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あがるアートの会議2021 【前編】 今こそアートの可能性を考えよう

記事公開日:2022年01月27日

アートの力で世の中をいい方向に上げていく「あがるアートの会議」。実業家の遠山正道さん、映画監督の安藤桃子さんなど各界で活躍する論客が集まり大いに盛り上がった昨年に続いて、今年は福祉実験ユニット「ヘラルボニー」のお二人も加えて開催します。昨年の会議で生まれた「アートセータープロジェクト」に続く企画は? コロナ禍で医療現場におけるアートの意味とは? 新たなメンバーも加わり徹底討論します。

各界の論客が再び集結!

2020年末に開催されて大いに盛り上がった「あがるアートの会議」。前回に続いて今年も各界で活躍する論客の皆さんが集結しました。実業家の遠山正道さん、ホスピタルアートディレクターの森合音さん、福祉事業所施設長の原田啓之さん、高知県からリモート参加した映画監督の安藤桃子さん、それぞれが意気込みを語ります。

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遠山正道さん

「また勝手なことを言えるのが楽しみです(笑)」(遠山さん)

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森合音さん

「始まる前から熱気がある。いろいろな分野の方が集まるので、何が出てくるかわからないのでドキドキです」(森さん)

画像(原田啓之さん)

「異業種の方たちと福祉を盛り上げていけると、もっともっと世界は変わると思っています」(原田さん)

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安藤桃子さん

「(額縁に入っているみたいで)もうこれがアートじゃないかって。こんな時代なんですね。不思議です。自分がアート作品になってしまったような(笑)」(安藤さん)

そして、今年は新たなメンバーに、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」を率いる双子の兄弟、松田崇弥さんと松田文登さんが加わりました。知的障害などがある人のアート作品をデザイン化。ファッションや公共施設など様々な業界とコラボし、福祉領域のアップデートに挑んでいます。

画像(松田崇弥さんと松田文登さん)

「社会を本当にあげていくような、そういうアイデアが出たらうれしいなと思います」(崇弥さん)

「お手本みたいなこと言ってるな(笑)」(文登さん)

今回はどのような討論が行われるのでしょうか。アートの可能性についてとことん話し合います!

アートセーターが秘める可能性

2020年末の「あがるアートの会議」で、遠山さんと原田さんが意気投合して始まったアートセータープロジェクト。すばらしい作品が完成しました。

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完成したアートセーター

プロジェクトに直接参加しなかったメンバーたちからは、感嘆の声が上がります。

「セーター自体の不揃いさとか、唯一無二さというのがすごく良いと思う。自分の肩周りと多少合ってないとか、そういうところすらも愛着を感じられそう」(文登さん)

「これって代々語り継がれるくらいのロングストーリーが背景にあるセーターだと思う。その価値はお金では買えない。(セーターが)5万円は安いと思います。もう二声くらいいっていいかも」(安藤さん)

「遠山さんから投げられたボールを二人のアーティストが一生懸命受け止めて、この編み方をしてみたいと自発的に行動したこともすごく素敵です。関わる人が増えていくこと、成長していくことのいちばんの財産って、関わった人にとって『自分のことになる』ということだと思うんです。それがたっぷり入っているので、すごく素敵だなと思う」(森さん)

崇弥さんはプロジェクトの経緯を見て、アートセーターが持つ可能性を感じました。

「私は4歳上の兄貴が重度の知的障害を伴う自閉症なので、昔から当たり前のように接していましたが、なかなか障害って触れづらい。そうしたなかで、“社会を編む”とか、“障害を編む”とか、そういうコンセプトを一個すえて、出来上がっていく過程そのものもコンテンツ化していく動きができたら、一点物のアート作品として流通していく可能性があると思いました」(崇弥さん)

原田さんもアートセーターは周囲に及ぼす影響力があると語ります。

画像(アートセーターを手にする原田さん)

「いちばんうれしかったのが関係性なんです。これを編んでいることによって、(施設に)編み物をしに来たいと手を上げてくれるおばあちゃん、30~40代、子ども、チャレンジしたい人がかなりいらっしゃることがわかった。そういう方たちとつないでいく。そうやって周りでカバーしてくれる人たちと一緒に(作る)と考えると、たぶんどこでもできるという気はしています」(原田さん)

新プロジェクトはどうなる?

