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北陸発!LGBTQ “本音”座談会(1) 地方特有の生きづらさと結婚・出産の圧

記事公開日:2022年06月20日

セクシュアリティの多様性については、東京などでは大々的にプライドパレードが行われるなど理解が進みつつあるように見えますが、状況が異なる地域もあるのが現実です。とくに北陸地方は、2015年に全国で行われた意識調査によると、LGBTQなどの性的マイノリティに対して不寛容だという結果がでました。そこで今回は、北陸出身の当事者を招いて“本音”を語り合う座談会を開催!地方の現実に向き合い、LGBTQの人たちが生き生きと暮らすためのヒントを探ります。

地方は居場所が少ない!当事者も少ない…?

今回の座談会ではLGBTQ当事者の4人に集まっていただきました。

新潟県出身のたにしさんは、地元の新潟駅前でジェンダーレス酒場を営んでいます。日によって、タイミングによって男性性と女性性が変わる不定性Xジェンダ―というセクシュアリティです。

画像(たにしさん)

福井県在住のゲイ、かずえちゃんはYouTuberとして活動し、当事者たちの声を発信しています。

画像(かずえちゃん)

富山県出身のU(ゆー)さんはレズビアンで、YouTuberとして活動。同性の恋人との日常を発信しています。

画像(Uさん)

松中権(ごん)さんは、ゲイのアクティビスト。2021年、地元・金沢で北陸初のプライドパレードを主催しました。

画像(松中権さん)

最初にそれぞれの活動拠点におけるLGBTQの状況について聞きました。

松中:最近の金沢は、少しずつ(LGBTQに関する)情報も届きはじめているのかなと感じますけど、やっぱり居場所がない感じはすごくありますよね。

たにし:(出会い)アプリもありますけど、東京に来ればすぐそこ、数メートル先にマッチする可能性のある相手がいるのに、新潟だと何十キロと離れていることがあります。

画像(たにしさん)

U:私、パートナーがいないときに、富山に帰ってアプリを起動すると、(候補の相手との距離が)260キロみたいな・・・。え、遠いっていう(笑)。

たにし:近い距離だと大体知り合いじゃないですか。

U:気まずいんですよね(笑)

たにし:知り合いか、どこか遠くにいる誰かみたいな。みんな顔見知りになっちゃって(笑)

かずえ:僕はカミングアウトしているから別に隠すことはないですが、やっぱり地方なので、自分の友人などは(LGBTQであることを)隠している人のほうが圧倒的に多いですね。本当はパレードなどに行きたくても、行ったらバレてしまうんじゃないだろうかって、すごく恐怖心があります。

地方ならではの生きづらさ

4人の話から、北陸地方においては、LGBTQの存在が理解されていない状況がうかがえます。

2015年に全国で行われた意識調査によると、「近所の人が同性愛者だったらどう思うか」という問いに対して、「いやだ」「どちらかと言えばいやだ」と答えた人が、新潟県を含む北陸地方の人は6割にのぼり、全国でトップという結果でした。

画像

出典:『性的マイノリティについての意識 2015年全国調査報告書』(広島修道大学 河口和也教授の調査グループ)

北陸地方の当事者は実際にどのようなことで悩んでいるのでしょうか。たにしさんが経営する新潟のバーにお邪魔して、さまざまなセクシュアリティを持つ常連客のみなさんに、地元・北陸ならではの生きづらさをお聞きしました。

「カップルには普通に(部屋を)貸せたりするけど、同性で一緒に住むのがNGだったりする。新潟は都会と比べて若者が多くないし、オープンに同性カップルで部屋を借りることが多くないから、偏見の目というか壁があるかもしれない」(不動産会社勤務)

「(家族と)接していて、自分の親は世間体を気にするほうだと思ったので、親には言っていなくて、雰囲気で匂わせてる。自分の娘がLGBTQだというのが、ほかの人にバレたくないんじゃないかなという気持ちもある」(同性の恋人がいる女性)

「(親に)嘘をついているのが、いやだったよね。結婚の話だとか、将来の話になったときに、どうしても嘘をつかなきゃいけなくなるのはつらかった。いちばん自分を信用してくれて、愛してくれているであろう人に対して、嘘をつかなきゃいけないのはつらい。田んぼを継がなきゃいけない、同居しなきゃいけない、結婚しなきゃいけない、子どもができなきゃいけないといういう、親の土地柄なんじゃないですかね」(2年前、同居する80代の母親に初めてカミングアウトしたゲイ)

画像(ジェンダーレス酒場)

バーの常連客のみなさんの話に、座談会参加者も共感を示します。

松中:(北陸は)人と人の距離が近い感じがしますよね。同級生が市役所で働いていたり、同級生のお父さんが上司だったり。そうすると、自分の情報がいろんな人に伝わっている感覚というか、悪く言うと、みんながちょっと監視しているような感じがする。東京は人も多いので、隠れることもできますが、北陸だと自分自身がすごく浮き出ちゃう感覚は強いかなと思います。

