「児童虐待」 基礎情報・支援情報

もくじ

児童虐待とは

児童虐待防止法によれば、児童虐待には次の4つの類型があります。  

1.身体的な暴力による虐待  
2.育児を放棄してしまうネグレクト 
3.言葉の暴力や面前DVなどの心理的な虐待  
4.子どもに対してわいせつな行為を行う性的虐待

2022年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談の件数は、21万9170件となり、統計を取り始めた1990年度から32年連続で過去最多を更新しました。児童虐待防止法(2000年施行)によって、虐待防止に関する行政や国民の責務が定められましたが、相談件数は年々増加しています。

虐待は子どもの心身を傷つけ、時に生命を奪うこともある深刻な問題ですが、成長してからもその影響が残ることがわかってきています。子どもの頃に虐待を受けた人の場合、大人になってからトラウマに苦しんだり、アルコールや薬物に依存したりするリスクが上がるといった研究結果が出ています。

かつて虐待は「家族の問題」として見過ごされることも多く、公的な支援がなかなか届きませんでした。しかし近年では、虐待の背景には社会的な孤立や経済的な困窮など、さまざまな社会環境的な要因が絡み合っているため、なぜ虐待が起こるのかを社会全体で共有し、取り組んでいくことが必要だと考えられています。

児童相談所の役割

子どもを持つ家庭が大きな問題を抱えた時、その解決を手助けする役割を持つのが児童相談所です。親子を分離するという強い権限をもつ児童相談所に対して「怖そう」といったイメージを持つ人もいますが、子どもや子育てに関する様々な相談に応じ、専門的な見地から調査や分析を行って、親も含めて支援するのが本来の児童相談所の役割です。  

・困ったら全国共通ダイヤル189 

2015年に設置された全国共通ダイヤル189は、最寄りの児童相談所につながる電話番号です。「児童心理司」や「児童福祉司」などの専門職員が24時間休みなく、虐待や子育ての相談を受けています。周囲の人が「あの子、虐待を受けているかも」と感じたときに通告できるだけでなく、親自身が「子育てがつらくて子どもにあたってしまう」という場合もこの番号にかけることができます。 

このダイヤルなどを通じて児童相談所が虐待の通報を受けた場合、原則として48時間以内に、子どもの安全を確認することになっています。  

虐待を受けた子どもへの対応① ~一時保護~ 

児童相談所は、虐待のおそれがあって子どもを緊急に保護する必要があるときや、子どもの心身の状況および環境の影響などを把握する必要があるときなどに、「一時保護」を行うことができます。一時保護は、子どもを親から引き離し、主に児童相談所に併設された「一時保護所」で生活させるという措置です。期間は平均して1か月ほど。原則として2か月を越えてはならないとされていますが、延長されることもあります。その間、面会や交流は禁止されてはいませんが、子どもにとってマイナスと判断されると、制限されることもあります。 

一時保護の間、児童相談所は子どもの状況の把握や家庭環境の調査などを行い、援助の方針を決めます。その結果、家庭に戻すことが可能と判断されれば一時保護は解除されますが、戻すことは困難とされると、児童養護施設や里親などの「社会的養護」に子どもの養育を委託します。虐待を理由に一時保護された件数は、2021年度はおよそ2万7000件、そのうち社会的養護に委託されたのは4400件ほどなので、8割以上は家庭に戻っていることになります。 

虐待を受けた子どもへの対応② ~社会的養護~

社会的養護は、子どもを育てることが困難な家庭に代わって、公的な責任の下に子どもを保護・養育する仕組みです。 

2022年のデータでは、全国で約4万2000人の子どもが社会的養護を受けています。そのうち、乳児院や児童養護施設などの施設で暮らしている子どもが約3万4000人、里親など家族的な環境で暮らしている子どもが7800人ほどになります。日本では欧米などに比べて施設で暮らす割合が多く、国は里親を増やしていく方針を定めていますが、なかなか進んでいません。 

社会的養護を受けられるのは原則として18歳までですが、家族の支えが無い中で、すぐに自立することは困難です。そこで国は、社会的養護を経験した若者たちの自立を支援するための「児童自立支援事業」などを強化し、当事者同士の支え合いや相談できる場所の拡大も進めています。 

子育てに悩んだら

社会環境の変化などにより、子どもを育てることが以前よりも大変になってきているといわれます。文部科学省の調査では、親の約7割が子育てに悩みや不安を感じていると答えています。 

そんな状況を受けて、国は、親を支える仕組みの整備を進めています。市町村には「子ども家庭センター」という窓口が設置され、家庭訪問や子育て相談、家事・育児の支援、様々なサービスの紹介などを一元的に行っています。また地域の子育てサークルやNPOなど、親子を支える民間団体の活動も増えています。 

悩みや苦しみを1人で抱え込むことは、虐待のリスクを高めます。身近な相談機関や支援団体を通じて、支援とつながることが大切です。  

相談窓口/支援団体/サービスなど

「暴力被害(虐待/DV/性暴力)」のページをご覧ください。