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摂食障害かなと思ったら(3) 家族会ってどんなところ?

記事公開日:2020年08月31日

日本で患者数が20万人以上とも、またはその数倍とも言われている摂食障害。患者を支えている家族は、さらにたくさんいると考えられます。摂食障害の治療には家族からのサポートが欠かせませんが、一方で家族自身も専門家等からのサポートを受けることが大切です。対応の難しい摂食障害に立ち向かっていくために、家族はどのようなサポートを受ければよいのでしょうか。ある家族会の取り組みを取材しました。

家族療法・家族カウンセリングは“応援会議”

拒食症や過食症といった摂食障害になった人を前にして、家族は対応の難しさに困惑し、無力感を感じてしまうことも少なくありません。

公認心理師で文教大学人間科学部特任専任講師の小原千郷さんは、そのような家族が抱える苦しみに注目しています。

「摂食障害のご家族は普通の認知症のケアや介護をしている人よりも、さらに大きなケアの負担や疲れ、メンタル不調を感じているというデータもあるくらいなんです」(小原さん)

摂食障害の回復になくてはならない家族からの理解とサポート。患者本人への治療と並行して、家族もサポートを受けることが必要です。その一助となるのが家族カウンセリングや家族療法です。

家族カウンセリングや家族療法を通して、家族が当事者にどのように声をかければいいのかなど、行動面にアプローチすることで、家族自身も回復したり、変化したりすることがあると、小原さんはいいます。

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公認心理師 文教大学人間科学部特任専任講師 小原千郷さん

「具体的なスキルや知識を学ぶだけでとても心強いと思います。家族自身も本当に疲れるので、家族自身がサポートを受けられるということが大事です。いろいろなやり方があるんですけれど、私は家族カウンセリング、家族療法というのは患者さんを支える作戦会議みたいなものだと思っています。親だけでなくて兄弟など幅広い家族でも、応援団なら誰でもウエルカムです。みんなで患者さんへの対応を考えるやり方もありますし、患者さんを支える上で障害となる夫婦関係の問題などがある場合はその解決のために利用することができます」(小原さん)

小原さんが“作戦会議”と表現した家族カウンセリングや家族療法。家族に非難が向けられるなどということはなく、怖がらずに利用していいと小原さんは話します。

「基本的に摂食障害の家族療法と言われているもの、そして治療効果が確認されているものは、ご家族のサポート力を高めて、病気にみんなで立ち向かっていこうというタイプのものです。家族療法に行くと家族にダメ出しされるんじゃないかと恐れる人が多いんですけど、そうではなくて、今あるものを利用しながら、ベストな患者さんへのサポートはなんだろうと考える作戦会議、応援会議、そんなイメージを持っていただけたらなと思います」(小原さん)

家族が家族を支える ある家族会の取り組み

家族がサポート受けられる場としては、ほかに家族会や勉強会があります。

「これらを利用していただくのもおすすめです。全国各地に摂食障害の家族会というものが存在しています。そこでは家族同士が集まって、病気の知識を学んだり、対処の仕方を勉強したり、情報交換をしたりしています。ご家族同士で『うち、こんな問題あるんだけど、どうしたらいいんだろう』『こうしたらいいんじゃないか』、『ああしたらいいんじゃないか』と話し合います。回復が進んだ家族が『うちはこうしたらうまくいったよ』『これはよくなかったよ』『どこの病院に行くのが良いよ』などと教えてくれたりもします。家族会に継続的に出て、サポートを受けるというのはとてもおすすめの方法です。ただ、そういう家族会がない地域もありますので、その場合は1日の単発の勉強会とかセミナーといったものに出ていただく、利用していただく、というのもおすすめしています」(小原さん)

情報や家族ならではの悩みを共有しサポートしあう家族会。実際に、どのような様子なのでしょうか。愛知県で行われた、ある家族会を取材しました。

画像(家族会「ポコ・ア・ポコ」会場)

摂食障害家族の会「ポコ・ア・ポコ」です。日程や会場によって、当事者も参加できる回や家族のみが参加する回があります。全国各地で開催されています。

この日は家族のみが参加しました。

代表の鈴木高男さんは、娘の摂食障害を経験した際、親同士の交流や情報交換の場が少ないと感じ、会を立ち上げました。

画像(摂食障害家族の会「ポコ・ア・ポコ」代表 鈴木高男さん)

「お母さんたちが結構しんどい状態になっているんで。気分的に楽になれるようにちょっとしたヒントを与えるっていうのがテーマみたいな。ここの中に何人にも改善している人たちがいるので自分たちの体験談みたいなのが、非常にいい効果を得ているかなと思っています。『うちはこう治ったよ』『うちも良くなったよ』っていうのが、みんなが理解してくれると、それがいい。要するに先へ行った家族が『家族が家族を支える』みたいな『family to family』のかたちが1番いいのかなと。ここが医療と違うところかなと思っています」(鈴木さん)

多くの家族会では、安心して話ができるようルールを定めています。鈴木さんの家族会では「会で聞いたことを口外しないこと」、「話すテーマは自由・好きなように話すこと」などです。

