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あなたは“ひとりぼっち”? 「ひとりぼっち」を考える

記事公開日:2018年05月07日

4月から新たに始まった「ブレイクスルー2020」。社会を変えるための目標に向かって、同じ思いを共有する人で集まり、ブレイクスルーするための具体的なアイデアを考えるプロジェクト。今回は新たに「ひとりぼっちをみんなで考えようプロジェクト」がスタート!世界に広がる「ひとりぼっち」とどう向き合うか、考えます。

世界的な問題の“ひとりぼっち”

今年1月、イギリスで世界初の『孤独担当大臣』が誕生し、大きな話題になりました。最新の調査では、イギリス国民6,500万人のうち、孤独を感じるという人は、900万人以上。孤独が身体や経済に深刻な影響を及ぼす危険性があるとして、国を挙げた対策に乗り出したのです。アメリカでも孤独のまん延を危惧する論文が相次いで発表。孤独や孤立など、いわゆる“ひとりぼっち”は世界的な課題になっています。

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日本も、決して他人事ではありません。ある調査では、孤立死する人は、全国で年間およそ6万人。2040年には、1人暮らし世帯の割合が全世帯の4割に達するとされ、“ひとりぼっち”は、今後ますます増えると見られています。

「子どもと2人でいても、ひとりぼっちだなって、思うときがあって。」(30代・女性)

「いつかは、1人になるんだけれどもね。まださみしいと思うね。常にお母ちゃんと一緒のほうがいいね。何するのも。」(70代・男性)

“ひとりぼっち”から抜け出すには? そしてそもそも、“ひとりぼっち”はいけないことなのでしょうか?

今回のプロジェクトリーダーは、長岡秀貴さん。ひきこもりや不登校など、自分の居場所を見つけられずに悩む人たちが、共に学び、生きる力を育む、教育施設「侍学園」を長野県上田市で運営しています。長年、“ひとりぼっち”に悩む若者たちと向き合ってきました。

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「ひとりぼっちにさせていくものって、本当にいろんな人たちの足元に実は転がってて。それを拾っちゃった人が、本当に孤立してるっていうか。自分でつながりたいと思いながらも、本当に孤立してる人たちには、周りから手をさしのべて、つながる方法を考えよう、ということを、いろんな方々と見つけたいですね。」(侍学園理事長 長岡秀貴さん)

「孤独」と「孤立」は違う

ひとりぼっちのために何ができるのか、長岡さんと本気で語り合ってくれたのが、ホームレスの人たちに仕事を作り、自立を応援する「ビッグイシュー日本」代表・佐野章二さんです。イギリス生まれの雑誌「ビッグイシュー」は、日本では2003年に創刊、ホームレス状態の人が路上で販売し、自立を目指します。販売部数は、この15年で累計804万部を誇ります。

長岡「僕、孤独と孤立という線の引き方を常にしてるんです。孤独って能動的じゃないですか。要は孤独になりたいって、思ってもいいわけですよね。ちょっと1人で物事考えて、いま、人に会いたくない。これって、結構自分から動いてる、能動的だと思うんですけど。」

佐野「ひとりぼっちっていうのはね。1人にされている、されているっていう、イメージ。」

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長岡「自分でしてるんじゃない、という。必ず何かの関係性においてそうなっちゃってる。つまり望んでいないわけですよね。孤独はみずから望んでいけるんですけど、孤立は、自分で望んでそうなっていない。そこは何としてでも、手のひらをつかんでいかないといけないと思っているんですね。」

佐野「なるほど。孤独と孤立はどう違うかというときに、孤独の中にはね、もう1人の自分がいるんですよね。だから、もう1人の自分と話ができる。」

長岡「そういう形で、ものを考えられる状態が孤独だと思うので。孤独でいることすらもできない状況に追いやられる、孤立は、やっぱり避けなきゃいけない。それはどんなことがあっても、そういうところに人間を追い込んじゃだめ。」

佐野「僕たちが、ホームレス支援でいろんなことをやるプログラムのいちばん、究極にあるスタートラインがそれですよね。なぜ人はホームレスになるかというと、仕事がなくなって収入がなくなる。それから、収入がなくなって家賃が払えない、家がなくなる。この2つだけでなるかといったら、そのときに誰か相談する人がいたらならない。身近な絆を失うということがあるんですよね。それでホームレスになるんです。だから、ホームレスになる、なり方は100人100通りだけど、100人に共通しているのは何かというと、頼れる、困ったときに、助けてって言える人がいない。つまり、ひとりぼっちだということなんです。ひとりぼっちになってホームレスになるというのが、ホームレスになる条件なんです。」

孤立からの脱却=定点を持つこと

それぞれが、感じている“ひとりぼっち”。私たちは、どう向き合うことができるのでしょうか。

「元気で、用事のないときって、すごくひとりぼっち。誰かいないかなって感じがしますよね。」(80代・女性)

「ひとりぼっちだなって感じるのは、あんまりないかな。それで好きだし、ひとりぼっちが。孤独が好きだし。(ひとりぼっちという)気持ちが全然ない、わかない。まだ仕事してるからかな。」(70代・1人暮らしの女性)

「1人で子育てしてるので、なかなかママ友を作るっていうのも難しくて。友だちと飲みに行ったりとか、しょっちゅうしてたんですけど、それがいまはまったくできない状態なので。」(30代・女性)

