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これだけは知ってほしい!聴覚障害のある人たちの悩み

記事公開日:2018年05月17日

聴覚障害と言っても、まったく聞こえない人、補聴器をつければ少し聞こえる人、生まれたときから聞こえない人や途中で聞こえなくなった人など、その状況や状態はさまざまです。聴覚障害の人は日常生活でどんな悩みを持っているのでしょうか。聞こえる人に「これだけは知ってほしい!」という内容満載です。

困るのは「情報伝達の難しさ」と「誤解」

「職場のランチや飲み会など難聴者が健常者に囲まれるとどうしても会話についていけなくなります。『会話についていけない=おとなしい・やる気が無い・周りが見えない人』といったレッテルを貼られてしまいます」(ちびちゃん・東京・30代)

番組に寄せられた聴覚障害のある人からのカキコミです。聴覚障害は、外からは分かりづらい障害のため、知らず知らずのうちに当事者を傷つけたり、誤解したりしやすいと言われています。聴覚障害のある人は、日頃どんな悩みを抱えているのでしょうか。

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日本各地からおよそ3000人が集まった「全国ろうあ者大会」の参加者のみなさんに日頃困っていることを聞いたところ、多かったのが「情報が入ってこない」という悩みです。

「電車が止まったときアナウンスが流れますが聞こえないので何をいっているか分かりません。情報が入ってこないのでとても不安です。」(参加者の男性)

「病院で待っているとき呼ばれても聞こえないので困ります。」(参加者の女性)

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一方で、「情報を伝えることができない」という声も。

「電話できないので、銀行のキャッシュカードやクレジットカードをなくしたとき、代わりに知人に電話を頼んでも、『本人ですか?』と聞かれます。カード会社や銀行は、カードを失くしたときの聞こえない人へのサポートをしっかりしてほしいです。」(参加者の男性)

「タクシーを呼びたいとき、電話ができないので探すのが大変です。探しても見つからないときは仕方ないので1時間かけても歩いて帰ります。」(参加者の男性)

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さらに、「誤解される」という悩みも聞かれます。

「普通に歩いていたら、『無視するなよ』と一方的に怒られたことがあります。誤解は本当に怖いです。」(参加者の女性)

「ろう者が補聴器をつけて自転車に乗っていたら、警察に捕まったという話を聞きました。補聴器を音楽を聞くイヤホンと勘違いしたんだと思うんですけども、警察の方に補聴器など、聞こえない人への理解が広まってほしいです。」(参加者の女性)

多くの人から寄せられた、情報が入ってこない、伝わらない、誤解されるといった悩み。番組でもおよそ100人の方に協力していただきアンケートを実施しました。

「どんな場所で困りますか?」という問いには、最も多いのが職場・学校の22%。次いで交通が21%、病院18%と続きます。

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「どんなことで困りますか?」という問いには、「緊急時、命に関わる場面での悩み」が上位4つを占めることが分かりました。

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「悩みの傾向」では、55%が「情報が入ってこない」ということでした。震災のとき、今何が起きているのか分からなかったという人も多くいましたが、これも大きな課題です。

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自身もろう者で、NHK『みんなの手話』の講師も務めた善岡修さんは、体験を交えながら聴覚障害者が抱える悩みをこう話します。

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「地震や土砂災害のとき、避難所で聞こえる人たちはアナウンスで配給などが分かる一方、ろう者の場合は、その情報を得ることができなかったという体験談も聞きます。私も同居する母親が夜中に骨折した際、病院へのメールでの緊急連絡が事前登録制だったり、ようやく見つけた緊急連絡先にファックスを送ろうにも、緊張して文字がなかなか書けなかったことがありました」(善岡さん)

最大の悩みは「電話できない」

「情報が入ってこない」「誤解される」という悩みに加えて、アンケートから見えてきたのは「電話ができない」「声で伝えられない」という悩みです。「110番、119番の緊急ダイヤル」「エレベーターの非常時通報ボタン」は、どちらも緊急時に命に関わる場面での悩み。さらに「クレジットカード紛失の連絡」や「ドライブスルーでの注文」も、日常生活で必要にもかかわらず「声で伝えられない」場面です。次のようなカキコミもいただきました。

「筆談すればいいじゃん、メールがあるじゃんという声もあるかもしれません。筆談やメールは便利ですが、電話番号でしか明記されていないケースやそもそもメールが相手に届いているかちゃんと読んでくれているか確認するすべがありません。筆談とメールはあくまで限られた一手段にしかすぎません」(エムさん、愛知県30代)

