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“働きたい”精神障害のある皆さんへ

“働きたい”精神障害のある皆さんへ

記事公開日:2018年05月08日

「精神障害者を雇うなんてありえない」。10数年前、企業の取材をしていると、人事担当者から当たり前のようにそう言われました。その頃を思うと、「精神障害者の雇用義務化」というのは画期的な出来事です。精神障害になったら、職業生活はあきらめるしかない。そんな時代はもう終わろうとしているのかもしれません。

「精神障害者の雇用義務化」で何が変わる?

人事担当者の話を聞くと、精神障害者の雇用を阻んでいる大きな要因は「社内の空気」という言い方がよくされます。

精神障害者の中に即戦力となるような職業経験を積んだ人材がいることを、人事担当者はよく知っています。しかし、それでも一部の事件報道などの影響で、社内の人々の偏見は根深く、新たに精神障害者を雇うことに抵抗を示す経営者や従業員は、少なくありません。人事担当者はそのような「社内の空気」に配慮して、採用を積極的に進めることには慎重だったのです。

しかし、2013年の障害者雇用促進法の改正によって、精神障害者の雇用は躊躇すべきものではなく、国全体で進めるべきものになりました。そして、今年の4月からついに、障害者の雇用義務の対象として精神障害者が加わるようになりました。この「雇用義務化」は、当事者のみなさんはもちろんのこと、精神障害者に理解のある人事担当者にとっても、力強い追い風となるのではないでしょうか。

手帳を取得すべきなのか

精神障害者の「精神障害者保健福祉手帳」の取得率は65歳未満において、2割以下という低い数字です。この、障害を証明する手帳をとると、さまざまな福祉サービスを受けられるようになり、税金の控除が受けられるなど多くのメリットがありますが、精神障害者であることを受けいれたくないという思いが強かったり、社会の差別や偏見のまなざしを恐れたりして、取得に消極的な人が多いのが実情です。

もしあなたが「障害者雇用枠での就労を希望する」なら障害者手帳は必要です。また「一般枠か障害者枠なのか迷っている」という場合であっても、障害者手帳を持っているかどうかを会社に申告する義務はありませんので、一般枠での応募も可能です。
結論としては、手帳の取得によって就職で不利になることはない、と考えていいと思います。

障害をオープンにするのか、クローズにするのか

これは精神障害のある多くの方が大変悩まれる問題だと思います。
手帳を取得していない多くの精神障害者は、一般枠での採用となります。採用の後、精神障害者であることを会社に告げてオープンにするのか、クローズにして知られないようにするのか。申告の義務はありませんから、その判断は本人自身に任されます。

オープンにすれば、障害者差別解消法に基づき、たとえ一般枠であっても、合理的配慮を受けることはできます。しかし、一般社員よりも収入や昇進の面で不利になったり、差別や偏見のまなざしにさらされる可能性もあります。

一方、クローズにしていたら、合理的配慮を受けることはできず、一般の社員と同等の労働条件で働かなくてはなりません。

障害が業務に影響しない自信があって、体調管理にも不安を感じないのであれば、あえて会社に伝える必要はありませんが、そういった心配がある場合には、オープンにすることが望まれます。

最近注目されているキーワード

1)リワーク

仕事を続ける中で、メンタル面で不調を訴え、休職する人も増えています。そのような人が、職場に復帰するのを「リワーク」と言います。主治医から「職場復帰可能」という診断書を提出してもらった上で、復職することになりますが、いきなり元のような働き方に戻るのは難しいので、産業医などの協力を得ながら、無理のない形での職場復帰を実現していくことになります。新たな人を雇うよりも、能力のある社員に復帰してもらう方が損失も少ないので、この「リワーク」に力を入れる企業も増えてきています。

2)リカバリー

現在、精神医療の世界では、「リカバリー」という考え方が広がっています。
治療を継続しながら、同時に社会参加を促進することが、精神疾患の症状の改善にもつながると考えられるようになってきました。医療機関のみに依存する患者と、社会参加を継続している患者を比較した場合、後者の方が症状に改善がみられることが、各国の調査で明らかになってきたからです。

これまでは病気の治療だけを考えていた精神病院の中には、入院している段階から、就労支援を始めるところも出てきています。治療が終了するまで医療機関で囲い込むのではなく、「治療をしながら社会との接点を保ち、職業生活を通じて充実した人生を送る」という新しい精神保健福祉の考え方です。

こんな企業がオススメです

1)「できないこと」ではなく、「できること」を見てくれる企業

あなたの障害に細かく関心を寄せる企業は、一見、障害者への理解が深いように思えますが、果たしてあなたの「職業的な能力」に本当に関心をもってくれているでしょうか。

ある大手雑貨メーカーでは、採用の際に、本人がどんな障害をもっているかを一切尋ねることなく、本人の現在の能力や配属の希望だけを考慮すると言います。
「できないこと=障害」にこだわるのではなく、「できること=キャリア」に向き合ってくれるのが、真の意味で障害者に寄り添うことのできる企業です。

2)キャリアアップを期待する企業

障害者に対しては、仕事に関する能力評価はせず、一律の給料で雇い、昇給も昇進もないという企業もあります。しかし、それでは働くモチベーションが上がるはずもありません。

ある大手電機メーカーの特例子会社では、本社の社長自ら生産性の向上を訴える朝礼を行うと言います。社員に「雇ってもらっている」という後ろ向きの気持ちではなく「必要とされている」という前向きの気持ちを抱いてもらいたいからだそうです。

3)障害のあるなしにかかわらず社員に無理をさせない企業

精神障害者にとって、仕事を継続する上で「壁」になるのは、
・ストレスの多い人間関係
・長時間勤務
・変化が激しい、めまぐるしい業務
などです。そのような負担の大きい職場であれば、たとえ時短勤務などの合理的配慮を受けていても、周りの働き方に巻き込まれ、いつの間にかストレスがたまっていく場合もあります。

先述の大手雑貨メーカーは、精神障害者を雇用する以前から「残業のない会社」として知られていました。そこでは、多くの精神障害者が挫折することなく、長く働き続けています。職場の一人ひとりの社員に余裕があることが、障害のある社員の心の負担をも軽くしているのかもしれません。

「精神障害者の雇用義務化」で追い風が吹いているなか、当事者のみなさんにとって少しでも役に立つ情報を、という視点でまとめました。現実が急に変わることはないかもしれませんが、企業側や当事者のみなさんがお互いの思いを伝えることで少しずつ進んでいくのではないかと感じています。ハートネットTVでは、「障害者雇用もっと両思いプロジェクト」という企画も進行しています。みなさんのご意見や体験談も募集していますので、そちらも併せてご覧ください。

執筆者:Webライター 木下真

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