長岡さんは、「ビッグイシュー」の販売者たちが雑誌を仕入れに行く場所が、孤立を防ぐ大事なポイントになっているのではないか、と佐野さんに話します。

「要は孤立からの脱却って、定点を持つこと。普通は家庭があって家があるけど、家がない方にとっては、帰っていく場所がある。この定点を持っていることが、孤立でない、その証拠だと思ってるんです。場所でもいいけど、人でもいいと思っていて、販売員さんたちは、そこが定点になる。その定点に向かって、購買者の人たちが、しっかり戻ってきている。自分の戻る場所がある、困ったらあそこへ行けばいいっていうのって、本当に孤立から脱却する上で、すごく重要だと思います。」(長岡さん)

ビッグイシューが雑誌の販売以外に行っているのが、月に1度の交流サロン。雑誌の内容や販売方法を話し合ったり、誕生日の人を祝ったり。ふだんは1人で雑誌を売る販売者たちの語らいの場になっています。さらに、NPO法人を作り、クラブ活動などの応援や生活面をサポート。サッカー、ダンス、英会話などを通して、販売者だけでなくビッグイシューを卒業した人などが、親睦を深めています。

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「長時間いてもいいところがあって、人が集まれる場所があれば、すごい、いいんじゃないのかなっていうのは、僕は個人的に思います。」(販売者)

「路上で仲間と一緒に生活してたときはいいんですけど、急にお部屋に入って、1人で生活するようになったときに、うつじゃないですけども、何もしたくなくなっちゃったんですよね、一時期。閉じこもったりする方もいるんですけども、交流し始めると全然違うと思うんですよね。」(販売者)

仕事以外で、人間関係ができ、友だちができる。こうした人とのつながりを取り戻す場のひとつになればと考え、クラブ活動を応援していると佐野さんは話します。

すでにある場所・モノを利用してゲートを増やす

人が孤立しないためには、「ゲート」が必要と考える長岡さん。学校だけでは孤立した人たちを救いきれないと、本屋や居酒屋、無料の就労相談所などを開いてきました。さらに、「定期的に足を運び、何気ない会話ができる美容室なら、悩みも相談しやすいのではないか。」という思いから美容師たちともコラボレーション。勉強会を重ね、去年、店を作りました。

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「どういう人に深刻な問題を相談できるのかとなったときに、恋人でも家族でもないのに体を触れさせることができる人。病院よりも習慣的に通っていて、無数に選択肢がある。たどり着いたのが、理美容師だったんです。要は職場を、1つのゲートにしましょうというので、ライフサジェストスタイリストという新しい職業を作ったんです。髪を切ることが本業なので、サポートはしなくていい。でも大事にしているお客さんから、実はうちの孫、学校行ってないんだよって言われたときに、こういう支援もあるみたいですよ、こういう方法もあるみたいですよっていう控えめな提案をする。」(長岡さん)

さらに、長岡さんはいま、新たなゲート作りに取り組んでいます。

長岡さんのふるさと、長野県上田市の中心部で、100年以上の歴史を誇る映画館。長岡さんは、上映を休止していたこの映画館を、仲間たちと共に借り受けました。そして去年、6年ぶりに定期上映を再開させました。

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“ひとりで来れるけれど、ひとりぼっちにならない場”が映画館ではないかと考える長岡さん。映画の上映以外にも、イベントを催したり、飲食スペースを作るなどして、今後、映画を見なくても人が来られる場所、人々にとっての「宝箱」にすることを目指しているといいます。さらに、映画館がシニアと、若者の交流の場にもなればと考えています。

そんな長岡さんに、佐野さんはシニアとユースをつなげるヒントを伝えます。

「シニアとユースの結合って考えるときには、マニュアルとか、肩書とかにとらわれてたら、やっぱりつながれないと思うんです。だから生身の人間に戻る、戻ってみせる。そうやって戻ってみせることで、つながれる。そういう感じはするんです。」(佐野さん)

長岡さんは、食堂や美容室、映画館など、すでにある場所・モノなどの社会資源を活用することが、「ひとりぼっち」のためのゲートを増やす近道になるのではないかと考えています。そしてそんなコラボレーションが生まれる場所があれば、教えてもらいたい、さらにはビッグイシューの販売者を通じて、購買者の人たちにも伝えてもらえればと希望します。

「それは当然できるし、それから、一応非常に小さいけれども、ビッグイシューという雑誌は、メディアですから。そういう動きを取り上げていくことはあると思う。形を変えて、必ず何か、それをよりどころにしたり、展開をしたり、あるいは場。そういうものに、みんながとっかかることができれば、ひとりぼっちなんて、言ってる場合じゃないぞ(笑)、ということになるのかなと、思います。」(佐野さん)

「つながるツール、ひとりぼっちじゃないツールみたいなものを、ビッグイシューさんの販売員さんからスタートしてもいいと思うし、例えば自分たちが、そのゲートになります、みたいな簡単な宣言みたいなものをして、それがその業態、要はその業種が全国にあるわけだから、それが連鎖していく。勝手に、勝手にやっていく。勝手に“ひとりぼっち作らないプロジェクト”が渦巻いていくみたいなほうがいい気がしますね。」(長岡さん)

新しく始まった「“ひとりぼっち”をみんなで考えようプロジェクト」。プロジェクトの経過は、番組やフェイスブックなどで、随時お伝えしていきます。このプロジェクトに関するご意見、体験談を、NHKハートネット(福祉情報総合サイト)の中にある「みんなの声」に、皆さんもぜひお寄せください!

※この記事はハートネットTV 2018年5月7日(月)放送「ブレイクスルー2020→ “ひとりぼっち”をみんなで考えようプロジェクト」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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