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パートナーシップ制度「同性カップルの暮らしはどう変わった?」

パートナーシップ制度「同性カップルの暮らしはどう変わった?」

記事公開日:2018年05月15日

2015年に渋谷区と世田谷区で始まったパートナーシップ制度。自治体がレズビアンやゲイなどの同性カップルを証明するこの制度は、日本初の取り組みとして注目を集めました。制度はどのように受け止められ、また制度によって2人の暮らしはどう変わるのか。3組の同性カップルの声から考えます。

公の証明が未来を描くきっかけに

2015年に渋谷区と世田谷区で始まったパートナーシップ制度。開始から3年が経ち、現在では全国7つの自治体に広がり、168組(2018年4月23日現在)が制度を利用しています。

ともさんとけんさんは去年、渋谷区でパートナーシップ証明書を取得しました。交際して3年のゲイカップルである2人は、区内のマンションで一緒に暮らしています。それぞれ仕事をしており、家事は分担しています。

「恋人であってかつ家族であってパートナーであって、全部の関係。何の言葉でもあてはまらないけど、何の言葉でもあてはまるっていう感じ。」(ともさん)

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かつてのともさんは、ゲイの自分は家庭を持ち大切な人と堂々と生きていくことは難しいと思っていました。20代になり友人が結婚するようになると、悩みはさらに深まっていきます。

「結婚式なんか苦痛でしょうがなかったので、なんだかんだ嘘ついていかなかったり…。自分には手に入らない環境に対する憧れの裏返しだったと思います。将来のことを考えると不安で不安でしょうがなくなる。孤独死すると思ってましたね、本当。」(ともさん)

渋谷区でパートナーシップ制度が始まったのは、そんなともさんが35歳の春でした。

「驚きとともに自然と涙がでました。」(ともさん)

その後、ともさんはインターネットを通じてけんさんと出会います。迷わず2人は証明書を取得しました。

「2人がセットで社会に顔を向けて胸を張って生きていけるんだということに対して後押ししてくれる制度だと思います。」(ともさん)

ともさんたちは親しい人にはゲイであることを伝えています。証明書を取った2人を、友人たちは結婚と同じように祝福してくれました。

「証明書や書類があるから何かを受けられたりする会社ではないのですが、私たちの感覚だと、『あ、彼は既婚者になった』っていう感覚かも。」(会社の同僚)

証明書によって家族の気持ちにも変化がありました。けんさんの母親は次のように喜びを語ります。

「今後、何かあったときに公的に示せるということは、親にとってもありがたいものです。『パートナーシップ証明』があることでさらに何かお墨付きを得たようで、自分の周囲の人に対しても話せるようになりました。」(けんさんの母親)

この制度に法的な拘束力はほとんどありません。それでも、ともさんは2人の未来を思い描けるようになりました。

「これを結婚と考えるかは自分の心持ちだと思うんですが、自分が素直になれている気がします。最近、親友の結婚式があったんですけど、いままで嫌いだった結婚式が心から喜べて、自分のなかで心の変化を感じました。」(ともさん)

証明書の積極的活用が社会を変えていく

気持ちの面で安心感が得られるだけでなく、証明書があることで具体的なメリットが得られたというカップルもいます。

ウエディングの事業を行うかずやさんと、オーストラリア出身でIT企業に勤めるティモシーさんは交際して9年になります。関係を家族や知人にオープンにして暮らしてきた2人がパートナーシップ証明書を取得したのは2年前。周囲の理解だけでなく公の文書が必要だと考えたためでした。

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「たかが紙といえど、されど紙なんだと思うんですよ。」(かずやさん)

「例えばもし何かあったら、普通だと僕は家族と扱われないからね、これありますよ、入らせてくださいといえるようになる、紙があるというのはなんかちょっと安心。」(ティモシーさん)

実際に、証明書の取得によって受けられるようになった民間のサービスがあります。ティモシーさんがかけた生命保険の受取人を、かずやさんに指定することができたのです。かずやさんは、証明書を積極的に活用することで、社会が少しずつ変わっていくと考えています。

「企業にもあの人たちは存在するんだから、その人たちのために商品を考えていこうっていうのは、結果的にひょっとしたらそれが“人としての扱い”にかえってくるところもあると思うので。いわゆるゲイですけど、市民の1人としてカウントされるんだよっていうことはすごく重要なこと。」(かずやさん)

入院手続きや相続ができないなど、同性カップルの人たちは暮らしのなかの大切な場面で多くの壁にぶつかってきました。家族法が専門で渋谷区のパートナーシップ制度策定に関わった早稲田大学教授の棚村政行さんは、制度には法的な拘束力が小さいという限界もあるものの、これによって受けられる民間のサービスが少しずつ増えていると指摘します。

