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これだけは知って欲しい!難病当事者が困っていること

記事公開日:2018年05月09日

2014年5月、日本の難病対策の基本となる「難病医療法」が成立。その後、医療費助成の対象となる指定難病が、56疾患から331疾患に拡大されています。(平成30年4月現在)制度が拡充される一方、難病に対する社会の理解はいまだ進んでおらず、日常生活や職場において症状などが理解されないために、当事者が“無理”を続けている現状があります。難病当事者が「これだけは知って欲しい!」という“困っていること”について、寄せられた声をもとに考えます。

難病の病名や症状は多種多様

社会の理解がなかなか進んでいない“難病”。「難病について、どんなイメージがありますか?」という街頭インタビューを行ったところ、「しんどい病気」「治療がしにくい」「治療にお金がかかる」「体が動かなくなってくる」「ドラマでは機械で生きてた」「ALS」「アイスバケツチャレンジ」などが回答としてあがりました。ドラマやニュースなどで見た、一部の病気のイメージが強いようです。

難病とはどういうものなのか。厚生労働省では、難病を次のように定義しています。

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・発病の機構が明らかでなく
・治療方法が確立していない
・希少な疾病であって
・長期の療養を必要とするもの

国で研究されているものだけでも500疾患以上あるとされ、難病と一言でいっても、病名や症状は多種多様。寝たきりの人もいれば、薬で症状を抑え、働いている人もたくさんいます。

そんな中、2014年は難病をとりまく環境が大きく変化しました。5月に難病医療法が成立し、医療費助成の対象となる疾患が、56から300まで拡大されることになったのです。これは、1972年に「難病対策要綱」が策定されてから、42年ぶりの大幅な改正となります。
(※2018年4月現在、医療費助成の対象となる疾患は331疾患となっています。)

新制度について、難病当事者の方からさまざまな声が届きました。

「私は先天性巨大結腸症で生まれ、現在34歳になります。後遺症が重度で8時間勤務もできない体で何の補助もなく独りで生き抜くのは困難です。今回、特定疾患が増やされることになり、やっと一筋の光がさしたと感じています。」(一筋の光さん・30代)

制度に対する期待が高まる一方、既に対象となっている人からは、こんな不安の声も届いています。

「私は難病患者です。昨今、患者数増加により助成金が打ち切られるなどの情報も流れましたが、生活をするうえでとても大きな問題です。難病の根底は完治しないことを理解していただきたいのです。薬は治療薬ではないのです。」

評論家の荻上チキさんは議論に難病当事者が参加する重要性を訴えます。

「今まで対象に入れなかった人が対象の中に入れる希望もある一方、別のところに線が引かれて、その対象にこれからも入れないというような心配もでています。限られた財源のなかで、対象・対象外の線引きをどこでするのか。その議論には難病当事者たちが参加し、できるだけ実態に即した制度にしていくことが重要です。」

見た目にわかりにくい難病の苦しさ

24歳のときに難病の皮膚筋炎と筋膜炎脂肪織炎症候群を発症し、現在も病気と向き合って暮らしている大野更紗さん。難病になってからの体験を本にまとめて出版し、さらには当事者団体とともに厚労省に出向いて要望書を提出するなど、さまざまな活動を行っています。

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大野さんは、「難病は病気ごとの患者の数が少なく、当事者かどうか見た目でわかりにくいこともあって、認知されにくい。」と指摘。番組にも、「わかってもらえないのが辛い」という声が届いています。

メールを寄せてくれたのは、渡邊多恵さん。3年前、全身が激しい痛みに襲われる線維筋痛症と診断されました。介護福祉士の仕事をしていましたが、半年前から自宅で療養生活を送っています。

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一見、普通に家事をこなす渡邊さんですが、突然襲ってくる「筋肉が切り裂かれるような、骨が砕かれるような痛み」に苦しんでいます。極度に疲れやすい症状もあり、頻繁に休憩を取りながらでないと、簡単な作業も続けることができません。10分ほど掃除をしたところで、布団に横になってしまうこともあります。

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「私は電車やバスなどで、立っているだけでも、脚や腰に強い痛みを感じることがあります。冷房で体が冷え、痛みが出ることもあります。やむをえず、優先席しかないときは座ることがあり、周囲には病気とわからないため、なぜ若者が優先席に座っているのか? 譲らないのか! と怪訝な顔で見られ、精神的に辛い思いをすることがあります。」(渡邊さん)

苦しいのは、痛みや疲れやすさをわかってもらえないこと。渡邊さんは周囲の人が一目でわかるよう、最近はつえを持つようにしています。

「やっぱり怠け病とか仮病とかではなくて、本当に痛い、しんどい病気があるのを知ってほしいです。」(渡邊さん)

大野さんも、24歳で発症するまでは健康で、自分が発症して初めて、病気の苦しさを抱えながら生きる人たちの存在を知りました。難病当事者が社会でどのようなことに苦しみ、どんなサポートが必要なのか。議論もこれからの状況です。

