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これだけは知ってほしい!“セクマイカップル”のこと

記事公開日:2021年04月05日

近年ドラマなどで取り上げられ、広く認知されるようになった“セクマイ”(セクシュアルマイノリティー)。しかし、セクマイのみなさんの声に耳を傾けてみると、周囲の好意的な態度の裏に“心の壁”を感じてしまうこともあるとか。多様性が叫ばれる今だからこそ、セクマイやセクマイカップルのアライについて考えます。

セクマイ当事者が感じるモヤモヤ

LGBTなど性的少数者をさすセクシュアルマイノリティー(=セクマイ)。アライを目指すタレントの最上もがさんと、お笑い芸人のキンタロー。さんは、どのようにとらえているのでしょうか。

画像(タレント 最上もがさん)

「ぼく自身も恋愛対象を異性と決めているわけではないです。当事者の方々が実際こういうことで傷つくんだということを今回は聞きたい、アライさんになりたいなと思います」(最上さん)

画像(お笑い芸人 キンタロー。さん)

「自分にもゲイの友だちがたくさんいるので、考えたいなと思ってたことですね」(キンタロー。さん)

2021年3月17日、セクマイカップルに関する大きな出来事がありました。

画像(「違憲判決 結婚の平等へ大きな一歩」と書かれた横断幕を広げる人たち)

同性どうしの結婚が認められないのは、婚姻の自由などを保障した憲法に違反するとして、全国5か所で訴えている集団訴訟の初めての判決が、札幌地方裁判所で出たのです。

裁判所は、同性婚を認めないのは合理的な根拠を欠いた差別的な扱いだとして、法の下の平等を定めた憲法に違反するという判断を示しました。

評論家の荻上チキさんは、この結果をどう見ているのでしょうか。

画像(評論家 荻上チキさん)

「すごく画期的な判決です。異性カップルに対して結婚が認められているにもかかわらず、同性カップルに対しては認められてないという不平等な取り扱いを続けていること自体が違憲、つまりおかしいんだという判決なんですね。多くの社会的なメッセージがあると思います。当然ながら、国が法律で同性婚のできる体制を作らなくてはいけないという方向にもなり得ますし、またこの判決を聞いた多くの当事者の方々が励まされましたよね」(荻上さん)

多様な性への理解が進んできていると感じられる一方で、当事者からは、まだモヤモヤすることがあるという声が届いています。

かわいいから…?
カミングアウトしたら「かわいいから大丈夫だよ~」と言われた。かわいくない場合はダメってこと…?
(東京都/30代/MtF)

「すごく難しいなと思います。口からパッて出ちゃった場合もありますし、本音というよりそういうふうに言うことで相手を励まそうと、理解してるから大丈夫だよって言おうとしたのかもしれないし」(最上さん)

よかれと思ってかけた言葉が、セクマイ当事者にとっては否定と感じられてしまう。そんな“心の壁”について話してくれたのは、ゲイのジョボビさんです。絵や文章を書きながら、料理が好きな彼と一緒に暮らしています。

「僕がモヤモヤしたのは、彼とのことを知り合いに話したときに、『私そういうのぜんぜん偏見ないし、大丈夫だよ!』みたいに言われたことです。すごくありがたいし、悪気がないことは重々わかるけど、『大丈夫ってなんなのだろう?』と思って、胸に小さなトゲが刺さった感覚でした。自分が「いいよ」って認める立場にあるっていうことにまったく疑いがないように感じたし、『僕たちってこの社会の居候ですか?』って、自分を卑下する気持ちがわきました。対等でありたいです。」(ジョボビさん)

キンタロー。さんは、そう言ってしまった人の気持ちもわかると話します。

「ジョボビさんを安心させようと、仲良くなりたいと思って言ったことが、実は引っかかる言葉だったって考えたときに、今までに自分も失言しちゃってるんじゃないかって怖くなりました」(キンタロー。さん)