アートセータープロジェクトが完結したとき、大満足の遠山さんが「次をどんどん編んで!」とリクエストしていました。今後どのように展開していくか、メンバーたちの討論が始まります。

「編むっていう行為はいろんなことができると思う。手袋だったり、ソックスだったり、いろいろ転用できそう」(崇弥さん)

「ひとりコタツなんてどうかな? 最近、リモートで仕事も一人でやるじゃないですか。上はちゃんと仕事してんだけど、下はパジャマとか(笑)」(遠山さん)

画像(遠山正道さん)

「冬は寒いので、椅子にかけるカバーみたいなのはどうでしょう。アウトドアに行った時とかに、座って温かいとか」(原田さん)

「強烈なインパクトが与えられる小物がほしい。私、いつもお守り袋を下げてるんですよ。近所のおばちゃんとかが『作ってあげるよ』って、刺し子の生地とかでチクチク縫い上げてくれて、それ自体がお守りみたい。その中に大事な木のカケラとか、別の作品が入ってたら面白そう」(安藤さん)

画像(安藤桃子さん)

そこで、安藤さんの「お守りプロジェクト」について、視聴者の皆さんの反応を聞く「あがったボタンタイム」!テンションが「あがった」人は「あがったボタン」を押します。参加している130人のうち、半分の65人以上がボタンを押したら、番組がアイデアの実現に向けて応援するというシステムです。

リモート参加者の結果は66人!半分以上の賛同者を得られました。

画像(「あがったボタン」で66人達成)

お守りプロジェクトの実現化に向けて応援していきます!

コロナ禍で考えるアートの意味

続いては、去年の会議の後に、自身もあがるアイデアを実現したという、病院のアートディレクター・佐野正子さんからの相談です。佐野さんは医療現場に快適さや癒しを生み出す、ホスピタル・アートに取り組んできました。例えば、病院の一角には“ハッピーサークル”と名前が付けられ、大きなリボンの下に折り紙で作ったアヤメの花が飾られています。

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ハッピーサークル

ここは出産を終えた母親とその家族が記念撮影をする場所。制作には医師や看護師、入院患者やその家族が参加し、みんなの力で無機質だった雰囲気を変え、病院全体を盛り上げたのです。

佐野さんは、病院の廊下を使ったプロジェクトを考えていました。

「コロナが収束したら、病院の画廊化計画を妄想しています。例えばアートのそばにQRコードを添えて、アクセスすれば作品や作家のことがわかるようにしたい。地域とのつながりも考えると、そのようにできたら最高かなと思います」(佐野さん)

ところがその後、新型コロナによる緊急事態宣言が長引き、アート活動どころではなくなりました。現在、感染者が減ってはいるものの、医療現場は第6波への警戒を緩めてはいません。一方で、今だからこそアートの力が必要なのではという気持ちもあります。

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アートディレクター 佐野正子さん

「アートって、医療の現場の中でメインではないですよね。メインのほうが緊急事態を迎えている時に、『(アートの導入について)相談に乗ってもらえますか』って言いづらい。こんな時だからこそアートが必要だという思いと、こんな時だからこそあとにしたほうがいいという、二つの相反する思いのジレンマに陥ってます」(佐野さん)

コロナ禍におけるアートの役割。佐野さんの葛藤について、会議のメンバーがアドバイスを送ります。

画像(森合音さん)

「まず、『一人じゃない』と佐野さんに言ってあげたいと思う。アートを病院に導入しようという思いがある人は、みんな葛藤を抱えています。注意しないといけないのは、いま医療職の人たちがどういう状況にいるかヒアリングして、現場の痛みを共に知ること。画廊化計画の着目点はいいと思うんですけど、それをすることによって自分が何を表現しようとしているのか。佐野さん自身がまだ気持ちが揺れている状態なので、揺れていてはたぶん伝わらない。揺れているなかで、何か一つこれはやってみたいと思うところまで、自分の気持ちを持っていけるかどうかだと思うんです」(森さん)

画像(安藤桃子さん)

「なんのためにアートを病院に持ってきたいかが明確になれば、必ずそこに向かって進むと思う。患者さんが病気を忘れてしまうくらい楽しかったり、ワクワクしたりすることが、生命力を蘇らせていく。それが結果的に治癒につながっていくと思います。医療従事者の方々は今すごく大変な時期で、心が少しでも癒やされたら、本来の『私はこんな気持ちを届けたくて医療に関わってきたんだ』となれる。医療従事者の方と患者さん、双方の本来のコミュニケーションが蘇ることがアートの力だと思う」(安藤さん)

