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新型コロナ 視覚障害者への影響(1)仕事と暮らし

記事公開日:2020年05月15日

新型コロナウイルスの感染拡大により、視覚障害のある人たちの生活も大きな影響を被っています。緊急事態宣言が発令され、様々な社会経済活動が制限される中、視覚障害の現場で何が起きているのか、そして乗り越えていくために何が必要なのか、考えます。(※この記事は、2020年4月12日放送の視覚障害ナビ・ラジオ「新型コロナ・現場からの報告」をもとに作成しています)

「今」助けてほしいという切実な声

国内で最も大きな視覚障害者の団体・日本視覚障害者団体連合(日視連)では、3月下旬に新型コロナウイルスに関する緊急ホットラインを開設しました。そこでどんな声が集まったのか、日視連常務理事で自身も全盲の橋井正喜さん(68)に聞きました。

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日本視覚障害者団体連合 常務理事 橋井正喜さん

「『消毒液がない』という声が一番多かったです。あとは、『仕事が続けられない』。また、ヘルパーさんの減少や、移動が怖いということで同行援護(※1)が使えなくなった。『日常生活が送りづらくなった』という声が伝わってきました」(橋井さん)

※1 同行援護とは
視覚障害のために移動が困難な人の外出に同行して、目的地に向かうために必要な情報提供や安全の確保、外出先での代筆・代読など必要な援助を行う障害福祉サービスです

マッサージで生計を立てている人も新型コロナウイルスによる大きな影響を受けています。東京都按摩マッサージ指圧師会 会長の笹原稔さんは、自身も全盲で東京・品川にある自宅にて治療院を開業しています。

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東京都按摩マッサージ指圧師会 会長・笹原稔さん

「生活を直撃するくらい利用者の減少があります。(3月の)利用者は通常の1割ですね。私の患者さんは高齢者が多いので、ウイルス感染を心配していると思います。私の場合は自宅なので何とかしのいでいますけど、治療室を借りて営業している方は家賃を心配しています」(笹原さん)

収入が大きく減少している中、求められているのは迅速な支援です。

「国から支援が得られれば生活が安定しないまでも、難局を切り抜けられると思います。要は、『今』困っているんですね。例えば2か月後とか3か月後に支援をいただいても解決しない。『今』なんです。東京都按摩マッサージ指圧会でも相談窓口として対応していますが、行政の力、国の施策が大事だと思います。とりあえず、『今』助けてほしい」(笹原さん)

笹原さんはその後、緊急事態宣言が発令された前日の4月6日から治療院をいったん休業。患者が安心して来られるようになったら、また再開したいということです。

訪問マッサージも大きな打撃を受けています。台東区のNPO法人「アイ夢サポート」では、2015年から区立の特別養護老人ホームに視覚障害のあるマッサージ師を派遣する事業を行ってきました。NPO法人の理事長、中村輝彦さんが苦しい胸の内を明かします。

「特養施設へ入ることがダメだという状況になっています。親子でも面会できないので、当然我々は入れないですね。ですから、一切仕事ができない状況です」(中村さん)

休みの間は収入がありません。今は新型コロナウイルスが1日でも早く収束してほしいというのが願いです。

「早く収束しないと、我々は復活できないので。もうそれしかないですね。早くウイルスをどうにかしてほしい。早く復活して仕事をしたいですね」(中村さん)

しわ寄せは弱い立場の人に

マッサージを仕事にしている人たちのなかには、企業でヘルスキーパーとして働いている人もいます。本来は安定した職種ですが、会社が在宅勤務を進めて社員が会社に来なくなったため、多くの人が自宅待機となっています。東京の企業に2015年からヘルスキーパーとして勤めている瀬尾敏也さんの元には、会社から突然の連絡がありました。

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瀬尾敏也さん

「最初お休みになるという連絡を聞いたのは、2月26日ですね。コロナウイルスの対策のため、2月27日から3月9日まで自宅でのテレワークになるので、マッサージはお休みしてくださいと連絡がありました。急に明日からというのでびっくりでしたね」

