

母親とやり取りを重ね、自らのセクシュアリティを理解してもらったかずえちゃん。今は、地元の福井で、LGBTQの支援者である「アライ(ally)」を増やす活動をしています。その活動のキーパーソンは地元の高校時代の友人、小林智映さんでした。

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小林智映さん

かずえちゃんにとって、ゲイに対する差別用語が飛び交った高校時代が、実はいちばん苦しかったことを小林さんは、動画を通して初めて知りました。

「かずえちゃんがYouTubeをやっているのをたまたま見つけて、これ藤原君?って感じで、最初わからなかった。動画で、高校のときがいちばんしんどかったって言っていて、あんなに楽しそうだったのに、ほんとうはどんな気持ちなんだろうって。(多様なセクシャリティについて)知らないことで相手を傷つけてしまったんだとわかりました」(小林さん)

かずえちゃんの体験を、自分の故郷・池田町の人々に聞いてほしいと、小林さんは初めての勉強会を開催。さらに、LGBTQの理解者・アライを増やそうと活動するグループ「なろっさ!ALLY」を立ち上げました。

画像(なろっさ!ALLY)

小林さんがこの活動に取り組んだのは、故郷で感じる息苦しさを変えたいと思ったからでした。結婚後、子どもができずに悩み、周囲の言葉に追い詰められた経験が、かずえちゃんの境遇と重なったのです。

「『お子さんまだ?』『お子さんは考えてないの?』と、いろんな人に何回も言われて、本当の気持ちを言えないというか。愛想笑いするしかない状況でした。(LGBTQだけではなく)マイノリティの要素って、みんなが持っていると思っているんです。性的マイノリティとか関係なく、すべての人が誰かのアライになれると思います」(小林さん)

「誰もが誰かのアライになれる」という小林さんの言葉。座談会の参加者も同じ気持ちのようです。

かずえ:福井はすごく好きだったけど、自分のことを地元で「ゲイ」って言える日が来るなんて想像できなかったんですよね。でも2年前に福井に戻って、いろいろなところで話をさせていただいています。高校のときの同級生と一緒に、地元で伝えていけるのは僕も本当に心強いし、仲間も増えていっています。

画像(かずえちゃん)

U:特別に何かをしてほしいという気持ちはなくて、ふつうに接してもらえればいいなと思っています。たとえば、友だちに「彼女いるんだよね」って話をしたとき、「へぇ、そうなんだ。いつから付き合ったの?」ぐらいな感じで、ふつうの恋愛話になれば。

たにし:全員が“ただの人”なんですよね。カテゴライズしようとするから面倒だし、「どういう配慮が必要なのか?」となる。人が人と接するときに、相手のことを傷つけないように尊重することだけを考えれば、みんながアライになれるんじゃないかと感じました。

松中:北陸こそアライが必要だと思うことがあります。金沢レインボープライドのパレードをやったときに、もちろん当事者もいるんですけど、一緒にパレードを動かしてくださった方には、当事者じゃない可能性のある人が多かったんですよね。でも、パレードが終わってゴールしたら、当事者もアライたちも「金沢で、北陸でこれができるんだ」って泣いていて・・・。パレードはLGBTQがテーマですが、その根底にある、北陸が持っている岩盤のようなものが少し割れたような感覚をみなさんが感じたみたいです。それが北陸を変えていくきっかけになっていくんじゃないでしょうか。

画像(松中さん)

最後に、今後の将来像をお聞きしました。

たにし:私の経営する大好きなお店でずっと飲んでいたいです。そのためにはみなさんにぜひ、お店に来ていただいて、たくさん飲んでいただいて、お店が続くようにしてほしいなと思います。とくに大きな夢はないですが、ささやかに今のお店が続くといいなと思っています。

かずえ:パートナーがほしいですね。それと同時に、今はYouTubeでLGBTQをテーマにした発信をしていますが、そんな発信をしなくてもいいようになってほしい。LGBTQとか、カミングアウトとか、そんな言葉が早くなくなればと思います。

U:私は同性カップルに向けた不動産事業をしているのですが、どこの不動産業者に行っても部屋探しがスムーズにできるようになるといいですね。そのために、まずは私たちのほうでサポート、周知することができたらと思っています。今のパートナーとは、今後もずっと一緒に幸せでいることがいちばんです。

松中:僕自身は金沢で高校まで育って、そこではカミングアウトができなくて、東京に出てきて、働きながらようやくカミングアウトできました。でもそれは自分が頑張ったわけではなく、いろいろな人たちとの出会いやサポートがあったから。たくさんのLGBTQ当事者が地方から東京や大阪に出てきますが、故郷には帰れないと言っていて、それを変えたいと思っています。僕の故郷は金沢なので、金沢での活動を頑張りたいと思っています。

みなさんの活動一つひとつが、LGBTQを取り巻く環境の変化につながっていると感じられた“本音”座談会。今回の座談会には、北陸だけでなく全国各地から、同じ悩みを抱えて共感するという声が届きました。地元コミュニティの絆が強い反面、マイノリティの人たちが生きづらさを抱えがち…。そんな地域が少しでも変わっていけば、ほんとうに暮らしやすい社会が実現できると思います。
ハートネットでは、これからも性的マイノリティに関する発信を続けていきます。

北陸発!LGBTQ “本音”座談会
(1)地方特有の生きづらさと結婚・出産の圧
(2)家族との関係・カミングアウト ←今回の記事

※この記事はハートネットTV 2022年4月27日放送「地方は暮らしにくい?北陸発・LGBTQ“本音”座談会」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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