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もうひとつの“性”教育プロジェクト 自分らしく生きるための性教育へ

記事公開日:2018年06月11日

1つのテーマについて社会をみんなの力でブレイクスルーし、未来を変えていこうというプロジェクト型番組・ブレイクスルー2020→「もうひとつの”性“教育プロジェクト」。Action2では、第1回の放送後番組に寄せられた声をもとに、半世紀前から独自の性教育を行ってきた女子校や性教育の国際基準などから、今、必要な性教育を考えていきます。

学校でも家庭でも“隠されてきた”性の話

今の時代にあった性教育を考えてみようと6人のメンバーが集まって話し合った「もうひとつの”性“教育プロジェクト」第1回。その放送後、100件近い(放送時点)反響が寄せられました。

今回は、その反響をもとに作戦会議を開催。プロジェクトのメンバー3人が集まりました。
MCの風間俊介さん、文筆家でレズビアンとしての思いを発信している牧村朝子さん、そしてひきこもりを経験した現代美術家・渡辺篤さんです。

番組に寄せられた声のなかで目立ったのが、「そもそも性について知らないことが多すぎる」という声です。

中高一貫の女子高でした。避妊具の取り扱い方については一切触れませんでした。けれど、卒業してから聞く話で、避妊具を正しく扱えない子が多く、不安になると訴える子もいます。保健の先生は教えるにはまだ早いと言っていました。(19歳以下・女性・学生)

学校での性教育が不十分であるばかりでなく、親に性嫌悪があって性にまつわる必要なはずの情報まで家庭内で遮断されてしまうという声もありました。

また、性的マイノリティーの当事者やその家族からは、ひとりで抱えてきた悩みや、心の叫びが寄せられました。

Xジェンダー(男性・女性いずれの立場もとらない人)のナヲです。親にはカミングアウトしていますが、今ひとつ理解が得られません。教育すべきは、LGBTという言葉がなかた世代ではないかと僕は思います。僕は失敗作じゃない。真っ当な人間だ!どうかそれを証明してください。(20代)
私の娘はトランスジェンダーです。20歳の時、カミングアウトしてくれたのに100%受け止めきれない自分がつらいです。理解したいのに母親なのにつらいです。どうしたらよいのかつらいです。

では、これまではどのような性教育が行われてきたのでしょうか。 プロジェクトメンバーの渡辺さんは、「いろんな人の声を聞いてみたい」と街頭インタビューをすることにしました。

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いざ街の声を聞いてみると、海外では実際に避妊具を見せ、装着方法を学ぶなど具体的な性教育が実施されているという声がある一方、日本では学校でも性についてきちんと学ぶ機会がなかった人が多い現実が見えてきました。

街頭インタビューに応じてくれたある女子学生は「性の話とかはしづらい。親が避けている感じがする。」と語るなど、親の立場からも子の立場からも、家庭では性の話などはしづらいと感じていることがうかがえました。

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」から見る世界の性教育

今年の4月には、東京都の教育委員会が、足立区の公立中学校で行われた性教育の授業に「問題があった」とする出来事がありました。

今回指摘を受けた授業では、中学校の学習指導要領に書かれていない避妊や中絶について説明しており、都の教育委員会はこれを「子どもによっては早すぎる」として問題視したのです。

では一体、いつから何をどう教えたらいいのでしょうか。
番組へ寄せられた声のなかに、そのヒントとなりそうな意見がありました。

国際的な基準となるユネスコ『セクシュアリティ教育ガイダンス』というのがあります。これに沿った性教育を日本でも実践してほしいと思っています。(40代・男性)

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」とは、ユネスコが世界中を調査して作った、性教育の指針です。

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「性は、人生のあらゆる場面で関わってくるもの」ととらえ、性の多様性や尊厳から避妊や性暴力の具体的な対応の仕方まで幅広く触れられています。

また、ガイダンスでは5歳から年齢に応じて教える内容を示しています。

5~8歳 精子と卵子で妊娠すること 9~12歳 避妊で妊娠を防げること 妊娠がどんな経過をたどるか 12~15歳 妊娠と性的感覚 その違い 避妊の種類や効果 15~18歳以上 不妊 それをどう伝えるか 望まない妊娠 その時どうするか

例えば、「精子と卵子で子どもができること」は5歳から。避妊については9歳から。こうした指針が世界の性教育の現場で参考にされているのです。

ガイダンスを翻訳した立教大学名誉教授の浅井春夫さんは、全国的な統計から中学3年生でも性交体験率が累積で10%、高校3年生では40%に達する現状を踏まえ、こうした性教育を早い段階から始めることが重要だと言います。

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「中学のところからもうすでに性交体験は始まり、例えばセックスする子は妊娠の仕組みを知らなかったらどうするんだろうと。基礎的な勉強をしなかったら、コンドームの使い方さえ知らなかったら、セックスする資格は基本的に私はないと思うんですが、そういうことに対して日本の性教育の政策は現場ではなくて、これはかなり抑制的であると。」(浅井さん)

