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生きるってなんだ 元SEALDs 奥田愛基が語る「いじめ」そして…今

記事公開日:2018年03月30日

学生グループ「SEALDs(シールズ)」の元創設メンバー、奥田愛基(おくだ あき)さん。安全保障関連法案に反対して新しいデモの形を作り、一躍「時の人」となりました。しかし、今の姿からは想像できない、壮絶な過去がありました。

気付いたらいじめられていた

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学生グループ「SEALDs」の元創設メンバー、奥田愛基(24)さん。SEALDsは大学生を中心に2015年5月に結成され、安全保障関連法案に反対した学生グループ。2016年8月に解散するまで、その激しい抗議活動や独特のラップ調のコールから、メディアにも注目され、多くの人々を引きよせました。こうした活動から政治的なイメージの強い奥田さんですが、今の姿からは想像できない、壮絶な過去がありました。

奥田さんが生まれ育ったのは北九州市。実家はキリスト教の教会で、父親の知志さんは牧師。長年、ホームレスなど、生活が苦しい人を支援してきました。

家族以外にも色々な人が集まる、賑やかな家庭で育った奥田さん。しかし、中学校に入学後、予想外の出来事に直面します。友人たちから無視されるようになったのです。気がつくと、仲の良かった幼馴染もイジメに加わり、誰とも話せなくなっていました。

友人のノートに書かれていたのは「死んで欲しい人1位、奥田愛基」。
学校に通えなくなりました。

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「僕のなかでは気がついたらって感じなんですね、徐々に徐々にで。初めはいじめられてるという自覚もなかったし、なんでこんぐらいのことで、俺、落ち込んでるんだろうみたいな。 でも、だんだん全体的にしんどくなっていくっていうか。それで気がついたときには、もう自分が生きていけないっていうか、自分が自分であることが学校では許されないっていうか。どういうふうに笑うんだっけみたいな、どういうふうにしゃべるんだっけみたいな感じになって。」(奥田さん)

いじめられていることを、両親にはどうしても話せなかったという奥田さん。当時のことを両親はこう振り返ります。

「野宿のおじさんたちや、ホームレスの支援とかしてて、人間ってどんな形でも生きれるんだと。生き延びたらなんとかなる。ということを、おじさんたちとは確かめながら20何年やってたわけで。ただこれが、わが子になるとだめなんですね、親っちゅうのは。お前こんなことでどうすんだ、みたいなオーラをどんどん出してる。僕自身も彼を理解できないなかでイライラし始める。親子だから許せない。どうしても許せない、それが。だから、どんどん息子を追い詰めていく。」(父 知志さん)

「『お母さんなんか、何も分かってないんだ。全部ぶっ殺して自分も死にたい』って叫ばれて、愛基がこんなに壊れてしまうまで、力づくで私たちの思うとおりにしようとしたんですよね。」(母 伴子さん)

転機は偶然目にした新聞記事

そんな日々のなか、偶然目にした劇作家の鴻上尚史さんの新聞記事が転機となりました。

「イジメられている君へ

死なないで逃げて、逃げて。安心して生活できる場所が、絶対にあります。それは小さな村か南の島かもしれませんが、きっとあります」

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鴻上さんは記事に込めた思いを話します。
「とにかく、四の五の言わずに逃げろっていうのがあって。それは、いろんなことは後から考えろってことなんですよね。いじめられていくと周りが真っ暗になっていって、どんどん周りが見えなくなるので。ここしかなくて何もできないっていうふうに思っちゃいがちなんだけど、1回、ふっと自分のいる場所を外すと、なんだ、こういうこと? 世界は広いんだっていう。その場所にいてうずくまってると、本当にもうだめだ、終わりだと思うんだけど、逃げると世界の広さに出会えるので。」(鴻上さん)

鴻上さんの記事を読み、奥田さんはインターネットで検索し偶然出てきた「鳩間島」に転校することを決意します。那覇から石垣島の空港を経て、さらに船で鳩間島に向かった奥田さん。そこでお世話になったのが、仲宗根豊さんでした。

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「愛基も来た当時はぼけっとしてたんですよ。1か月か2か月くらいは、心を開かなかったですからね。ただ、何でも自分で、積極的にやりなさい。何でも自分で、挑戦することがまずは大事だから。やってみないで、最初からだめだ、最初からこれは僕にはできない、これはできないという気持ちだけは持つなと。」(仲宗根さん)

学校帰りに圧倒されるほど美しい海に潜ったり、仲宗根さんの家づくりを一緒に手伝ったりして過ごす日々。そんな日々のなか、一度、仲宗根さんにひどく怒られたことがありました。自殺未遂をしたときでした。

「そのときは怒りましたよ。この野郎と思ったよね。あの時だけは、絶対これだけは許さない。よし、あんたがそうするんだったら、お父さん、これ以上面倒見切れんから帰りなさいって。優しく、という気持ちはあるんですよ。だけど、ここで優しくすると、これはちょっと待ったっていうあれで、作戦考えようっていうことで、すぐ空怒りして(笑)怒り飛ばしてやったわけですよ。だから、あのときはお父さんの作戦勝ちだ(笑)」(仲宗根さん)