その後、会社からは何度か休みを伸ばすという連絡があり、仕事再開の目処は現在も立っていません。

「契約社員なので、出た日にちだけのお給料という契約になっています。会社に行ってお仕事をしないと完全に無給なので、3月と4月は今のところゼロですね。このまま続くとどうなるのか分からないですけど、会社から『コロナウイルスが収束した段階で来ていいですよ』と言われているので、それを頼みの綱にしています。お休みと言われた場合は、じっとして耐えるしかないですね」(瀬尾さん)

大きな災害が起きたとき、障害者や高齢者は、他の人よりも大きな被害を受けたという現実がありました。そのときと同様、非常事態になると弱いところにしわ寄せがくると日視連の橋井さんは言います。

「雇用している会社も混乱しているようですし、初めての経験ですから分からない状態。でも、私たちのような、弱い立場にしわ寄せがきてしまっているような感じがします。今、社会全体で仕事を失うという問題が続いてますので、収入が減ってしまった人への現金給付とか、政府に支援していただきたいと思います」(橋井さん)

利用者のために事業を存続させる

新型コロナウイルスによって、同行援護事業所にも大きな影響が出ています。外出の自粛が求められるなか、足立区の同行援護事業所「OTOMO」では、3月の予約が約30%の減少、4月の予約は50%の減少でした。しかし、事業所の売り上げが大きく落ち込んでも、所長の鈴木貴達(たかみち)さんは、いまはやむを得ないことだと受け止めています。

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同行援護事業所「otomo(オトモ)」所長・鈴木貴達さん

「事業所の経営的な側面からみると売上減少となります。しかし、これだけ外出自粛を意識されている方が増えていることは、感染拡大防止の観点からみると悪いことではないと思います。事業経営も大切ですが、利用者様の中には高齢の方や基礎疾患をお持ちの方も多くいらっしゃいますので、今は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることが最も大切だと思っています」(鈴木さん)

いま鈴木さんは、同行援護を行うガイドヘルパーが安心してサービスを提供できるよう、注意を払っています。

「この状況で、最も不安を感じているのはガイドヘルパーさんだと思います。感染防止対策として毎日の検温、マスクの着用、こまめな手洗い、アルコール消毒など、感染経路を断つ対策を徹底しています。ガイドさんによっては、感染に対して大きな不安を感じている方もいます。こうしたケースについては個別に相談して、無理して仕事をしないでお休みにしたり、電車やバスの移動がない同行援護に対応したり、個々のガイドさんの希望に合わせています」(鈴木さん)

厳しい状況が続きますが、それでも鈴木さんは利用者のために事業の継続を決意しています。

「今回こういった緊急的な状況になって、あらためて同行援護の事業所は利用者様と一体だなと感じました。事業所の経営を心配してくれる方もたくさんいて、キャンセルの連絡をするときも『ごめんね』という方もいました。ガイドヘルパーの感染についても心配していただいています。ご自身も外出が中止になって不安なことがたくさんあるなかで、僕たちのこと、事業所のことを気遣ってくれています。僕たちにはそんな方々の期待に応えるためにも、事業所を継続させないといけないと決意しています」(鈴木さん)

困難を乗り切るために

「生き残る」ためのさまざまな経営努力をしている同行援護事業所。日視連の橋井さんも、事業所の存続を後押ししています。

「同行援護の事業所は、どこも大変なんですね。経営努力と同時に、政府の行う経済対策や中小企業への支援などの情報を収集して、事業がつぶれないように努力していただきたいと思います。私たちはホットラインで皆さんの声を聞きましたので、これを集めて厚労省などに届けるのが役目です。同行援護事業所連絡会などもありますので、そこで意見をまとめたいと思います」(橋井さん)

さらに、感染を防いで事業所が存続していくためには、視覚障害者自身もやるべきことがあると橋井さんは言います。

「一番訴えたいのは、まず当事者がきちんとしないといけない。感染予防のためにマスクをしっかり装着する、手洗い、うがいをしっかりとする。あとは、日々いろいろと状況が変わってきます。情報をしっかりと収集して、がんばっていただきたいというのが一番の気持ちです。いつか収束宣言が出てきます。そのときに皆さんと笑顔でお会いしたいなと思います」(橋井さん)

※この記事は、2020年4月12日(日)放送の「視覚障害ナビ・ラジオ」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

新型コロナ 視覚障害者への影響
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