ガイダンスを作るにあたり、ユネスコが世界で行われた85の性教育プログラムを調査した結果、3分の1が初めての性交を遅らせ、早めたものはひとつもなかったといいます。

性をあらゆる側面から学ぶ女子中高生たち

日本でも広く深い性教育を行う珍しい私立学校があります。吉祥女子中学・高等学校では50年前から独自の性教育を行ってきました。

独自に作った教科書をもとに、中学1年から高校3年まで、性をあらゆる側面から学びます。保護者には事前に説明し、クレームが来たことはないそうです。

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「避妊や性感染症の予防、デートDVに対する予防など、性の安全・健康な教育でもあるので、その面も非常に大事だと思います。世界のなかでもジェンダー度なんかのランキングでは日本、我が国は低い位置にありますので、実はこんな差別があったりとか、見えない天井があったりするなかで、本校の生徒ができるだけそういったものから解放されて、本来の力を世の中で発揮していけるようになればいいなという思いもあります。」(保健体育科 教諭 楢原宏一さん)

この学校では、高校1年の時に全生徒が性に関するテーマを自ら決め、半年かけて研究を行います。テーマは「障害者の性」から「女性専用車両」まで、実にさまざまです。

こうした教育を受けてきた生徒たちなら、プロジェクトに対するヒントをくれるかもしれない―。 プロジェクトメンバーの牧村さんは、高校2年の生徒たちから話を聞くことにしました。

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「例えば数学とかは、社会に出てずっと数学ばかりやってるかっていったらそういうわけじゃないけど、保健の授業っていうのは、やっぱりどこかでずっと人間の生活のなかで関わってきているものだから、一番大切なことをちゃんと勉強して、すごく良かったと思うし。今まで性っていうのは隠されてきた存在で、まあ親とかに聞いてもなんとなくはぐらかされたりとかしてきたものを、ちゃんと自分の意志で勉強できて、そういう場ができたっていうのは本当に私はうれしかったです。」(ミオさん・高校2年生)

性教育は生きていくうえでとても大切なこと。自主的な学びを経て、生徒たちのなかにはそんな認識が育まれているようです。

「小さな頃から性に対する偏見ってあるじゃないですか。親からもそうだし、社会からもそうだし。だから、中1の授業をやるときはその偏見をまず取り除く。刷り込まれていることとかを全部取り除いて、もうフラットな状態から始めていくんですよね、それが結構大変な作業ではあります。」(吉祥女子中学・高等学校 女性教諭)

さらに授業では、性病に関する知識や生理日を予測するアプリを紹介するなど、教科書に載るようなことだけではなく実践的な内容も数多く含まれています。

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「普通に女性が生きてて、ちょっとわかりづらいなっていうことも、今はいろんな情報があるのでサイトで調べれば出てくると思うんですけど、何が正しいかわからない。でも、学校で教えてもらったことは正しいって信じられる。」(ふーちゃん・高校2年生)

現場の声を聞いた牧村さん。「知る」ことが生徒たちの力になると感じていました。

「性暴力を受けている高校生も、大人が教えてくれないこと、教科書に書いてないこと、学校で話ができないことを、私はされちゃったんだって思って黙っちゃうんだよね。言い出せなかったりするのよね。自分に対して否定的になっちゃう、知らないから怖いって思っちゃう高校生が今、同世代でいるわけですよね。」(牧村さん)

自分らしく生きるための性教育をどうしたら同世代に伝えられるのか?

プロジェクトへの具体的なアイデアを聞いてみたところ、「私たちの学校から発信する」という頼もしい意見が。同世代である自分たちが性について学ぶ機会を得た経験を活かし、それが特別なことではないんだということを広めたい、と考えてくれたのです。

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そして最後にもう1つ。
性教育を積極的にやることに対して抵抗感がある大人は一定数いると想定されます。今後の活動へ向け、そうした方たちの意見もまた、聞いてみたいと渡辺さんが提案。

「性教育を積極的にやることに対して抵抗感がある、ある種の大人が、どういう考え方のベクトルを持っているのかをちょっと聞きたいっていうのがある。もし僕らが何かを作るにしても、ある種の人を怒らせてしまうのかとか、どこまでやることがある種のタブーに触れることなのかとか、そういうことを聞いてみたい。」(渡辺さん)

街の声や教育現場からは、情報があふれる時代だからこそ正しい情報を求めている若い世代の姿も浮かび上がってきました。そんな彼らの力になる教材を作れないか。みなさんからの声を力に、プロジェクトをこれからも進めていきます。

NHKハートネット(福祉情報総合サイト)のなかにある「みんなの声」に、このプロジェクトに関するご意見、体験談をお寄せください。詳細はこちらへ・・・ もうひとつの“性”教育 プロジェクトへのアイデアや体験談、募集中!

※この記事は2018年05月28日(月)放送のハートネットTV 「もうひとつの“性”教育プロジェクト Action2」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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