「本当に、思ってくれてるってことはすごく伝わっているんですけど、小さい「大丈夫だよ」っていう言葉でも、やっぱり自分にとってセクシュアリティっていうのはとても死活問題というか、ずっとそれと向き合ってきてる、大事な部分なので、やっぱり『大丈夫って一体なんだろう』っていう疑問がわいてきてしまうのはしょうがないかなと思ってます。」(ジョボビさん)

カミングアウトされたときに、どう言ったらいいかわからない。そんなときはどうしたらいいのでしょうか。

「いろんな人のなかで印象的だったのが、ゲイだって伝えたときに『今、付き合ってる人はいるの?』とか『どんな人なの?今度会ってみたいな』みたいな感じに、ゲイであることの告白が通過点になって、そのあとの話が展開していって、すごくフラットだなって感じたことです。『いいよ、大丈夫だよ』とか肯定的な言葉だとしても、顔色が怪しいと、そこに過敏になっちゃうので、もし、何を言っていいか分からないって戸惑ってしまったら、『正直、ちょっとびっくり。衝撃を受けてるわ』みたいにそのまま言ってもらった方が、こっちも『だよね』って、結構、正直に言いやすいと思います。その人がその人らしく受け取るのが、一番自然なことだと思う」(ジョボビさん)

モヤモヤの背景にある小さな攻撃性“マイクロアグレッション”

モヤモヤした経験について、ほかにも声が届いています。

あなたも普通に生きられる
同僚にカミングアウトしたときのこと。
「最近は女性同士でも子どもを持てるから大丈夫だよ」という言葉が返ってきました。「女性の幸せとは子どもを持つこと」が前提にあり、「あなたも“普通に”生きられる、だから大丈夫だよ」と聞こえ、モヤッとしました。
(東京都/30代/レズビアン)

最上さんは、育った環境や価値観の違いに目を向けます。

「(異性との交際が)絶対当たり前だよって思ってる人もいるし、それを信念に生きてる人もいるので、すごく難しいなって思うんですよね。だからみんなに理解してもらうのも難しいですし」(最上さん)

この体験談では、子どもを持てる「から」大丈夫だよ、というように、ある条件を満たせば肯定されるという言い方がなされています。
今回、届いた声のなかには、こうした「条件付きの肯定」が少なくありませんでした。
マイノリティーに対して、条件付きの肯定をしたり、対等ではなかったり、相手の感覚を軽んじてしまったり。こうした言動は“マイクロアグレッション(小さな攻撃性)”と呼ばれています。

画像(マイクロアグレッション(小さな攻撃性)の説明)

「日本でもここ3、4か月ぐらいで本が紹介されて、新しい概念だと思われてるんですが、当事者にとっては新しいわけではなくて、昔からある光景です。たとえば『あなたは女性なのにすごいですね』って、本人は褒めてるつもりかもしれないけども、『女性なのに』って言葉をつけることで女性は本来劣ってるものだということが小さく埋め組まれている。たとえば『大丈夫』とか『私は気にしないですよ』っていう一言に、気にしないであげてるよっていう、ある種、特権意識がそこにある。それを選べる側に相手はあるんだけど、自分は問われる側なんだな、判断される側なんだなと感じてモヤモヤする。そうしたことを言葉にしてくれたのがマイクロアグレッションですね」(荻上さん)

自然と埋め込まれてしまった“正解を求める回路”

マイクロアグレッションの背景にあるのは、セクマイ当事者とそうでない人の“心の壁”だということが見えてきました。ではなぜ、“心の壁”ができてしまうのでしょうか。

あるセクシュアルマイノリティーの子どもを持つ親が悩みを打ち明けてくれました。

18年前、高校生だった子ども、ソラさんから『体は女性だけど、心は男性なんだ』とカミングアウトされたこの方は、対外的には当事者の親として講演をするなど、LGBTについて理解しているつもりでした。

画像

ソラさんとソラさんのお母さん(イメージ)

しかし、ソラさんをどうしても「息子」と呼ぶことができなかったといいます。

「私は思っていたほど柔軟ではなかったということが次々に思い当たりました。学校の成績に異様に執着したり、不登校にさせないようにしたりと、子どもが『普通』であることへの欲求がいろいろありました。自分のなかに、こんなにもバイアスがあるなんて思ってもみませんでした」(ソラさんのお母さん)