難病当事者が困る「病名の認知」「誤解」「周囲の目」

毎年11月に開かれている「難病・慢性疾患全国フォーラム」。その会場で、日本各地から集まった当事者に日頃困っていることを聞いてみました。そのなかで多かったのは次の3つです。

1 病名が知られていない

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「キャッスルマンというアメリカの学者が発表した病名だから、キャッスルマン病なんですが、病名を言っても、何ふざけたこと言ってるの? そんな病気あるわけないでしょ!と言われました。」(参加者A)

「病気をわかってもらうのに、1から説明しなきゃいけない。」(参加者B)

2 誤解が多い

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「難病という言葉の持つ暗いイメージですね、感染するんじゃないか? とか。難病が感染すると、いまだに思っている方もいるようです。」(参加者C)

「外に出るときは、なるべく車椅子を使うようにと医師から言われていますが、私は歩けるので、すくっと立つと『えっ? 歩けるの?』ってすごい驚かれる。車椅子イコール歩けない、何もできないとか思われているのかなって。」(参加者D)

3 周りの目が気になる

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「見た目は元気そうですけど、ステロイドという薬を飲んでいるので、顔が丸くなるとか、肉がついて容貌が変わることへの理解がなくて、病気になったのに、まるまるとして元気そうじゃんって結構言われる。」(参加者E)

カップルで参加していた2人も、普段から周囲の目が気になるといいます。アイザックス症候群で外出には車椅子が欠かせない和田美紀さんと、再発性多発軟骨炎の和久井秀典さんです。

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和久井さんは気管支の軟骨に炎症を起こしているため、のどを切開し、呼吸を確保するための装具をつけています。和久井さんが周囲の目が気になるのは、日常に欠かせない「たんの吸引」をするとき。環境によってはいつでもできるわけではないため、苦しくても我慢することが多いといいます。

「道端でやるわけにもいかないから、障害者用トイレを探すとか。見ている人に、不快感を与えてしまうんじゃないか? とか、やっぱり人目を気にしちゃう。」(和久井さん)

「私たちには普通のことも、周りの人には普通ではないと映ってしまう。それがわかってもらえるようになれば、たぶん、上手く生活していけるんじゃないかな。」(和田さん)

荻上チキさんは、周りの無理解が原因で出かけにくくなり、社会との接点が断たれてしまう難病当事者もいると指摘。また、当事者はそれぞれ症状が異なり個別の問題を抱えている一方で、困っていることは共通するものも多いのではないかと言います。

「例えば、見た目は何ともないように見えるけど、実は足腰が弱い、全身に痛みがあって公共の乗り物では座りたい。あるいは、すぐに休憩を取らなければいけない状況もあるわけです。まずは、そういう人たちがいるのだと、社会が知ることが大事だと思います。」(荻上さん)

職場での無理解に孤軍奮闘

職場での無理解に悩んでいるという声も届いています。

「周囲の無理解よくわかります。障害者雇用で働いていますが、難病と告げると、解雇みたいに言われました。病気の関係でトイレが近いのですが、我慢していたら悪化して入院。報告したら『嘘をつくな』と言われ、また無理して働いていたら緊急入院でやれやれです。」(のんたんさん・30代)

難病当事者の就労に対する社会福祉は非常に遅れており、制度がないなか、当事者が孤軍奮闘しているのが現状と、大野さんは指摘。難病であることを隠して就労し、無理を重ねて体調が悪化するなど、悪循環に陥る人もいます。

番組には、こんな声も寄せられました。

「(難病でも)仕事しなきゃいけないし、社会参加したいし家計の助けにもなりたい。」

「見た目に障害が表れるれるわけではなく、上司に検査結果を持ってこいと言われました。」

「職場で見た目が元気なので、短時間勤務は無理と断られています。フルタイムが難しくなったら諦めるしかないかも。」

こうした難病当事者への無理解をなくしていくには、どうすればいいのでしょうか?

「こういう人たちがいるってことを、まずは、少しでも知ってもらうことがすごく大事。一般の人が難病に触れる機会は少ないので、難病当事者から発信していくことも必要だと思います。」(大野さん)

大野さんは、社会で認知されにくい障害について知ってもらおうと、ボランティアと当事者の有志とともに「見えない障害バッジ」の普及に取り組んでいます。バッジをつけると「困っている」サインになります。

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行政の取り組みでは、東京都が作っている「ヘルプマーク」もその1つ。都営地下鉄の改札などで手に入れることができます。

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「難病当事者に困難を与えているのは、実は病気そのものではなく、社会の無理解や偏見、制度の不足ではないか」という荻上さん。

見た目にわからなくても困難を抱える人たちがいることを、心に留めておく。それだけでも、難病当事者も、そうでない人も生きやすい社会に一歩近づけるかもしれません。

※この記事は、ハートネットTV 2014年11月27日(木)放送「WEB連動企画“チエノバ” ―今日は「難病」を中心に―」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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