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パートナーシップ制度「進まないLGBTs理解 地方の現実」

パートナーシップ制度「進まないLGBTs理解 地方の現実」

記事公開日:2018年05月15日

同性カップルの関係を自治体が公に証明するパートナーシップ制度。2015年に渋谷区と世田谷区で始まり、3年目を迎えた今、全国7つの自治体が導入し、検討を始める自治体は、都市部から地方へと広がり始めています。しかし、その一方で課題も見えてきました。同性カップルの暮らしを変えるパートナーシップ制度のこれからを考えます。

反対意見で導入見送り 丸亀市の取り組み

2017年、パートナーシップ制度の検討を始めた香川県丸亀市は2018年4月からの導入を目指して準備を進めてきました。レズビアンやトランスジェンダーなど、LGBTへの理解を広げようとポスターを作成。学校や企業に配りました。さらに、すでに制度を導入している自治体や当事者団体との意見交換を重ねてきました。

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「当事者たちの生きづらさを少しでも解消して、制度をきっかけとして性的少数者に対する市民の理解が広がっていく。市民のための第一歩となればというふうに思って、この制度に着手してきたわけです。」(丸亀市人権課 寺嶋寛課長)

しかし今年2月、思わぬ事態が起こりました。市議会議員たちから反発の声が上がったのです。

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「急すぎる。せめて1年間勉強する、市民から意見を聞く、議員個人がこれがどうなのかということの結論を出すには、やっぱり1年くらいはほしいという素直な意見が出たと思います。」(丸亀市議会議員 松永恭二議長)

丸亀市は、4月に予定していた制度の導入をいったん、見送ることに決めました。

実際、LGBTのことがどれくらい市民に知られているのか、丸亀市内で聞いてみたところ、性別や年齢に関係なく、多くの市民が、LGBTという言葉を知りませんでした。

さらに町の人に話を聞くと、年齢によって受け取り方が異なっていました。

「好き同士だったらいいと思うし、特に抵抗はない。」(20代・孫)
「いや、そんなんは考えられんね。」(祖母)

(自分の子どもが、同性のパートナーと結婚したいといったらどう思いますか?)

「どうもこうも思わん。アホか言うだけや。私らの頭にはそんなもん、考えたことがない。」(70代・男性)

「息子や娘が、それしか幸せがないというところに、ギリギリまでたどりついたら認めますね。ただ、それまでにはだいぶハードルがあると思いますね。」(70代・男性)

市の担当者は当事者団体に見送りになった経緯を報告しました。

「当事者たちってもう我慢するのが当たり前みたいな感じになってる。常に困ってるのが普通。声を上げにくいので、周りが受け入れている空気をもっと感じるようになったらもっと言いやすいのかな。」(当事者)

市長は、市民への啓発に力を入れ、再び制度導入を目指す考えです。

「残念ながら地方に行けば行くほど、新しい変化といいますか、そういうものに対して思うように意識がついてこない。やっぱり問題が出てこないと、それについて議論したり、考えたり、改善したりというふうにならないので、それについての難しさを地方都市は持っていると思います。」(丸亀市 梶正治市長)

地方で声を上げる難しさ 当事者の思い

地方で暮らす当事者たちは、パートナーシップ制度についてどう思っているのでしょうか。現在パートナーがいる地方在住の当事者4人に話を聞きました。

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「僕、今20代後半なんですけど、先を見ると、一緒にパートナーといて、生活を考えて、緊急時どうすんだとか、こうしたいなと思ったときに、選択肢がちゃんとあるというふうになってるのが理想かなと。」(関西在住・ソラさん)

「私も賛成なんですけど、自分の地元とかで、果たしてそのパートナーシップを受けるかというとまたちょっと違うのかな。私たちが今地元で取っちゃったらもう本当に知れ渡っちゃう。狭いから。」(東北在住・ミドリさん)

全員が制度には賛成。しかし、偏見の強い地方では、2人の関係をオープンにすること自体が難しいと言います。

「僕の場合は、いつかは一緒に住みたいとは思っていて、ただどうしても田舎、地方なので、ルームシェアの考え方も全然浸透してないので、何で男2人で住んでるのって聞かれて、ルームシェアって言えないから、どうしても(2人の関係を)言わざるを得ないのかなと。そういったところをクリアしないと、そもそも一緒に住めないのかなと。」(九州在住・カボスさん)

「私はLGBTのコミュニティ以外の人で(自分がレズビアンだと)言っているのは、親友1人だけで、親にも誰にも言ってない状態です。私がこういうコミュニティに参加しようと思ったのが、2015年。テレビで偶然流れていた、レズビアンのカップルを見て、こうやって生きてていいんだっていう衝撃を受けた。地方では、あの人あれだよとか、気持ち悪いよねとか…。そんなの言われたら、実は私もそうなんですけどねみたいなのは絶対言えないよね。だから完全に押し殺して、悪いことだと思って生きてきたから、2人で暮らすことを考えたことがなかった。」(四国在住・モモさん)

「制度だけが独り歩きをしてしまって、みんなの認知とか、そういうのが追いついていかないと、私もなかなか制度を利用しようとは思わないということがある。」(東北在住・ミドリさん)

