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統合失調症の困りごと・お悩み 支援者からのアドバイス
前編 症状/仕事と将来/支援サービス

記事公開日:2020年05月29日

今年4月に始まった、ハートネットTVの「#隣のアライさん」プロジェクト。生きづらさを抱える誰かに対して、さりげなく味方でいられる人=「アライさん」をみんなで目指してみませんか?というものです。その第1回、テーマは統合失調症。「みんなの声~統合失調症 お悩み・知ってほしいこと~」に寄せられた声を、ソーシャルワーカーの加藤真規子さんに読んでもらいました。「守りあって、安心できる場」が何よりも大切だと考えている加藤さんは、当事者や家族の声をどう受けとめるのでしょうか?

画像(加藤真規子さん)加藤真規子さん ソーシャルワーカー
自身もうつ病とひきこもりを経験し、いわゆる“社会的入院”の問題に先駆的に取り組んできた。精神疾患のある人たちが働くカフェや、グループホームを運営。

幻聴・妄想とどう付き合う?

病気との付き合い方がわからない
中学3年生で発症してから友達ともうまくいかず、不登校になりました。
学校以外でもしんどくて、部屋にカメラを付けられていて、クラスのみんなが見て笑いものにしてるんじゃないかとか。
気分転換にショッピングセンターなどへ出かけても、悪口が聞こえてきたり、笑われてる気がしたり、気分転換どころか調子が悪くなる一方でした。
中学の頃から入退院を繰り返していますが、退院後は調子が良くなるものの、しばらくすると同じような症状がでてきてしんどいです。
一生この症状と付き合わなくちゃいけないのかと思うとすごくつらいです……。
まいたそ / 福井県 / 女性 / 20代 / 本人

―幻聴や妄想は、統合失調症の代表的な症状なのですよね。そのつらさは、どういったものなのでしょうか。

加藤:この人はたぶん、クラスメイトのことを、疑いたくないものは疑いたくないんだけれども、本当にそう言っているっていうふうに聞こえているんじゃないでしょうか。だからなおさら、自分は何も悪くないのに、なんで笑われなきゃいけないのか。自分は醜いからとか、何となく変だから笑われているんじゃないかしらっていうふうに、お思いになってるんじゃないかなと思いましたね。本当につらいだろうなと思います。幻聴や妄想のつらさとして、すごく自分がちっちゃくなっちゃうということがあります。

―自分がちっちゃくなっちゃう…そういった幻聴や妄想は多いのでしょうか。

加藤:幻聴や妄想の内容で圧倒的に多いのは、自分の悪口、自分の弱みです。それは、受け入れてばかりはいられないですよね。そしてもう1つつらいのは、自分の心がぜんぶ他者に読み取られてしまっているというもの。心が裸で歩いているようなものですからね、生きていられないほどの恥ずかしさです。そうした幻聴や妄想の根底にあるのは、「自分は人に迷惑をかけているのではないか」「自分は誰かを不幸にしているのではないか」という不安です。私が出会ったなかにも、例えば「自分は知らない間に、誰か女性に子どもを産ませてしまっているのではないか」という思いで苦しまれている方がいました。

―本当に苦しい症状なのですね。

加藤:ただ、「いい幻聴」というのもあるんです。「早く帰らないと雨が降り出すよ」ってささやくというふうに、注意を促してくれるとか、「お前は独りぼっちじゃないよ」と励ましてくれるとか。幻聴・妄想が、その人を支えているっていう場合もあります。例えば「自分はUFOを運転しているんだ」と言っている方がいましたが、この場合などは、完全にその人の生活を、人生をUFOが支えていたんじゃないかって思います。それがなくなっちゃったら、本当に寂しくなっちゃったんじゃないかな。だから、「幻聴・妄想は全く必要がない、捨てるべきものだ」とはとても思えないっていうのは、絶対に押さえておかなきゃいけないという気がしますね。

―ご本人にとってどうであるか、が大切ということですね。ただ投稿者の「まいたそ」さんは、今のところは苦しい幻聴のようで、「一生この症状と付き合わなくちゃいけないのか」との声でしたが、何かアドバイスはありますか。

加藤:この方がひとりで自分の幻聴や妄想とどうつきあうかっていうことよりも、この方につきあってくれる人というのがいないんじゃないでしょうか。自分のことを自分で抱えて思い悩むと、本当に出口がないだろうと思うんですよね。だから、それこそ「アライさん」をどう見つけるか。自分がちっちゃくなっちゃっているなかでは、つきあってくれる人との出会いを大切にすることです。つきあってくれる人というのは、幻聴や妄想を掘り下げてくるという意味ではなくて、批判せずにこの人のつぶやきを聞く人っていうぐらいかな。自分の、いわば居場所にできるというか、つらさや悩みを打ち明けられる場になるような相手です。

