摂食障害とは・基礎情報・支援情報

もくじ

 

摂食障害とは

摂食障害は体の不調が原因ではなく、ストレスなどさまざまな心理的な要因で起こります。厚生労働省の資料(平成29年精神保健福祉資料)によると、現在20万人以上が治療を受けていますが、通院していない人も含めると、その数倍とも推定されています。
 
摂食障害の代表的な症状には、拒食症(神経性やせ症)と過食症(神経性過食症)、さらに過食性障害があります。
拒食症は、体重の増加や体型の変化を恐れ、食事を取りたがらなくなるもので、す。体重が減りすぎて健康を損ねることもあります。過食症は、食事のコントロールができなくなり、食べる量が極端に増えてしまい、吐く、下剤を使うなど、体重を増やさないための行動を伴いますます。過食性障害は、食事のコントロールができず、食べるのがやめられないことが特徴です。しかし嘔吐、下剤を使うなど体重の増加を防ぐための行動は伴いません。
摂食障害になりやすい年齢や世代は、主に思春期や青年期の女性が多いものの、最近は小学生やもっと幼い子ども、結婚・出産を経た中年の女性も増えているといいます。

 

摂食障害の治療とは

摂食障害の症状があっても通院 をしていないという人が多い背景には、どんな治療をされるか怖いので通院に至らない、適切な医療機関がわからない、通院という選択肢を知らないなどの理由があると考えられます 。摂食障害の治療は、患者本人が、ごく普通にストレスに対処できるようになり、さらに『どうにかやれるかな』と思えるよう、いかにみんなで応援するかというものだと、治療にあたる医師は言います。 
医療の現場では摂食障害をどのように治療するのか。実際の診察事例を通して、専門家とともに“医療が摂食障害のある人にできること”を見ていきます 。

 

拒食症の治療例

・まずは命を守る 
拒食症の場合、命にかかわる合併症があるので、医療機関においてはまず「低体重」に対応することが必要です。体を守らなければ次のステップである、カウンセリングや精神療法もできないため、体の治療が先に行われます。

 

・治療環境を整えていく
患者さんとの面接を重ねる中で、治療関係を作り、治療環境を整えていきます。患者さんは、無理やり入院させて体重を増やす治療をされる、などと考えて医療者を警戒していることも多くあります。まずは、拒食症が「痩せているとなぜか安心で、体重を増やすのが怖い病気です」など丁寧に説明をしていきます。また、病院に行っても、痩せていることを怒られたり責められたりはしないことを理解してもらうとともに、食べるのが怖いという気持ちがあるということなど、食べることに対する不安や悩みなどについて、本人が安心して本音を話せる治療関係を作っていきます。
 
低体重に関しては、本人の希望にも配慮して、例えば入院しなくてよい体重、学校や会社に行ける体重、旅行など遠方にもでかけられる体重というように、目標体重を段階的に増やしていくといった方法がとられます。

 

・投薬治療と合併症への対応
摂食障害に特効薬はありません。それぞれの症状に適切な薬剤を使います。例えば、食べることが怖い人には食事の前に(不安を取り除くために)安定剤を使うこともあります。また、病気が長くなり、気持ちが落ち込んでうつ状態になっている場合は抗うつ薬を使います。とてもこだわりの強い方には精神病で使う薬が効くこともあります。また、胃の痛みや便秘があれば、それにあわせた薬も使います。

 

・合併症のいろいろ
摂食障害で低栄養状態になれば、女性の場合は無月経になることもあります。その場合は、ホルモン治療なども段階的に行うことがあります。その他にも、骨のカルシウム量が減り、成長期の場合は低身長になることもありますし、骨粗しょう症になることもあります。

嘔吐がある場合は、胃酸によって歯の表面が溶けるという酸蝕歯(さんしょくし)や、食道が傷ついて、時には出血する逆流性食道炎などが起こります。 


酸蝕歯になるのを防ぐため、嘔吐のあとは真水で30回くらいうがいをして、嘔吐後30分以上経過してから(口の中が酸性から中性になってから)やわらかい歯ブラシと研磨剤の入っていない歯磨き粉を使うことを指導したり、歯の裏側が溶けるので、歯科医に病気を伝え、定期的な通院を勧めたりすることもあります。 



・精神療法、カウンセリングをすすめる
ある程度、体重が増えれば思考力も良くなっていきますので、そこではじめて精神療法、カウンセリングも進めることができます。

体重が回復してくると、重症の栄養状態では話題にもならなかった患者本人の本音も出てきます。『本当は今の学校が嫌だった』『進路が心配でたまらない』というふうに、自分のことを考えたり、将来に不安を感じたりします。痩せている間は感じないようにしていた感情に気付いていきます。

そして、さらにカウンセラーや公認心理師が時間をかけて話をきいていきます。そこでたとえば『私、実は人間関係が苦手でした』とか『なんでも真面目に考えすぎて、100%しなくちゃいけないと思っていたので、それがつらかったんです』などという、心理的な課題もみえてくるようになります。

 

過食症の治療例

・生活と食事のモニタリングを行う(認知行動療法)
過食症は病気ですから、科学的にどういう状況かを把握しなければ対策も出てきません。そこで症状モニタリング、または生活食事記録表をつけるということをします。食事の様子、そのときの気持ちを記録していくことで、「今日はとても嫌なことがあった」「こんな心配事があったらついつい食べてしまった」など、状況を把握していけば、気持ちと症状の相関関係もわかってきて、症状をコントロールすることにつながります。 

過食症の問題点は、症状を自分でコントロールできないという無力感ですが、少しコントロールできるようになると、本人も自信がついてきます。今日は過食しないで済んだ、というのは、翌日もう1日頑張ろうという気持ちにもなります。こうした精神療法は認知行動療法と言われ、2018年4月から過食症(神経性過食症)に対して保険適用になりました。

 

・脳を飢えさせないようにする工夫
また、具体的にコントロールできなくなるような気持ちに襲われる前に、できる対処法もあります。起きている間は4時間以上間をあけず、脳の血糖値を下げすぎないような食事をすることで生理的な過食衝動が抑えられます。太るのが怖くて朝昼絶食して、夜に過食する方がいますが、それは脳が飢えているので過食をしてしまうのは当たり前です。最初は十分な量でなくてもよいので、規則正しい時間に食べるようにします。

 

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