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虐待を防ぐには もしものときの児童相談所

記事公開日:2020年04月23日

子どもを持つ家庭が大きな問題を抱えた時、その解決を手助けする役割を持つ児童相談所。しかし、多くの保護者は児童相談所を敬遠し、身近に感じていません。娘に手を挙げてしまい、自ら児童相談所に通告した母親の話から、児童相談所の役割を考えていきます。

児童相談所はなぜ敬遠される?

児童相談所に対して多くの保護者は「怖そう」「関わりたくない」とあまりいいイメージを持っていないようです。児童相談所に長年勤めた立正大学准教授の鈴木浩之さんはこう語ります。

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立正大学准教授 鈴木浩之さん

「児童相談所に関わったから、それでもうおしまいだとか、絶望だとか、ここまで来てしまったとはけして思わないでほしい。我々がしたいのは親御さんを罰することではなくて、親御さんと一緒に子どもの未来とか安全とか幸せを作っていくこと。そういうお手伝いをするのが児童相談所の役割なんです」(鈴木さん)

かつて児童相談所の所長を務めた金沢星稜大学教授の川並利治さんは、児童相談所では虐待以外にも障害のある子の子育てや非行などのさまざまな相談を受けているという。

画像(金沢星稜大学 教授 川並利治さん)

「例えば子どもが言うこと聞かないだとか、中学生ぐらいの子どもが深夜徘徊するとか。これで家族はもうどうにもならなくなったときに、いろいろな行政機関や学校と連携して、親子のピンチを救うのが児童相談所と思っていただけたらいいと思います」(川並さん)

児童相談所へ自ら電話した親の体験談

2015年に設置された全国共通ダイヤル189は、最寄りの児童相談所につながる電話番号です。「児童心理司」や「児童福祉司」などの専門職員が24時間休みなく、虐待や子育ての相談を受けています。

画像(全国共通ダイヤル189)

周囲の人が「あの子、虐待を受けているかも」と感じたときに通告できるだけでなく、親自身が「子育てがつらくて子どもにあたってしまう」という場合もこの番号にかけることができます。

2人の子どもを育てるアキクサさんは、長女の子育てが思い通りにいかず、手を挙げてしまったことから、自ら児童相談所に電話しました。

画像(アキクサさん)

アキクサさんの長女はこだわりが強く、泣き出すと何時間も暴れておさまらないことも。どう接すればいいのか分からず悩んでいましたが、夫は連日、深夜まで仕事で話す時間もありませんでした。実家の親にも何度か相談しましたが「がんばりなさい」という叱咤激励を受けるだけで助けてもらえなかったと言います。

「娘は本当にささいなことで、爆発して。学校から帰ってきて、私が『手を洗いや』というと、『いや、手洗った』と言い張ったり、そういうやりとりですよね。ほぼ毎日のように、スイッチが入ると泣き叫んで。なだめても、抱きしめてもだめで、ギャーギャー泣きながら私の後を追いかけてきてしんどかったですね」(アキクサさん)

1人で悩む日々が2年以上続き、あるとき自分の感情を抑えられなくなります。
当時の日記には「ただ静かに話したい。でもできない。だまってほしいのにだまってくれずに、口をふさいで首をしめてしまった」と書かれています。

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アキクサさんの日記

「消えているテレビの画面に自分がふっと姿が映るんですよね。映ってる自分の姿を見ると、助けてほしいって自分で電話しましたね。誰かにちょっと子どもを見てもらいたかったんですよね」(アキクサさん)

児童相談所に電話をすると職員がすぐに来て、やっとそのとき我に返りました。

「こんなに小さくてかわいいのに、なんで私はひどいことをしたり、傷つけてしまうのか、つらくなって泣いた」(アキクサさんの日記より)

子どもの一時保護 親にとっての意味とは?

児童相談所の職員が来てくれて「ほっとした」というアキクサさん。しかし、それも束の間。思わぬことを言われます。

「児童相談所の職員の方が『じゃあ、お母さん、仕切り直しってことで!』と言いながら、娘をパーッと連れてっちゃった。私が望んだのは一時保護で娘が連れてかれることじゃなくて、ちょっとの間だけ距離を取らせてもらえることだったのに」(アキクサさん)

アキクサさんは2~3日、長女を預かってもらえるのかと思っていましたが、結局その日から2か月、一時保護となりました。

画像(児童相談所の権限)

自分の意思にかかわらず、子どもを一時保護された場合多くの親が非常に戸惑います。
親はそれをどう受け止めればいいのか。児童相談所で長年、親のカウンセリングをしている五月女友美子さんは言います。

画像(小児科医・臨床心理士 五月女友美子さん)

「子どもと分離されるという非日常的なことが起きたので、すぐ気持ちを落ちつけることはとても難しい。子どもが保護されてしまったのに、自分ばかりが自宅でゆったり過ごしてはいけないんじゃないかと考える方もいる。しかし、まずは親御さんが元気になる必要があります。ちょっと外に出て、例えばお買い物をしてみたり、なるべく気持ちも体も動かしていただきたいなと思うんですね。そうして、家庭内の煮詰まった環境をちょっと解放しようというのが一時保護かなと」(五月女さん)

長女を一時保護されたアキクサさんも、時間が経つにつれ自分の育児を振り返ることができるようになったと言います。

「子どもが生まれてからずっと1人で向き合ってきて、夜も寝られていなかった。娘が保護されている間は、私も寝られたし、食事もまともにとれるようになった。子どもの特性について勉強したりとか、私はどういう声かけをしてあげればよかったのかなとか考えました」(アキクサさん)

長年、児童相談所に勤めていた川並さんはこう話します。

「一時保護されると親もとてもショックです。児童相談所としても保護するかどうかというのは、非常に迷って、迷って。でもやっぱり安全のために親子を分けた方がいいんだということになった場合に保護するわけなんですね。ですから、お互いに元気を取り戻す時間と空間を提供するということが、一時保護の役割にもあるのかなと思いますね」(川並さん)

遠い存在のように感じがちな児童相談所ですが、もしものときに相談できるよう、児童相談所がどのような役割を担っているのか、まずは知ることから初めてみてはどうでしょう?

虐待を防ぐには
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※この記事はウワサの保護者会 2019年11月23日放送「シリーズ 虐待を防ぐには③~もしものときの児童相談所~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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