仲宗根さんの怒りに衝撃を受けたという奥田さん。島での生活を通じて、変化が訪れます。

「自分ではどうしようもできないものを受け入れるっていう感覚っていうか。鳩間のお父さんとか、自分で絶対敵わないみたいな存在がいるとか、圧倒的なキレイな海とか…。そういうなかで、人は人だし自分は自分だし、自分が本当にどうしたいかっていうのが問われてるし、でも、そのなかで一緒に生きていくっていう。人との距離感みたいなものが、やっとつかめた。」(奥田さん)

生きるとは「社会のなかで個であれ」

その後、島から戻り、高校へ進んだ奥田さん。卒業の2日前、東日本大震災がおこります。すぐにボランティアに駆けつけた奥田さんは、必死に生きる人たちに問いかけ、映像作品を作ります。

そして2015年5月、奥田さんはSEALDsを設立。安全保障関連法案への意見を求められた参議院の公聴会で、自分はどう生きるのか、奥田さんは考え続けてきた思いを込めて語りました。

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「SEALDsの一員としてではなく個人としての、1人の人間としてのお願いです。どうか、どうか政治家の先生たちも個人でいてください。政治家である前に派閥に属する前にグループに属する前に、たった1人の個であってください。自分の信じる正しさにむかい、勇気をだして孤独に思考し、判断し、行動してください。」(奥田さん、公聴会でのスピーチ)

今、奥田さんの元には、全国から講演の依頼が相次いでいます。語るのは政治のことではなく、いじめの体験や生きることの大切さ。

「今でも簡単にいじめを語っていいことなのかっていう躊躇もあるし、当時の、いじめられてふさぎ込んでた自分からしたら、何こいつみたいな、偉そうにみたいな、と思うと思うんですよね。でも、逃げてよかったって思うんですよね。逃げてっていうか、そこから脱出できて。いじめの構造っていうのは、加害者がいて被害者がいて、暴力振るわれてるか、振るわれてないかとか、そういうレベルじゃなくて。みんな傷つく。誰しもが加害者になったり被害者になったりすると思うんですよね。だから、いじめはなくならないかもしれないけれど、でも、それがいじめだと認識できたり、このままだと僕は僕でいられなくなるとか、誰か傷つけちゃう、死んじゃうと思ったときには、違うやり方があるかもしれないということを言ってかなきゃいけない。やっぱ生きてて欲しい。」(奥田さん)

今の時代を「個人が個人でいられなくなる時代」という奥田さんにとって「生きる」とは、社会のなかで個であること。

「自分のなかで生きる意味なんてないと思ってた自分が、いろんな人の出会いとか経験から変わってくる。だけど、どこか自分は、自分として生きていかないといけない。人は1人ではもちろん生きていけないし、誰かの助けも借りるんだけど、でも、そのなかで1人として生きていく。それが僕にとっての生きるってことです。」(奥田さん)

いま、いじめられているあなたへ

「君が死にたいと思うことを変えることはできないかもしれない。そうだとしても生きていて欲しい」

奥田愛基さん
「この世界はもっと広い、生きていて良かったって思える日が毎日とは言わないけど、何度かあるかもしれない。だから『生きていようよ』って、『一緒に生きていようよ』って伝えたい。『君が死にたいと思うことを変えることはできないかもしれないけれど、そうだとしても生きていて欲しい』と思うことをあきらめない、そう伝えたいです。僕の考えで言うと、たぶんいじめはなくならない。でも、いじめられたからと言って死ななくていい。死ぬほどつらい経験はたくさんあるかもしれないけれど、そのなかで生きる方法ってないのかなと。そういうことが起こっても、もう1回話し合えたり、とりあえずそこから逃げるということがすごく大事だと思います。」

周りにいる大人へのメッセージ

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「人間が人間を操縦する快感を選択させてはいけない」
劇作家 鴻上尚史さん
「子どもは『いじめられているのか』と聞かれると『いじめられてない』と親には答えてしまう。だから子どもが笑わなくなったり、学校に行きたくないようなそぶりをみせたら、親は『どういうふうにいじめられているのか』と聞いて、その上で子どもを学校に行かせない。そして学校に『(深刻な)いじめはない』と言われたら、親と校長や担任とだけで話すのではなく、カウンセラーや弁護士、PTAという第3者を入れて話すことが、(学校と敵対関係にならないためにも)大事。いじめがなぜ続くかというと、人間が人間を操縦する快感。ある種の全能感で、人間が経験する快感のなかで一番大きい。だからそういう楽しみを人生のなかで追求してはいけないと、大人は子どもに厳しく伝えなくてはいけない。そこで絆や優しさや人間らしさを言うことは、あまり意味がない。その喜びを選択しちゃいけないことを教えなくてはいけない。」

※この記事はハートネットTV 2016年11月7日(月)放送「“生きる”ってなんだ―元SEALDs 奥田愛基―」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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