病院の廊下を画廊化する計画について、次々とアイデアが湧いてきました。

画像(松田文登さん)

「地域の方々を巻き込むとか、患者さんとか、いろんな方々との合流地点とか接点になっていくようなものがいいのかなと思った。患者さんとか、地域のアーティストさんの展示があって、投票所みたいな形になっていて、誰でも来ていいですよという、開けた場所がいいのかな」(文登さん)

画像(遠山正道さん)

「例えば、四角い箱みたいなのを壁にくっつける。病院って窓口とかあるじゃない? 窓口画廊とかいって、『なんだろう?』と思ったらフタを開ける。開けると一枚の絵が飾られていて、今週のアーティストって、名前だけが出てる。そうすると『毎週見よう!』みたいな・・・。そんな感じになれたら素敵かな」(遠山さん)

画像(原田啓之さん)

「ゴールデンキャンバスみたいな。誰かが申請すれば、子どもでもいいし、地域の中学校の美術部でもいいし、その町のアーティストが来てもいい。月に1回くらい『ゴールデンキャンパス貸し出します、どうぞ壁画を描いて下さい、あとは自由』みたいなのがあって、遊びに来る場所になっていて、ついでに受診するような。いかに病院に来る人や医療従事者が楽しめるかを考えると、定着していくのかなという気はします」(原田さん)

ここで、今回は都合で参加できなかった佐野さんから、スタジオにメッセージが届きました。

【帰り道に電車の中で途中から拝見しています。参加者の皆さん、オンライン参加の皆さん、応援ありがとうございます。泣いてしまいそうです】
(佐野正子さん)

これからの連携にも期待です!

大学とのコラボで広がるアートの輪

「あがるアート」の輪は全国に広がっています。茨城県・龍ケ崎市にある流通経済大学では、10月に“であうアート展”を開催。100点に及ぶアート作品はすべて、障害のあるアーティストが生み出しました。

大学と地域のアーティストのコラボが始まったのは7月です。学生たちが訪ねたのは、福祉事業所「生活工房」。アトリエでは、20人のアーティストたちが創作活動に取り組んでいます。学生たちは定期的に訪れては、絵画やニードルワークなど、アーティストたちと創作活動を共にしたのです。

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「生活工房」の様子

「障害者の方たちが、こんな素敵な作品を作っているって知らなかった。すごいなと思ったことを発信していきたいと思いました」(学生)

施設長の三宅昌子さんは、大学とのコラボに大きな期待を寄せています。

「障害者は、出会いの場がないと思うんです。出会いの場がないと『この人たち、何を考えているんだろう』と差別につながる。いろいろな出会いがあると、もっと自由な社会になると思いますし、利用者の方も生きやすくなる」(三宅さん)

展覧会初日、アーティストとその家族が次々と訪れました。作品はすべて写真撮影が可能で、SNSで拡散してもらいます。

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作品を写真撮影する来場者

開催されたひと月の来場者は1200人越え。さらに、ほかの自治体から展覧会の開催をしたいという問い合わせもあるなど、大成功に終わりました。

「あがるアート」で、みんなでどんどんあげていきましょう!

“あがるアート”
(1)障害者と企業が生み出す新しい価値
(2)一発逆転のアート作品!
(3)アートが地域の風景を変えた!
(4)デジタルが生み出す可能性
(5)全国で動き出したアイデア
(6)アートでいきいきと生きる
(7)福祉と社会の“当たり前”をぶっ壊そう!
(8)PICFA(ピクファ)のアートプロジェクト
(9)「ありのままに生きる」自然生クラブの日々
(10)あがるアートの会議2021 【前編】 ←今回の記事
(11)あがるアートの会議2021 【後編】
(12)アートを仕事につなげるGood Job!センター香芝の挑戦
(13)障害のあるアーティストと学生がつくる「シブヤフォント」
(14)「るんびにい美術館」板垣崇志さんが伝える “命の言い分”
(15)安藤桃子が訪ねる あがるアートの旅~ホスピタルアート~

特設サイト あがるアート はこちら

※この記事はハートネットTV 2021年12月7日(火曜)放送「あがるアートの会議2021 前編」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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