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手話ニュースキャスターイベント(後編) 「手話の魅力を広めたい」

記事公開日:2022年03月05日

2022年1月に仙台で開かれた手話ニュースキャスター ファンミーティング。NHK手話ニュースで活躍する6人のキャスターが、手話の魅力たっぷりのエンターテインメントで会場を沸かせました。後編は、絵本の読み聞かせや一人芝居など、観客を魅了したステージを紹介します。

「手話は言語」を広めたい

今回のイベントの目的は、いつも手話ニュースを見てくれているファンとの交流。しかし、キャスターたちには、それ以上の思いがありました。小野広祐キャスターはこう話します。

小野:手話ニュースは真面目なだけではありません。お笑いや芝居、真面目な話など、さまざまなことができます。日本語と同じように言語だからです。『手話は言語だ』ということを広めたいです。(手話)

画像(小野広祐キャスター)

イベントに取り入れたのは絵本の読み聞かせ。ろう学校の教員をしている戸田康之キャスターが、いつも子どもたちに読んでいるように行います。

戸田:ふつうのおしゃべりのときと、絵本の読み聞かせの手話はまったく違います。たぶん聞こえる人もそうだと思います。ふつうに話すときと、絵本を読むときは(話し方を)変えていると思います。きょう来る人のなかには聞こえる人もいます。音読の読み聞かせもあるけど、手話の読み聞かせの魅力を伝えたいです。素晴らしいということに気づくきっかけになってほしいと思い、行うことにしました。(手話)

画像(戸田康之キャスター)

戸田さんが披露するのは「がらがらどん」という名前の三びきのやぎが橋をわたるまでを描いた、ハラハラドキドキの物語『三びきのやぎのがらがらどん』です。

画像(『三びきのやぎのがらがらどん』 マーシャ・ブラウン 絵 瀬田貞二 訳 福音館書店)

戸田:むかし、三びきの やぎが いました。(手話)

この場面、絵本には「三びきのやぎ」としか書かれていません。しかし、戸田さんの手にかかると、三びきはこんな表現に。

戸田:一ぴきは、小さくて、か弱そうなやぎ。
二ひき目は、細くて、つのが上にスッとのびたやぎ。
三びき目は、体が大きく、グルンとしたつののやぎ。強そうです。

手話で三びきのキャラクターを表現。物語を膨らませていきます。

戸田:さて はじめに、いちばん ちいさいやぎの
がらがらどんが はしを わたりに やってきました。
かた こと かた こと と、はしが なりました。

画像(戸田康之キャスター)

しかし、橋の下には大きなトロルが。

戸田:「だれだ、おれの はしを かたことさせるのは」と、トロルが どなりました。
「なに、ぼくですよ。いちばん ちびやぎの
がらがらどんです。やまへ ふとりにいくところです」と、
その やぎは とても
ちいさい こえで いいました。
「ようし、きさまを ひとのみにしてやろう」
と、トロルが いいました。
「ああ どうか たべないでください。
ぼくは こんなにちいさいんだもの」
と、やぎは いいました。(手話)

画像(戸田康之キャスター)

ふるえながら手話をすることで、小さいやぎのイメージをお客さんに伝えます。からだの大きい三びき目のやぎのセリフは、こんな感じに。

戸田:「さあこい!こっちにゃ 二ほんの やりが ある。
これで めだまは でんがくざし。
おまけに、おおきな いしも 二つ ある。
にくも ほねも こなごなに ふみくだくぞ!」

こう、おおきいやぎが いいました。
そして トロルに とびかかると、つので めだまを くしざしに、
ひづめで にくも ほねも こっぱみじんにして、
トロルを たにがわへ つきおとしました。

画像(戸田康之キャスター)

「本の文字に書いていないところも表現するんですね」(司会)

戸田:そうですね。絵本なので、文字で書かれているところだけを手話単語にしてみたら、それはつまらないですよね。絵本の世界が十分伝わるように、絵からわかるイメージ、それから、言葉の奥に書かれているイメージもすべて含めて、子どもたちに伝えたいと思います。もし、きょうご覧いただいた、この絵本の読み聞かせの手話、興味をもっていただけたらうれしく思います。(手話)

画像(イベント会場の観客の様子)

観客:絵本の文字どおりに手話で伝えているのではなくて、必要な部分を手話で表現している。これから自分たちが子どもたちに教えていくときに、この手話表現を参考にしたいと思いました。(手話)

4か月前から、イベントの準備を進めてきた6人。プライベートでも親交があり、家族ぐるみの付き合いを続けています。笑い合い、深く語り合うなかで、手話の表現を磨いてきました。

画像

家族ぐるみの付き合いをするキャスターたち 2019年5月撮影

ステージでは、先輩から後輩へ、手話表現を教える場面も。何気ない単語一つでもイメージを膨らませて、より伝わる表現を模索していきます。

画像(ステージの様子)

聞こえる人も聞こえない人も手話を楽しんで

出番前、鏡に向かって一人熱心に練習をしていたのは、那須英彰キャスターです。これから披露するのは、一人芝居。那須さんは、20代のころから手話による演劇の活動を行ってきました。

那須:聞こえる人も聞こえない人も関係なく、みんながわかるような表現をお見せしたいと思います。手話で遠い近い、リズムが早い遅い、軽い重い、そのような細部もすべて表現する。抑揚をつけるのです。(手話)

画像

那須英彰キャスター

テーマは「戦艦大和の最期」。那須さんは、物語を手話だけで感じてほしいと、あえて音声通訳を入れずに披露しました。

出港する大和

画像(那須英彰キャスター)

敵機発見

画像(那須英彰キャスター)

アメリカ軍の航空部隊に大和が攻撃
激しい打ち合いが始まる

画像(那須英彰キャスター)

敵機が魚雷を投下
右舷に魚雷が命中

画像(那須英彰キャスター)

次は左舷に魚雷が命中
大和は浸水し ゆっくり傾いていく

画像(那須英彰キャスター)

激しい攻撃を受けながら 応戦する大和
負傷する隊員

画像(那須英彰キャスター)

大和は傾き やがて海に沈んでいく
投げ出された隊員が もがき 海に沈んでいく
海に浮かぶ丸太につかまりながら
沈んだ大和を見て 絶望に包まれる隊員

画像(那須英彰キャスター)

那須:広島の呉には、戦艦大和で亡くなった人たちの慰霊碑が建てられています。そちらにおもむいて参拝をして、供えて、こちらに向かってきました。どうもありがとうございました。(手話)

画像(那須英彰キャスター)

観客:那須さんの戦争のときの話は、表情にもすごく迫力があり、泣きそうになりました。『むかしは本当に大変だったんだな、今は平和になったな』と、そう感じました。(手話)

画像(イベントに参加した観客)

2時間にわたるイベントは、大盛況で幕を閉じました。那須キャスターに感想をお聞きしました。

画像(会場の様子)

那須:手話を知らない方たちは、みなさん、手話を見せると、その奥深さに感激してくれます。日本語とは違う、手話という言語の奥深さに気づいてもらうことができます。今回の宮城だけでなく、全国各地を訪問して、みなさんに楽しんでいただけたらと思います。(手話)

手話ニュースキャスターイベント
(前編)「表現豊かな手話の魅力」
(後編)「手話の魅力を広めたい」 ←今回の記事

※この記事はろうを生きる 難聴を生きる 2022年3月5日(土曜)放送「手話ニュースキャスターイベント後編」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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