ソラさんのお母さんの葛藤。ジョボビさんはどうご覧になったのでしょうか。

「ソラさんのお母さんに限らず、僕自身やたいていの人が、小さい頃から正解と不正解のある社会に育っていて、いろんなことに正解を求めちゃう“回路”みたいなものが自然と埋め込まれてしまっているのかな、とすごく思います。たとえば図工とか正解がないようなものでも、褒められる作品と、ちょっと頑張りましょうみたいな作品があって、そうなると自分のいろいろな感性さえも『これは正しいのかな?間違ってるのかな?』と、外に答えがあるような、正解探しをするようなところがある。正しい、間違ってるというモノサシを、知らずに持たされちゃっているのかなと思います」(ジョボビさん)

ありのままの心を見つめることから始めよう

それまでの人生で植え付けられてきた、正解を求める“回路”が影響してしまい、子どもを受け入れることができなかったソラさんのお母さん。その後、大きく心境が変わる出来事がありました。

ソラさんが「乳房を切除したい」と言い出したとき、ついに心が限界になり、パニックに。このままでは壊れると思い、家族にすべてを吐露しました。
「自分は『分かっている』というふうにしていたけれど、本当は分かっていないこと。いっぱいいっぱいであること。それが今の自分で、ここからはじめます、と言いました。」(ソラさんのお母さん)

画像(ソラさんとソラさんのお母さん(イメージ))

「『理解あるちゃんとした親』をかなぐり捨てて、自分の本心を受け入れてみると、不思議と、ソラと接するのが楽になっていきました。ソラの告白から15年。最近ようやく自然に『息子』と呼べるようになりました。『親として立派であるべき』という思いから、いったん逃げ出すこと。それを大人もしていいって、私は思います」(ソラさんのお母さん)

ありのままの自分の心を素直に見つめ直した、ソラさんのお母さん。このお話から、心のありようの大切さが伝わってきます。

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スタジオの様子

「私も娘がいますから、本当に親の気持ちっていうのも痛いほどわかるんです。自分の子どものこととなると、よかれと思って良い母を演じてしまう。でもどこかでやっぱり自分が追いつかなくてパニックになってしまったとおっしゃっていましたが、そこで気づかれたのがすごいなと思います。それで正直にソラさんに話されて、そこからつながっていきましたって」(キンタロー。さん)

「カミングアウトされたときに抱えてしまった自分のステレオタイプや偏見を、他人に相談してはいけないんだ、私は味方にならなきゃいけないから、びっくりした感情とかショックを受けたことなんて黙ってなきゃいけないんだ、という別の規範性で沈黙をせざるを得ないということもあります。そのときに自分が一体どんな規範性に苦しめられているのか、いったん立ち止まって考えて、相手を傷つけないよう丁寧に、正直に話すことが必要かなと思います」(荻上さん)

「ソラさんのお母さんは本当に自分の気持ちをとっても丁寧に見ていらして、ありたい自分と本心の自分のズレにすごく気づいていて、そういうふうに現実の自分に寄り添うことができたら、きっと他の人も現実のその人に寄り添うことができるのかなと思います。『LGBTの人をみんな受け入れなきゃいけない』っていうのが理想とするなら、現実的には、まず自分にカミングアウトしてくれたその目の前の人を大切にして、その大切な人の大切な人も大切っていう感じで、その大切な人の輪が広がっていったら素敵かなと思います」(ジョボビさん)

「やっぱりすべてに共通するのは、相手を思いやること。否定をしちゃうんじゃなくて、そういう人もいるよね、ってみんなが思ってくれればいいと思いました」(最上さん)

セクマイについての知識を増やすだけではなく、セクマイと向き合う自分の心を見つめることが、アライへの第一歩となりそうです。

※この記事はハートネットTV 2021年3月17日(水曜)放送「#隣のアライさん ~これだけは知ってほしい!“セクマイカップル”のこと~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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