たにし:コミュニティが狭くて閉鎖的で、人と人とのつながりが強くて近いですね。そこから自分が排除されないように、みんなに合わせなきゃという意識は強いと思います。

U:職場や友だちなどの周りから、「結婚しないの?」とか、「いい人いないの?」「じゃあ紹介しようか?」って言われている子が結構います。(北陸には)そういう風習があるんじゃないかなと思います。

かずえ:30歳まで福井でずっと生活をしていて、そのときに「まだ結婚しないの」とか「彼女いるの」みたいに、異性愛者が前提でいろいろ聞かれるんですよね。嘘をつくというか、偽るのは本当につらかったですね。

結婚を促す働きかけは、コミュニティの慣習だけではなく、行政の政策に反映されているケースもあります。全国のさまざまな地方自治体では、社員1人あたりの出産人数が多い企業を表彰する制度や、地域のボランティアが結婚相手を紹介するなどの施策が実際に行われてきました。

「まだなの?」結婚、出産へのプレッシャー

行政から結婚や出産を促す働きかけがあることについて、参加者はどう感じているのでしょうか。

たにし:実際、子どもが減ったら困るのは確か。異性愛で望んで妊娠、出産した方がいなければ我々も生を受けてないわけです。施策としてはOKですが、「独身だから」といって全員に促そうとすると「いらないです」という方もいるので、希望者にだけであればいいと思います。

松中:希望者だけならいいかなって半分思ったんですけど、行政は公の機関じゃないですか。そこが「あなた、子どもを早く持ちなさい」と迫ってくる感覚は怖いですね。もし今、日本で同性婚ができたり、同性同士でも子どもを育てられる環境があれば、選択肢としてそういう方たちも増えるかもしれないですけど。

画像(座談会の様子)

かずえ:LGBTQだけじゃなくて、異性愛者だったとしても、みんながみんな結婚や出産するわけではないし、結婚や出産を行政に推奨されるのは何だかなあ、と思います。行政がやるものは、情報として子どものころから触れるじゃないですか。子どものころに触れた情報から、自分の考え方ができてくると思うので、環境が変わらないとずっと続いてしまうという印象はありました。

たにし:行政にもう一歩、配慮があればいいかなと思いますね。

番組には、以下のような声も寄せられました。

山口県在住の10代です。昔祖母から『あなたの孫を見てから成仏したい』と言われたことをずっと重荷に感じながら生きています。

最近の市報の表紙が、お父さん、お母さん、子どもさん二人みたいな。『標準はこれですよ』みたいなものを感じました。

子どもを産む・産まないは、LGBTQに限らず、独身でいたい人や子どもを持つことができない人にも言われること。LGBTQの当事者の方が生きやすい社会は、すべての人が生きやすい社会だといえると思います。

周囲や行政から結婚や出産を迫られるとき、どのように対処しているのでしょうか?

U:今はもうカミングアウトしていますが、以前は「今は仕事を一生懸命、頑張りたいから」と言っていましたね。

かずえ:嘘をつくと、「写真見せて」とか、「彼女とどこに行ったの」みたいに聞かれて、嘘に嘘を重ねるのが本当にしんどかったですね。

結婚や出産を迫られたときに嘘で返す方法には限界があるという指摘。だからといって、むやみにカミングアウトすればいいわけでもないようです。

松中:僕自身はカミングアウトして良かったと感じているタイプです。でも、カミングアウトしたあとも大変なことはあるし、すべてのカミングアウトがうまくいくわけでもない。その人の環境もあるし、カミングアウトはマストではないので、「カミングアウト礼賛」みたいになるのはあまり良くないと思っています。ただ、一人で抱えるのはつらくなっちゃうので、仲間を見つけるとか、誰かに相談すると、気持ちが少し軽くなるかなと思いました。

かずえ:本当に思うのは「当事者が変わることが大事なのではない」ということです。だって、LGBTQの人は「明日から異性愛者になれ」と言われても、僕はやっぱり変われない。周りの人たちが変わらないと、一歩進まないと、何も起こらないと思うんです。LGBTQについて知るきっかけや、LGBTQについて話せる居場所、交流できるところが少ないのは、これからのテーマになってくのかなと感じています。

(2)では、家族との関係やカミングアウトについて語りあいます。

北陸発!LGBTQ “本音”座談会
(1)地方特有の生きづらさと結婚・出産の圧 ←今回の記事
(2)家族との関係・カミングアウト

※この記事はハートネットTV 2022年4月27日放送「地方は暮らしにくい?北陸発・LGBTQ“本音”座談会」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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