「本当に知らないっていうのが根底にあるなって感じがする。だから、LGBTの人は、本当にあなたの隣にいます、田舎でもと言いたい。」(四国在住・モモさん)

住民票が強いアピールに 札幌の取り組み

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2017年6月にパートナーシップ制度を導入した札幌市。きっかけは2年前、当事者たちが市長に要望書を提出したことでした。

中心となったのは、ドメスティックパートナー・札幌という市民グループです。市内で活動していた複数の当事者団体や人権問題に詳しい弁護士などが結集しました。

パートナーシップ制度を求める際、なかなか声を上げられない当事者の存在に気づいてもらうため、ある秘策を考えました。要望書と一緒に、賛同者の住民票を提出したのです。

「住民票がついていることによって、提出を受けた札幌市も本気になって取り組もうと。ただ署名をしたのではなく公的な書類をつけることで、覚悟が問われるのかな、逆にそれが伝わるかなと思いました。」(支援する弁護士)

札幌市内でソーシャルワーカーとして働く立木さん(仮名)も、賛同人として住民票を提出した1人です。交際して10年になる同性パートナーがいますが、これまで職場や家族には隠してきました。この方法なら自分も声を上げられると、参加を決めました。

「最初は驚いたんですけど、よく考えると、ただ名前を書いて住所を書いて署名するよりも、本当にここに住民として居て、しっかりと札幌市に税を納めている一市民がこういう権利を求めるという強いアピールになると感じたので、しっかりと住民票を出そうと思って。権利を求めていく過程の中で、やっぱり隠れたまま、それを求めるのはなんとなく卑怯な気もしますし。私もある程度までは匿名性を気にします。ただやっぱりその権利を認めていってほしいので、賛同して協力できるものは、こういうふうに住民票を出しますし、こうやって取材をうけたいなと思ってます。」(立木さん・仮名・32歳)

札幌市は、要望書と144人分の住民票を受け取りました。

「この厚みですね、この住民票の厚み。大学の先生もいらっしゃれば弁護士さん、学生の方、また当事者のお子さんがいらっしゃるという保護者の方ですとか、本当にさまざまな方たちからの思いを、重く受け止めることになりました。」(札幌市男女共同参画室 廣川衣恵課長・当時)

半年後、市はパートナーシップ制度の導入を公表。すると、数多くの意見が寄せられます。中でも目立ったのは、制度に疑問を投げかける声でした。

少子化に拍車をかけるのではないか。夫婦のあり方が壊れるのではないか。800件にも上る反対意見。それでも、市は方針を変えませんでした。

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「本当にこんなにあちこちでこんなふうに思われているんだな、マイノリティの方たちってこんな偏見のある中で暮らしていらっしゃるんだっていうことがわかったので、だからこそ本当に制度が必要だという思いを私たちは強めました。」(廣川課長・当時)

市の担当者は、連絡先がわかるすべての人に、一通一通、返事を書き、市の考え方を丁寧に説明しました。数多く寄せられた意見への回答は、ホームページに掲載。さらに、講演会などで市民に対して直接、説明する場も作りました。

そして2017年6月、パートナーシップ制度がスタート。これまでに38組が宣誓しました。

このときを待ちわびていた立木さんも、パートナーと宣誓書を受け取りました。

「僕たちが社会の中で、こういうふうに生きています、と証明できる公的なものとしては、とても大きなものだと思っています。でも、最終的には男女にこだわらないパートナーのあり方を、もう少し国レベルで認めてくれたらとても嬉しいなと思います。」(立木さん)

自身もゲイである女装パフォーマーのブルボンヌさんは、札幌市の取り組みは “二つの可視化”という点で興味深いと言います。
「顔を出せない当事者が住民票を出すことでちゃんと可視化される。さらに、それに対してたくさんの反対意見が寄せられたことが、“偏見や誤解の可視化”につながり、行政を動かした点も興味深い」(ブルボンヌさん)

自治体や企業へのLGBT研修を行うNPO虹色ダイバーシティの村木真紀さんは、当事者が自ら声を上げることはまだまだリスクが高く、怖さがあるといいます。

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「当事者の人が頑張るというよりは、LGBTを理解し、支援するアライ(Ally)と言われる人に積極的に頑張ってほしい。そんな人に味方になってもらえると、こんなに心強いことはないと思います。」(村木さん)

また、渋谷区のパートナーシップ制度策定に関わった早稲田大学教授の棚村政行さんは、今後必要なことについてこう話します。

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「札幌の取り組みでも証明されたように、当事者の人たちが勇気を持って、頑張って声を上げる。それを行政が受け止める。企業や民間もそういったことを積極的に認めていく。理解と制度が車の両輪のように働いていくことで、大きな流れにつながっていく。」(棚村教授)

3年目を迎えたパートナーシップ制度。制度の広がりだけでなく、「自分のセクシュアリティやパートナーとの関係を誰にも言えずに悩む人が、実は近くにいるかもしれない」そんな意識がもっと広がることが、次のステップに進む鍵となるのかもしれません。

※この記事はハートネットTV 2018年5月2日(水)放送「“ふうふ”の証明~同性パートナーシップ制度のこれから~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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