「法律上は相続とかあるいは離婚したときの財産分与とかこうような権利はないということになってしまいます。ただ、パートナーシップ制度によって、認めてくれるところが増えてくるということは非常に重要なことになってくると思います。」(棚村教授)

実際、例えば生命保険の受取人を同性パートナーも指定できるようになった会社はここ数年で10社近くにもなるほか、ローンを共同で組めるようにした銀行もでてきました。

こうした変化について、レズビアン当事者でもあるNPO虹色ダイバーシティの村木真紀さんは次のように語っています。

「取り組む企業はどんどん増えてきていると思います。金融だけではなくてIT業界や運輸業界、またメーカーなどでも研修をしているところがあります。先進企業は制度の整備は一通り終わっていてこれからは現場を変えていくという状況です。」(村木さん)

しかし、こうした社会の変化に対して不安や疑問を抱えている同性カップルの声も多くあります。

「この流れによってクローゼット(※性的指向を公表していない状態)からでてくるLGBTが増加する可能性がある。そうなると、世の中にいくらも存在するであろう偏見と差別意識を持った人から心ない扱いを受ける可能性も高くなると考える。」(ゲイの男性・50代)

「パートナーシップ(証明)は取りません。(渋谷区と世田谷区のような)限定された地域の住人のみの特権になっており権利を買える財力のある人しか手にできない状況に疑問があるからです。」(東京都・20代・30代の同性カップル)

自分たちでできることを 当事者の模索

社会全体を見渡すとまだ偏見や差別意識が残っているなかで、法的に性的指向を証明することはある意味リスクを背負うことにもなります。またこうした動きが見られるのは都市部が中心であり、地方を中心に、制度が導入されていない自治体がほとんどであるのが現状です。

パートナーシップ制度のない地域で暮らしていくにはどうしたらいいのか。自分たちでできることを探し始めたカップルがいます。

交際して13年になるレズビアンカップルのしんさんとりゅうさん。2人が暮らす地域にはパートナーシップ制度はありません。共に生きていく上でいま、最も不安なのは、病気や事故に遭ったときのことです。

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法的には家族とみなされない2人。どちらかが欠けたときどうなるのか、また、いざというときに自分たちの意思が尊重されないのではないかという心配も抱えています。2人の両親は、去年の秋に開いた結婚式に参加せず、何かあっても頼れる状況ではありません。

「2人のみで暮らしていきなさいといわれて。隠れて生きなきゃいけないとか、そういうことを言われて…。自分が亡くなったとき、(パートナーには)葬儀にでてほしいなって思ってるんですけど、親的にはもしかしたら、来ないでくれっていうかもしれない。」(しんさん)

将来の不安に対して、自分たちでできることはないかと考えた2人は、公的な書類を作る専門家である行政書士のもとへ相談に訪れました。

そこで提案されたのは、「公正証書」を作ること。公正証書とは公証役場で作る公文書のひとつで、誰でも作ることができます。法務大臣から任命された公証人が作成することで、その文書の社会的な信頼が高まります。

「公証人という専門家がきちっと内容を聞いて法的に問題ないように文章や中身をアドバイスして作りますから、そういう点では当事者の合意とか契約っていう、自分たちだけでやったものよりは非常に効力が認められるということになります。」(棚村教授)

例えば病気で手術を受けることになった場合に同意のサインをすることも、またりゅうさんが1人でローンを組んで買った家をシンさんが相続することも、公正証書によって可能になるということがわかりました。しかし、すべての書面をそろえるためには10万円以上の費用がかかります。

「国の法律が変わるまでにはものすごい時間がかかりそうなので、どう工夫して配偶者に近いかたちにもっていけるか、そこをこれからがんばりましょう。」(しんさんとりゅうさんが相談に訪れた行政書士)

実は、渋谷区のパートナーシップ制度では証明書を取る際に公正証書を作成することが条件になっています。自治体によるパートナーシップ制度には公の証人や社会的信用という意義がありますが、渋谷区のケースではそれに加えてさらに個人の実益として有効な側面も兼ね備えているとされるのは、このためなのです。

一般の結婚においては婚姻届1枚で済むのに対し、当たり前のことが当たり前にできないもどかしさ。それでも2人の生活を守っていくために、しんさんとりゅうさんは今後、お金を貯めながら時間をかけて、公正証書を作っていくことに決めました。

同性カップルを自治体が認めるパートナーシップ制度。開始から3年を経たいま、7つの自治体に広がり、使い勝手も良くなっている一方、特に地方ではまだ理解が十分でなく、こういった制度の導入がなかなか進まない地域も数多くあるのが現状です。同性のパートナーと安心して暮らせる社会をどう実現していくのか。行政や企業、そして各地で暮らすカップルたちも、試行錯誤を続けています。

※この記事はハートネットTV 2018年5月1日(火)放送「“ふうふ”の証明~同性パートナーシップ制度はいま~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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