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HSPの困りごと・お悩み 支援者からのアドバイス(2)

記事公開日:2020年12月21日

「#隣のアライさん」プロジェクト、第4回のテーマは音やにおい、他人の感情などに敏感な気質“HSP”です。前編では、五感の敏感さの悩みを、公認心理師の佐々木智城さんとともに考えました。後編では、他人の感情への敏感さや、家族との生活について考えます。

画像(佐々木さん顔写真)佐々木智城さん 星槎道都大学准教授、公認心理師
自身が代表を務めるカウンセリングオフィスで、HSPについての相談を多数受けてきた。

他人の感情への敏感さの悩み

いい鴨になってました

子どものころ、対戦が苦手でした。
バドミントンとか将棋など、「そこに球を打ち込んだらかわいそうかな」「この駒をとったら相手は嫌な気持ちになるだろうな」の連続で、勝ちに行けませんでした。 対戦において、勝つというのは相手を負かすことなのですが、「負けたら相手は嫌な気持ちになるだろうな、それは悲しいな」と謎の共感力が自分を苦しめていました。
今は少しだけ勝負にも慣れました。
しかし子どもの頃のわたしは俗にいういい鴨で、舐められて虐められたり、面倒を押し付けられたりしていました。
おそらくHSPの方はよく「みんなへの注意を自分が受ける」ことを体験しているのではないだろうかと思います。
「話をわかってくれそう、そして言いやすい」ですから。

今は気の強いHSP / 女性 / 30代

―他人の感情に敏感に反応してしまうという悩みがたくさん寄せられました。この方は特に、勝負ごとが苦手だということです。

佐々木:「自分が勝ったら相手が嫌な気持ちになるだろう」と、あとのことを心配している面もあるんじゃないでしょうか。実際、あとは悪くならないので、試しに2回に1回ぐらい本気で勝負してみるとか、ギリギリで勝ってみるとか、できたらいいですね。それから前編で「自分の気持ちが置いてきぼりの人が多い」と話しましたが、こういうケースでも、そもそも勝負ごとを避けたいという気持ちが置いてきぼりなのではということもあります。なので、「別の、戦わないゲームでもいいよ」とか、「勝負ごと自体をしない選択肢もあるよ」という提案もありえますね。

―また、この方は「面倒を押し付けられる」とも書いています。こうした声も複数ありましたが、アドバイスはありますか。

佐々木:「してあげなきゃ」と思って自分からやってしまう、そしたら相手も「してくれるならいいか」と思う。それが度重なって、周りが当たり前に思っていって、あとで本人が「感謝されていない」と気づいて落ち込んだ、という話はよく聞きますね。この場合、カウンセリングでは、どう断ったらいいか、相手からどう離れるか、ということを話し合います。

特に「アサーション」と呼ばれるコミュニケーション方法を身に着けると、楽になることが多いです。これはアメリカで開発された方法で、D・E・S・Cの4つの段階に分けて、人にものを伝えていきます。DはDescribeで、客観的に状況を説明する。EはExplainで、自分の感情や気持ちを表現する。SはSpecifyで、提案する。CはChooseで、提案したものが無理な場合は別の代替案を提案する段階です。たとえば、仕事を押しつけられているシチュエーションであれば、Dは「今、私は任されていたもともとの仕事をやっていて、時間も迫っているので」、Eは「余裕がない状態なんです」。Sは「他の人と分担できるように調整してもらえたら助かります」。Cは「それが難しければ、ちょっと時間をください。2、3日あればできると思いますから」という感じです。自分をHSPだと考えている人は、DとEができないことが多いです。とくにE、自分の気持ちを表現することは、カウンセリングでもメインテーマになります。それまで自分の気持ちが置いてきぼりだった人が、いきなり1人で実行することは難しいので、周囲の支えが必要です。認知行動療法を行っている病院やカウンセラーなどに、「アサーショントレーニングは受けられますか」と聞いてみてください。

人見知りではないが

私は相手の顔の表情から過度に感情を読み取ってしまいます。

こちらが一言しゃべって、ちょっとでも顔の表情が変わると、「あれ、今の発言で不快になったのかな」「もっと違う言葉が良かったかな」などと色々と考えてしまい、相手の言葉が耳に入って来なくなり、会話が続かなくなります。
そのため、家族の間でも顔を見ずに会話をしています。

「なぜ顔を見て会話をしないのか?」と聞かれたときには「人見知り」と言う事にしています。

かた / 神奈川県 / 男性 / 40代

―相手の表情が気になる、それによって会話ができなくなる、という悩みも、数多く寄せられました。

佐々木:この場合、相手の顔を見ない、または相手の口の周りを見る、という方法があります。また、メガネをあえて視力に合わない度数にして、ある程度見えなくする工夫をする人もいます。私からは、自分の足の裏に意識を集中するということをお勧めしています。というのも、相手に注意が向いて、相手の情報ばかりが増幅されてしまっている状態なので、自分に意識を戻して、そして落ち着かせる。そういうときはだいたい、地に足がつかない感じになっているので、「足の裏がちゃんと床についているかな」と意識するといいです。それと、会話が続かなくなったときや、何を言ったらいいのかわからないときは、まず「あのう」とか「ちょっといいですか」と言ってみるのもお勧めです。話すよ、っていう合図をすれば相手は聞く姿勢になりますから。会話の流れを自分に持ってこられる、自分のターンになりますよね。

自分の体の声や、心の声を一番大切にすることが大事です。相手はあとでいい。自分が安心して落ち着いていなければ相手のことをバランスよく考えられないので、まずは自分を大切にすることです。

