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これだけは知ってほしい!“HSP”のこと

記事公開日:2020年12月07日

今年に入ってから、HSP(Highly Sensitive Person=とても敏感な人)という言葉がネット検索やSNSなどで話題となっています。音や匂いに極端に反応したり、他人の感情を自分のことのように感じたりする、繊細な気質を表した言葉です。HSPは、病気や障害を表す医学的な診断の名前ではありません。でもなぜ、世の中で関心が高まっているのでしょうか。HSPにどのように向き合えばいいのでしょうか。

新しい概念“HSP” しっくりくる言葉に安心する人も

HSP(Highly Sensitive Person=とても敏感な人)は、病気や障害を指す医学の言葉ではなく、「気質」を指す心理学の言葉です。提唱したのは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン。HSPには4つの特徴があるといいます。

①ていねいで深い情報処理を行う
たとえば、ナンバープレートや電話番号の並びに、意味を見出そうとするなど。

画像(HSPの特徴 ①ていねいで深い情報処理を行う)

②過剰に刺激を受けやすい
日常的に街にあふれる音が、本人は耐えがたい騒音だと感じているなど。

画像(HSPの特徴 ②過剰に刺激を受けやすい)

③感情の反応が強く、特に共感力が高い
誰かの悲しい顔を見ると、同じように悲しくなるなど。

画像(HSPの特徴 ③感情の反応が強く、特に共感力が高い)

④ささいな刺激にも反応する
無自覚にメガネを拭いている動作に「私を嫌いだと思っているのでは」と考えるなど。

画像(HSPの特徴 ④ささいな刺激にも反応する)

医師から「HSP」という診断を受けることはありませんが、書籍にあるチェックリストや体験談などから、「私もHSPだ」と感じている人が少なくありません。

評論家の荻上チキさんは、HSPをどう捉えているのでしょうか。

画像(評論家 荻上チキさん)

「新しい概念ですよね。HSPは専門的にいうと環境感受性の高い人を指しますが、ただちに何かの困りごとにつながるというわけではありません。このHSPという概念が広がってからチェックリストも広まりましたが、だいたい根拠がないものが多いです。実際に当てはまったからといってHSPというわけではない。ただ、このHSPという言葉が“あだ名”的に使われているところがありますね。私はこういった人です、ということを他人に自己紹介する。自分の特性を理解してもらうためにHSPという言葉が使われる。これはよい使われ方かもしれません。他方で、あだ名なので間違った判断をしてしまうこともある。誰にでも当てはまるように感じて、自分はHSPだと納得をする。でも、もしかしたらその人は他の疾病や、生きづらさがあるかもしれない。だから、HSPの概念の使い方には、とても慎重さが必要な段階かなと思います」(荻上さん)

HSPという言葉がしっくりくるという方にお話を聞きました。Webデザイナーで三姉妹の母親のほのぼのさんです。

画像(ほのぼのさん)

「子どもの表情や声のトーンをすごく敏感に感じてしまって、子どもが暗い感じで帰ってくると自分も一緒に暗くなって、そのまま体の不調になったり、動悸や息切れを引き起こされたりします。そういうときは一人の時間が必要なので、『お母さん充電してくる』と言って、部屋にこもってひたすら寝こんだり、漫画を読んだり、スマホで映画を見たりして、何かに没頭する。そしてエネルギーを溜めていくみたいなことをしています。昔はそれが、『母親なのに、いいのかな』みたいな気持ちもあったんですけど、割り切ってそうするようになってからは自分も楽だし、子どもへの影響も前より良いような気がします。」(ほのぼのさん)

タレントの最上もがさんは、ブログで自身がHSPであると書いています。

画像

最上もがさん

「自分がすごく気にしてしまう性格だと昔から悩んでいたところ、1年前ぐらいにHSPだと気づいて。チェックリストを見たときに全部当てはまったんですよ。4つの特徴のなかで一番、人と違うなと感じるのが『過剰に刺激を受けやすい』。集団で行動するときに自分だけはこの空間の匂いがダメだ、って離脱したり、照明で気持ち悪くなったり、いきなり大きい音がパンってくるのも気分が悪かったり、人混みがちょっときつかったりとか、わりと多かったんです」(最上さん)

星槎道都大学准教授で公認心理士の佐々木智城さんのもとには、HSPについて悩んでいる人が多く相談に来るといいます。

画像(星槎道都大学准教授 公認心理士 佐々木智城さん)