善岡さんは「聞こえない人たちにとっては『電話ができない』というのは最大の悩み」と言います。

「『職場で電話ができない、イコール仕事ができない』という誤解が多いようです。今は便利な機器がたくさんありますよね。スマートフォンやメールなど便利なものがあるんですけど急いでいるときにはやはり、向いていません。」(善岡さん)

そんな状況を改善する新しいサービス「電話代行サービス」も出てきています。

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「電話代行サービス」は当事者が伝えたいことを、テレビ電話を通して手話や筆談で伝え、オペレーターが電話で連絡したい相手に伝えるというものです。緊急時にも少しずつ使えるようになってきたこのサービス。大手クレジットカード会社2社では最近、カードを紛失したときの本人確認をこの代行サービスでも認めるようになっています。

お互いのコミュニケーションの中で方法を見つける

聴覚障害の悩みといっても、その内容はさまざま。では、聴覚障害のある人たちは、そんな多様な悩みに対して、周りにどう対応してもらいたいと思っているのでしょうか。

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番組にカキコミを寄せてくれた橋爪由利さん、43歳。生まれたときから重度の難聴で、会話がほとんど聞こえないと言います。

子育てをしながら、大手企業で人事の仕事をしている橋爪さんは、仕事を始めた当初ある悩みを抱えていました。職場で、大人数の会議や複数の会話の際に、内容が分からなくても気を使ってしまい遠慮がちになり、聞こえたふりをしてしまうことが多かったのです。

「あっちからこっちからも人が話してくるので、内容が分からなくなっちゃうっていうのが、一番困るんですよね。自分はそこの場にいるだけで、自分だけ我慢すれば大丈夫っていう気持ちがずっとあって、今までなかなか自分の本当の気持ちを伝えることができませんでした。」(橋爪さん)

そこで、橋爪さんは、ある方法を考えました。自分が配慮してもらいたいことを具体的に書き出し、上司や同僚にメールで送ったのです。

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1.マスクを外して口の形を見せてほしい。
2.ゆっくりはっきり話してほしい。
3.困ったときは筆談してほしい。
4.重要なことはメールしてほしい。

「やっぱり分からないときは、1回2回も聞き返すより、書いてもらった方が、1回で分かるので、一つの情報を全部メールで伝えていただけると読めば分かりやすい、一番確実な方法なのかなと思っています。」(橋爪さん)

それ以来、会議でゆっくり話してくれたり、隣の人が筆談してくれたりするようになり、自信を持って働けるようになりました。

「相手の方も、そういう方法であれば聞こえなくても、コミュニケーションできるんだって分かってくれる。自分から『この方法だったら、分かりますよ』ってことで、自分が一歩進む形でみなさんに理解を求めることは大事かなと。」(橋爪さん)

評論家の荻上チキさんは、どのようにコミュニケーションをとればいいか、一人で考えていても答えは出てこないと言います。

「その人とどうすればいいかってことを考えていく。逆に考えずにしゃべりかけもせずに放っておいたり面倒だからと遠慮してしまうと、むしろ当事者を孤立させてしまう。やはり、それはお互いのコミュニケーションの中で確認していきたい。」(荻上さん)

そのうえで役立つかもしれないものが、昭和50年に作られた「耳マーク」。

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表には「耳が不自由です お手数ですが筆記して下さい」と書かれており、裏は「はっきり口元を見せて話して下さい」「呼ばれても聞こえません」などと書かれています。銀行や市役所などでは「耳の不自由な方は筆談しますのでお申し出下さい」と書かれたポスターなどが掲示されているところもありますが、このようなツールがもっと普及することが期待されます。

「例えば筆談でもいいですし、ゆっくり話したり、身振り手振りを使ったり、いろいろなコミュニケーション手段があるということをまずは知っていただけたらなと思います。最近はスマートフォンのメール画面に文字を書けば伝わりますし、音声認識アプリなどもあります。そこからもっともっとコミュニケーションを積み上げていく、理解を積み上げていけることができればいいなと思います。」(善岡さん)

聴覚障害は、外見ではなかなか分かりづらいもの。聞こえる人も、少し想像力を働かせ、積極的にコミュニケーションをとることで、聴覚障害の人が持つ悩みへの理解を深めることができるのではないでしょうか。

※この記事はハートネットTV 2015年6月25日(木)放送「WEB連動企画“チエノバ” これだけは知ってほしい!―聴覚障害の悩み―」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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