家族との生活の悩み

子どもの声

音に敏感で自分の子どもの声が苦手です。
大声を出されると、突然殴られたのと同じくらいの衝撃と痛みを感じます。
身近な人に「母親だから我慢しなければいけない」「母親は子供の声をいつも聴いて気持ちを汲み取らなければならない」と言われると辛い。
耳栓や音楽プレーヤーで自衛しますが、母親としての役割を果たしていないような気がして罪悪感に苛まれます。
自分の子どもの声であっても苦手な人がいることを周囲の人が理解してくれたら良いなと感じています。

ルエ / 愛知県 / 女性 / 30代 / 母親

―この方は、自分の子どもの声が苦手だそうです。同じ家に住んでいる家族の音は、対策したり、環境を選んだりするのはなかなか難しそうですね。

佐々木:そうですね。同じ家だと、刺激を制御するのがなかなか難しかったり、家族になかなか理解されなかったりという苦労もよく聞きます。大人が相手の場合は、基本的には話して、やり取りをして解決していく。「自分は音に対してとても敏感で苦しんでいる。耳元で黒板キーッてやられたら嫌でしょう、それみたいな感じなの」などと伝えられるといいのですが。家族がわかってくれなければ、部屋にいてじっとする人や、家から外に出ていく人もいます。どこかしら自分だけの空間を作るということです。話せる関係性ではない場合は、離婚して楽になったという人もいます。大切な選択肢ですよね。

自分の世界をつくることに対して、この方のように「母親なのに」というような罪悪感は、いろんな方が持っています。でも、母親や父親の役割と言われるものをみんながきちんと果たしているかというとそうではなくて、「子どもから離れたり、子どもに対して腹が立ったりという話が結構ありますよ」とか、「他のお母さんもいろんな感情を子どもに持っていますよ」という話はします。

―別の方からは、「ママ充電しまーす!」「充電完了!待っててくれてありがとねー!」と楽しく伝えることで、気持ちよく受けとめてもらえるというエピソードもありました。

佐々木:「これからこうするよ」と予告して、充電できたら感謝する。周りの人間関係がスムーズになるし、自分自身に対してもそんなに責めずに済む感じがしますね。ギリギリまで疲れてからだと、「ちょっと充電します」ってなかなか言えなかったりするから、それより手前で言うことは必要ですよね。

私は小さい頃から、泣き虫で、アカンたれで、敏感・繊細で、ダメな人間、生きている価値がない人間と思っていました。いじめにあったり、気がつけば集団から爪弾きにされ、孤独でした。親にも変わった子、難しい子、拘りが強い子と言われ、家庭にも社会にも居場所がなく、いつも希死念慮に苛まれていました。

ちしょう / 当事者

―さまざまな場所でつらい思いをしてきたという声ですが、とくに親からの否定的な接し方については、取材のなかで数多く聞かれました。本人へのアドバイスはありますか。

佐々木:私が受ける相談でも、こういうケースがありました。この場合、家から離れられる年齢になったら離れたほうがいいですね。わかってくれる人がいたら、その人と接する時間を増やすのもありますね。わかってくれる人はどこかに必ずいます、よく見てみると。

それから、家を出られない状況でも、自分の部屋にぬいぐるみをたくさん置いて、落ち着ける、安心できる場に改造した人がいます。どこにでもついてくるような親の場合は、自分の中にもうひとつの世界を作って、そこにいる人と対話するということもあります。動物や植物と対話する人もいます。豊かな内面の世界に避難して、自分を守るというのも大切な1つの方法ですね。

―親との関係にトラウマがあるという人には、取材のなかで少なからず出会いました。敏感さとトラウマは、どのように関係してくるのでしょうか?

佐々木:そうですね。対処不能な体験って、だいたいトラウマとして残るので、敏感さの悩みとトラウマはセットになりがちです。もともと敏感さがあって、いろんなものの影響を受けやすいから、刺激がトラウマ体験になりやすく、それが「また起こるんじゃないか」となって、さらに敏感さにつながるという形だと思います。

トラウマがある場合は、カウンセリングなどでトラウマが緩和されていけば、敏感さ自体も和らぐ可能性があります。ただ、トラウマを丁寧に扱ってくれるところを見つけるのがなかなか難しい。EMDRなど、トラウマ治療のアプローチはいくつかあり、インターネットで検索すると、その療法を行う国内の治療者のリストが出てきます。そういったものを参考にしてみてはいかがでしょうか。

―最後に、番組に寄せられた声全体を見て、伝えたいことを教えていただけますか。

佐々木:自分をHSPだと感じている人は、周りになかなかわかってもらえないし、自分のことは置いてきぼりですよね。自分よりも相手を優先しているなかで、自分を感じられなくなって、生きづらくなっている。ですから、自分の心の声とつながることが必要だと思います。何かを頼まれたときや選ぶときに、自分の心の声に耳を傾ける。「自分がわからない、自分がからっぽな感じがする」という人が結構いますが、それは自分を抑えてきた結果なので、自分を感じていけば、必ず自分を取り戻せます。心の声が「これをしたい、これは嫌だ」と必ず言っていますから。

五感への刺激や他人の感情に押し流されそうになるとき、自分の心の声を大切にすること。そのためにできる工夫を、佐々木さんにたくさん教えていただきました。番組では、これからも敏感さの悩みに寄り添っていきます。

HSPの困りごと・お悩み 支援者からのアドバイス
(1)HSPへの向き合い方、五感の敏感さについて
(2)他人の感情への敏感さ、家族との生活について ←今回の記事

※この記事はハートネットTV 2020年11月25日放送「#隣のアライさん これだけは知ってほしい!HSPのこと」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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