その点、この方は、とにかくこの「みんなの声」に、自分の悩みを打ち明けたわけですよね。そこでひとつ、勇気を出されているわけです。私はすごい第一歩だと思います。それを踏んだご自身を、認めることだと思います。そういうところを生かしていけると、つながりができるんじゃないかなというふうに思いました。近頃は新型コロナウイルスの影響で、直接人と会うのが難しいなかで、オンラインのやりとりの良さを改めて感じます。そこにつながりを作っていくのは、とっても良い方法じゃないでしょうか。

仕事の不安・将来の不安

生き方
三年前から、統合失調症です。
スーパーのレジのバイトをしています。
バイトの面接の時、病気の事を話すと全滅だったので、病気を隠しています。
嘘をついているようですし、途中で具合が悪くなったらと思うと不安になります。また、周囲の音が苦手です。
病気のせいにしたりせず、自分の事は自分の責任で生きていきたいと思います。だけど、病気の事を隠している時点で、具合が悪くなったら、どう迷惑かけないようにできるか、自問自答しながら仕事をしています。
さあちゃん / 愛知県 / 女性 / 30代 / 当事者

―職場に統合失調症をオープンにするかどうかは、難しいと感じました。

加藤:これに関しては、私の考えは割とはっきりしています。「私は嘘はつけない」という方は、嘘をつくことで苦しくなってしまうんですから、オープンな人を求めているところ、つまり障害者雇用をしているところを選ばれるのがよろしいんじゃないでしょうか。「私はやっぱり病気あるわけだから、自分にできないようなことを求められても困っちゃう」という方もそうです。給料が少々低くなっちゃうかもしれないけれども、自分が楽だという気がします。

でも一方で、今はクローズで何とかやれているというのも、私は良いと思うんです。ですから1つの考え方として、その状態は苦しいだろうと思うけれども、やれるだけやって、もう無理だなと思ったら辞めて、もうちょっと楽なところを探すっていうのもありますよね。

統合失調症です
幻聴はないですし、仕事もクローズでしています。
ですが、仕事に行かない日はずっと寝込んでいます。
何も出来ません。
親に依存しっぱなしです。
親がいなくなったら生きていけないと思います。
統合失調症として重ければ病院に入院できたり、社会的資源を使えますが、中途半端な症状のため、この先どう生きていって良いのかわかりません。
未来に希望が持てません。
もも / 愛知県 / 女性 / 40代 / 当事者

―こちらの声も深刻ですね。将来への不安と、うまく付き合う方法というのはあるのでしょうか…?

加藤:わかりますよ、先に希望が持てないという気持ち。ひとつは、やっぱり自分の「応援団」のことを思いだすことですよ。例えばお医者さん。たぶん協力してくれているんだと思うんですよね、昼間の薬はなくて夜だけにしてあるとか、最大4週間ぶんくらい出せる薬を、本当に最大限出してくれているとか。あと、通院なんかも土曜日にしてあるとかね。自分の生活は決して寂しいものじゃない、この生活を応援している人たちがいると。

もうひとつは、どこかで発想を変えてくれるとありがたいなという気がするんです。「仕事に行かない日はずっと寝込んでいます」。なんだか、これじゃあ、仕事に行かないでずっと寝ているのは悪いことのようですよね。ずっと寝込んでいるっていうのは、本当に仕事に行くために、エネルギーは寝込むことに使います、っていうことでしょう。それっていけないのかな?

―お休みの日に何もできないことを、恥じたり、責めたりする気持ちがあるかもしれないと思いました。

加藤:確かに世の中にはすごい人もいますよ。休日に本を読みましょうっていう人もいるじゃないですか。本当にそうやっていらっしゃる方もいると思うんですよ。本を好きでね。でも、例えば寝っ転がってテレビを見ていますっていうのがだめだということではないんだよねっていうふうに、私は思いますけどね。人は、自分が少しでも、1日でも長く元気に働くためには「充電」しなきゃならない。その幅にはいろいろタイプがあってね、あんまり寝なくても大丈夫な人もいる。でも、本当に横にならないとだめな人もいる。ある面、残念かもしれないけれど、違いがある。だから、周りの人ではなく、あなたの心と体が納得するまでの休み方でいいんです。

自分のそういう点を受け入れるのが難しいのは、比べる文化があるからかなと思います。比べられるというのは、本当に、本っ当に、嫌なことですよ。誰かと比べて、「自立というのはこういうものだよ」と課してくる人がたくさんいます。迷惑をかけちゃいけないとか、甘えてはいけないとかね、割と日本ってお行儀のいい国なんだけれども、結局、本当の自分になかなか出会えない。自分は何を考えているのかとか、何を感じているのかとか、何を求めているのかとか、そういうことが一生わからないまま終わっちゃうっていうのはあまりにも残念な気がしますけどね。比べる文化って、私、はっきり言って間違っているんだろうと思いますよ。もう時代がここまで来たのならね、やはりいちばん大事にしなきゃならないのは本人の言い分。本人の思いを、これはお互い様だけれども、もっと尊重しないといけないように思いますね。