「生きづらさを感じていて、それが何なのか分からないでいるところに、HSPという名前に出会って、自分に当てはまる。HSPは医学的な診断名ではないのですが、しっくりきて、安心するという方が多くおられます」(佐々木さん)

HSPだと感じている人は、具体的にどのようなことで困っているのでしょうか。ほのぼのさんと最上さんは、苦手なものの1つに“白い紙や壁と蛍光灯の組み合わせ”を挙げましたが、番組にはこんな声も寄せられました。

家の前の道路で遊ぶ親子。澄んだ晴れ空に子供の無邪気な声。うるさくておかしくなりそうな自分と、子供を憎んでしまう自分が嫌でしんどいです。(そうよさん/東京都/40代)

HSPを知り、あ!これ私だと。ヒールの音、怒鳴り声、車の光、人とすれ違った時の匂い、相手の表情を察する早さ。硝子のハートすぎて生きづらい。(もんちさん/東京都/40代)

そのほか、人に対してはポジティブな性格を演じてしまうけれども、内面には強い不安を抱えてつらさを感じている方の声も届きました。

アライさんを目指すタレントの光浦靖子さんは、当事者に思いをはせます。

画像

光浦靖子さん

「こういうお友達とか、心当たりあるなと思って、どうしたらいいんだろうと。飲み会とかでもすごく気を遣って、明るいけどチラッてみると何にも飲んでない、何にも食べてないっていう人いるじゃないですか。そういう人に『いいよいいよ、ゆっくりしなよ』って言うんですけど、それもまたプレッシャーに追い込んでるのかなとか」(光浦さん)

HSPの人たちのさまざまな困りごと。どうしたらいいのか、佐々木さんは次のように話します。

「自分の気持ちが置いてけぼりになって、相手が優先になっていて、自分がつらいのを抑えて感じにくくなっている。そしてご自分を『空っぽな感じになってしまってるんです』という方が、結構いらっしゃいますね。そういう方は、まず刺激から離れることが必要です。それから、心地いい匂い、音、光、そういうホッとする、安心できるものを見つけておくことも大切になります」(佐々木さん)

HSPは治すべきもの? それとも長所?

医学的な診断名ではないHSP。精神科医のなかでも、
「自閉スペクトラム症や、家庭環境からくるトラウマ症状など、障害や病気が関係していて治療が可能な場合もあるので、一度病院を受診してみてほしい」
「薬物治療一辺倒だと対応は難しい。病院にこだわらず整体などいろいろな方法を組み合わせて自分をいたわってほしい」
など、HSPについての意見はさまざまです。

ほのぼのさんと最上さんは、HSPについての困りごとを抱えつつも、HSPは治すべきものというよりも、『特性』だと捉えています。

画像(ほのぼのさん、最上もがさん)

「もちろん病院を受診したりとか、体の調子が悪かったら整体に行ったりするのもいいとは思うんですけど、繊細さは結構いいところ、長所だと今は思っています。むしろ自慢したいところもあるので、それを医療で治すのは違うかな、という感じですね。本当はHSPという言葉がなくても、私はこれが苦手なんだとか、そういうことがしんどいんだ、と言うだけで尊重されるような社会になると嬉しいです」(ほのぼのさん)

「病気とはまったく思ってなくて、自分がHSPって知ったときに長所だなってすごく思ったんですよ。今までは、誹謗中傷とかいろんなことを気にしちゃっていて。でも、逆に人の心を思いやること、言葉一つで人を刺せるし、なだめることもできるんだっていうことが分かってるからこそ、伝えられることがあるのかなって思っています。自分がなんとなくHSPだと感じるんだったら、それを自分の長所、強みにして、人にいろんなことを伝えていけたらなって思ってるんですよね」(最上さん)

二人の話を受けて、荻上さんはこう話します。

「いろいろなものに気づきやすいとか、いろいろなものに対して他の人と違うような感性を持つとか、そうしたことは必ずしもネガティブなものばかりではない。ただ、そのなかで困りごとがあるならばHSPという名前がつくかつかないかにかかわらず、人とコミュニケーションをしたり、会社とか職場とかに対応を求めたりすることができればいいと思うんですよね。たとえば発達障害などは定着をしているけれども、名付けがない困りごとには周りが対処してくれないことがある。だから本来は名前がなくても『光がつらいんです』とか『匂いがつらいです』とか、そういうことに合理的な配慮をしやすい社会になればいいのかなと思いますね」(荻上さん)