参加費用は1回につき500円から1000円ほど。公民館や、会議室を借りる会場費などにあてられます。

悩みを共有し、家族がほっとする時間をもつことも家族会の目的です。家族が病気の知識や関わり方の工夫を学びあい、患者さんへのより良い支援を目指しています。

画像(先輩家族として参加した人)

「最初に来たときに、お世話をしていただいた方が『本当に治るよ』『よく来てくれた』と抱きしめてくれたのが一番うれしかったことで、自分自身の変化は、本当に治るんだっていう自信を持った。親子の距離感がわかるようになってきて、それまでベッタリで『私はこの子がいないと死んじゃうよ』っていう世界だったんですけど、この子はこの子の人生を歩んで立派に生きていけば良いなって、私は私で、楽しんでいこうと思うようになりました。1人で悩まないで家族会にくると、みんながすぐに『うちもそうだったよ。でも大丈夫だよ』って言ってもらえて。心に安心感が芽生えてくるっていうふうに皆さんになっていただきたいと思います」(先輩家族として参加した人)

画像(先輩家族として参加した人)

「他の人のことを聞いたり、タカさん(鈴木さん)からのお話を聞いたりすることで、こういうふうに子どものことをちょっと離れて見なきゃいけないなとか、アドバイスはしなくて、思っていることをゆっくり聞いてあげなきゃいけないなとか、そういうことを覚えて、ちょっと安心して生活できるようになりました。よその芝生がいつも青く見えるんですけど、私の家のかたちはこうなんだって思うことにしています。私自身がそうであったように、悩んだときはどんどんどんどん、気持ちが沈んでしまって、もうどうしようもなくなってくるので、やっぱり誰かこの気持ちをわかってほしいっていうのと、誰かに話したい。でも親にも心配かけたくないし、どうしようっていうときに、医者に行って話すのも友だちに話すのもいいけど、トンネルの先は必ずあると思うので、自分が安心できる場を作って、がんばってほしいです」(先輩家族として参加した人)

家族が抱える悩みへのアドバイス

摂食障害患者を支える家族には、さまざまな悩みがあります。家族会代表として摂食障害に20年以上関わっている鈴木さんに、家族が抱えがちな悩みについてアドバイスをしていただきました。

画像(摂食障害家族の会「ポコ・ア・ポコ」代表 鈴木高男さん)

①過食費用について
過食の場合、どうしても食費がたくさんかかります。どのように管理すればよいのでしょうか。

「この会でも同じように過食費用が今回(のコロナ禍で)1.3倍ぐらいになったよとかいう方が多いんですね。やはり食事の部分の金額的なものだけで抑えるっていうのは結構難しいんですね。一応、金額の大枠みたいなルールを決めてその金額以上はなるべく出さない工夫をさせるとか・・・。大事なことは、親かは正直な経済状態を話して、本人と相談という形でルール決めをするということ。どのようにルールを決めていくかっていうプロセスでは、親からの『こんだけにしなさいよ』という指示的な問題はダメだと思います。ご本人のほうから、〇〇円で我慢できるかもしれない、いくらくらいだったら大丈夫っていう言葉をいかにして引き出すか。これは親御さんの力がないと難しいかなと思います」(鈴木さん)

②家族からの意見やアドバイスの出し方について
過食嘔吐について家族から意見やアドバイスを言おうとすると嫌がられる場合は、どうしたらよいでしょうか。

例えば、呼吸が苦しい患者さんに呼吸回数を減らせと指示するような難しさがあります。「全部を否定するわけではなくて、否定する部分と認められる部分というのをやっぱり作っていかないとダメかなと思います。過食嘔吐が全部ダメっていうことじゃなくて、ここがよくないんだけどここはオッケーだよねみたいなものをご家族の中で決めていけるといいのかなと思っています。過食行動ばっかりじゃなくて、日常生活そのもので生きづらさや困難を抱えてご苦労しているところが多いので、そういうこともあわせて認めてあげることが大事かなと思います」(鈴木さん)

家族の中だけで抱えるには対応が難しい摂食障害。ぜひ、専門家や家族会などのサポートを受けることを検討してみてください。

摂食障害かなと思ったら
(1)摂食障害のある人に医療ができること
(2)摂食障害のある人に家族ができること
(3)家族会ってどんなところ? ←今回の記事
(4)経験者に聞く回復までの道のり

※この記事は福祉ビデオシリーズ『摂食障害 理解と回復のために』(NHK厚生文化事業団・制作)「第2巻・家族・支援者の皆さんへ」と「摂食障害 理解と回復のために オンラインフォーラム」(2020年6月21日実施)を基に作成しました。

NHK厚生文化事業団では、福祉ビデオシリーズ『摂食障害 理解と回復のために』(DVD全3巻)を無償で貸し出ししています。(送料のみご負担)

お問い合わせ NHK厚生文化事業団「福祉ビデオライブラリー係」
電話:03-3476-5955(平日午前10時から午後5時まで)
ホームページ:https://www.npwo.or.jp/video/16600 (NHKサイトを離れます)

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