医療や福祉を安心して利用したい

医療につながりにくい
息子25才が当事者です。
発症して8年、入退院を繰り返してます。
この病気は医療に繋がるのに難しい点があり本人も病識がないことにより精神科にかかる、もしくは入院させたくても病院に連れて行けないことです。
息子もこれまで民間の輸送車や警察にといった方法で入院になりました。
もっと手軽に利用できて、病院と繋がる手段がないものなのでしょうか。
ちょこ / 埼玉県 / 女性 / 50代 / 当事者の母親

―いきなり精神科に行くのはハードルが高いという場合には、どんな方法があるでしょうか。

加藤:公的なものとしては、保健所で相談できるのと、それから「生活支援センター」というものがあります。また民間の相談機関でも、本当に腕のいい臨床心理士さんがいるところもありますし、良いお医者さんがいる病院を教えてもらえることもあります。ご家族の場合でしたら、そういうところで「家族会」というものを教えてもらうと良いです。いくつか教えてもらって、ここだと思うところが見つかれば、ぜんぶ行く必要はないと思う。それから、家族会はけっこう、月に1回などのペースで機関紙を出しているところがあって、助けになる情報が載っていると思います。

―病院については、まずは本人ではなくご家族だけが行ってもいいのですか。

加藤:はい。私は、やっぱりいい病院を見つけること、いいお医者さんを見つけること、それに尽きると思うんですよ。とにかくまずご家族からでもいいから、相談に行ってみる。患者さんを少しでも楽にしてあげたいと思っているのがお母さんなら、お母さん自身が、この先生ならいいわって思うお医者さんを見つけることだと思う。場合によってはお母さんじゃなくても良いけれど、支援をしている人が安心できるお医者さんを見つけるって大事だと思いますね。患者さんにとってキーパーソンになりそうな方たちが、「この先生に患者さんを委ねよう、私も安心できるから」っていうふうに思えることって、治療的にも、患者さんにとっても、すごく良いんじゃないかなっていう気がします。

生活や保険
統合失調症で障害年金がやっともらえるようになったのですが、それだけじゃ不安なので、A型で働こうとしてますが保険がついてないので、不安です。生活もグループホームを考えています。実際、どのようなものか教えてほしいです。
グリーン / 山口県 / 女性 / 30代 / 姉

―グループホームとはどのような場所なのでしょうか。

加藤:例えば私たちのグループホームは、特性として、「社会的入院」を経験された方の地域生活の足がかりに使っていただいております。みんなと一緒に共同生活をして、いわゆる地域生活の基盤を作っていくわけですけれども、あまり無理なく自分の生活を大切にされることを第一にしています。また、生活保護を受けている方が多いので、いずれアパートで暮らしたいというときに、認めてもらえるように関係者と相談するなど、その人が自分の人生を築いていくのをお手伝いするところ、という具合でしょうかね。

一般的には、世話人がお部屋のお掃除を一緒にしたり、食事の準備を一緒にしたりして、うちは夕ごはんだけですけれども、出しています。昼と夜、もしくは朝と夜に出しているところもありますね。それ以外の食事は、コンビニに買いに行くなどして、ご自分で何とかしていただく。そういう中で近所に足を伸ばすといったこともしていくということです。日中は何らかの活動をすることになっていて、デイケアでもいいし、作業所でもいいし、企業にお勤めに行っても良いのです。何らかの同好会とか、スポーツでも良いです。また、ホームのなかには、おしゃべりをしたり、一緒に食事をしたりできる共同の交流室を設けることになっています。

―グループホームを選ぶ際に、大切なことは何でしょうか。

加藤:ご本人が自分でとにかく見学等をして、目で確かめることです。誰かの勧めだけではだめですね。やっぱりご本人。この投稿はお姉さんのようですが、お姉さんと一緒でもいいから、ご本人に一緒に見ていただく。たいていのグループホームが「試験外泊」をやっていると思うので、そういうものも経験されて決められるのがいいと思います。割と家族が陥る過ちなんですけれども、ご自分が良いと思ったからといって、ご本人が良いと思うかどうかは別のことでしょう。その人の人生を築いていく場所ですから、ご本人が見て、経験されて、納得をされることが必要です。

どの困りごと・お悩みでも、本人の感じ方・気持ちを大切に扱うということが、安心につながると感じました。後編では、家族との関係や性機能障害など、よりプライベートな生活圏の困りごと・お悩みに向き合います。

統合失調症の困りごと・お悩み 支援者からのアドバイス
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※この記事はハートネットTV 2020年4月22日放送「#隣のアライさん これだけは知ってほしい!統合失調症のこと」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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