当事者と周りの人が気をつけるポイントとは

HSPの人に対して、周りの人はどう関わればいいのでしょうか。当事者から寄せられた「こうしてもらえたら安心」という声のなかで多かったものをご紹介します。

①「ありがとう」
「職場の同僚が、私のことを神経質とか、わがままと捉えるのではなくて、『いつも細やかに気づいてくれてありがとうございます』と言ってくれて、とてもホッとした」(兵庫県/50代/女性)

②「待つ」
「ずっと接客業をしていて、結構スピードを求められるんですね。早くしてとか、早くあっちのお客さんのところに行ってみたいな感じで言われるんですけど、私はすぐ動けなかったんです。それは、ぼーっとしてたわけじゃなくて、お客さんの気持ちが分かりすぎてしまうというか、勝手に読んでしまってなかなか行けないということがよくありました。そのときに、HSPという言葉をちょっとだけ気にしてもらえると楽だな、というのはすごい感じました」(ほのぼのさん)

光浦さんからは、ほのぼのさんに寄り添う意見がありました。

画像(光浦さんとほのぼのさん)

「ほのぼのさんの話を聞いて、逆に私はそんな店員さんがいたら、なんて気がつく人なんだろう、一番いいタイミングで来てくれる、褒められるべき人なのになっていうふうに思いましたけどね。変なタイミングで手を出してくる人いるじゃないですか。私それ結構、胸がギュってなるから。ほのぼのさんみたいな人がやってくれたらすごくいいのにって。」(光浦さん)

「めちゃくちゃ嬉しいです。光浦さんのような方が上司だったらすごくいいのに(笑)」(ほのぼのさん)

そのほか、
③「環境を変えることを否定しない」
④「みんなでワイワイ」を押しつけない

なども届きました。

「ちょっとした配慮なんですけれども、本人の“困り感”をいかに減らしていくか。周囲としては、刺激を減らすのが大切ですね。距離をとる、パーソナルスペースを侵害しない、休ませてあげる、とかね。そういう細やかな対応をしてあげる。本人も、周りに伝えられるっていうのもまた大切になってくると思います」(佐々木さん)

一方で、自分がHSPだと周りに伝えることが難しいという声も寄せられています。
当事者のゆきんこさんが、イラストで理由を説明してくれました。

画像

ゆきんこさんのイラスト HSPを公表したタレントが炎上している様子

「理由の一つは、『甘えてる』って言われること。私は人よりできないことや、なじめないことが多いです。でも、HSPを言い訳にして特別扱いしてほしいわけじゃない。それからもう一つ。『お前のどこが繊細なの?』とか、『繊細な人が人前でそんな意見言えないでしょ』とか、否定されたらとても悲しい。HSPという言葉は自分を理解するために必要なもの。自分の生き方を探すきっかけなんです。」(ゆきんこさん)

どうしたら周りの人にHSPのつらさ、困っていることを伝えやすくなるのでしょうか。

「HSPってくくらずに、たとえば『実は人混みが苦手で、集まるのもちょっと苦手だから少人数で会いませんか』とか、『ここの匂い、ちょっと苦手だから距離置いていい?』とか、自分が苦手なことをちょっと言っておく。だから僕は、飲み会に誘われてもまったく行かないんですね。情報量が多すぎて疲れちゃうことが多かったりしたので、頑張れるときじゃないと行けないっていうのは、周りには理解しづらかったみたいで。『なんでそんなそっけないの』とか結構言われたんですけど、そこは割り切って『ちょっと無理なんです』みたいな。自衛はすごく大事だなって思います」(最上さん)

画像(スタジオの様子)

荻上さんは、その人が持つ困りごとを説明するための言葉の必要性を指摘します。

「自分を説明するコミュニケーションの道具ですよね。自分に説明する、他人に説明するっていうことになるので、そのためにやっぱりどんな言葉が自分に合ってるのかっていうのを探す。そうした方々がたくさんいるんだっていうことを、このHSPブームが明らかにしているので、もっといろんな言葉が社会に供給されることが必要だなと思いました」(荻上さん)

※この記事はハートネットTV 2020年11月25日(水曜)放送「隣のアライさん これだけは知ってほしい!“HSP”のこと」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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