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“女性のひきこもり” 見過ごされてきた その実態

記事公開日:2020年01月29日

内閣府によりますと「ひきこもり」とは『買い物などで外出する以外は、家にとどまることが半年以上続く状態』とされ、2019年にまとめられた最新の調査では40歳から60歳までで61万人と推計されています。
全国であわせて100万人にのぼるといわれ、長期化や高齢化も課題となるなか、過去の調査では統計に含まれず見過ごされ続けてきた女性たちがいます。
それが『家事手伝い・専業主婦』で、ひきこもる人たちです。

自宅にひきこもる40代女性

41歳の女性は、1人暮らしで仕事はしておらず、父親の年金などで暮らしています。

画像(41歳の女性が家事をしているところ)

女性は高校を中退後、アルバイトをしながら就職を目指しました。
このころは、友人と趣味のスポーツ観戦やコンサートに行くこともあったといいます。しかし、当時は就職氷河期。特に女性の就職は厳しく、仕事に就くことをあきらめました。

家事手伝いとして家にいる時間が長くなり、次第にかつての友人たちとも疎遠になっていきました。

女性(41):
「自分の後ろめたさ、劣等感があるので、働いている、家庭持っている、そういう人に、いまの状態を知られるのが怖くて連絡とれなかった。そのうちに音信不通になってしまった」

自分に自信が持てなくなり、親戚から勧められたお見合いの話も受けることができませんでした。

40歳を過ぎても、自宅にひきこもる日々が続きました。
食事の買い物以外、ほとんど外出することもなく、人と会話する機会もありません。
「このまま1人で暮らし続けることになるのか」。女性は自分の将来に強い不安を感じるといいます。

画像(インタビューに答える女性)

女性(41):
「疎外感と排除感。(社会から)いないことにされている。ひとりぼっちでお金もない。もう生きていくすべがないみたいな。そういう恐怖を感じる」

表面化しなかった背景に「偏見」

見過ごされてきた女性のひきこもり。その深刻な実態が当事者グループによる調査で初めて明らかになりました。回答を寄せた371人のうち、家事手伝いや主婦と見られる人の割合は半数以上に上りました。

さらに、ひきこもりが長期にわたっていることが明らかになりました。
ひきこもりの年数は、平均でおよそ7年半。中には、20年と答えた女性もいました。調査からは、「居場所がない」「相談出来る人がいない」など、切実な状況が浮かび上がりました。

なぜ表面化してこなかったのか。
ひきこもりに詳しい精神科医の斎藤環さんは、次のように指摘します。

画像(筑波大学教授 齋藤環さん)

筑波大学教授 斎藤環さん:
「いまだに家事手伝いという言葉があったり、専業主婦って言葉があったり、家に閉じこもっている状態を、そういう言葉でマスクできてしまう。社会に出なくてもいいという偏見が、社会全体に根強いところがまだあって、積極的に就労しないことの不安感とか、問題意識がまだまだ乏しいと思う」

つらい思いを共有 「ひきこもり女子会」

東京・渋谷区で、ある集会が行われました。その名も「ひきこもり女子会」です。
孤立する女性たちを支えようと、ひきこもりを経験した女性たちが2016年から定期的に開いています。会では、まずスタッフが自らの経験を打ち明け、つらい思いを共有する仲間であることを伝えます。

ひきこもりUX会議 林恭子さん:
「27歳くらいだったと思うけど、限界がきて、自宅にひきこもる状態になった。
かなり強い絶望感と、未来を失ったという感じになった」

そして、参加者が本音を語りやすいよう、少人数に分かれて話す時間を設けます。
相手の話を否定しないというルールの中で、参加者は、「仕事」や「親子関係」など、抱え込んできた悩みを打ち明け始めていきます。

参加者:
「母と暮らした時期、心身ともに調子悪く、何日も立ち直れなかった」

参加者:
「経済的に自立したかったので、職業訓練で、体を壊した」

ひきこもりUX会議 林恭子さん:
「焦りはするよね」

会に参加したことで、前に踏み出すことができたという女性がいます。

画像(37歳の女性)

女性(37):
「気持ちが明るくなって、こんな私でもなんとかなるかなって」

37歳のこの女性は、服飾の専門学校を中退後、15年近く実家でひきこもっていました。
2016年に、はじめて女子会に参加。その場で、同じ苦しみを抱える女性が再就職して努力したという話を聞きました。

勇気づけられたという女性。思い切って、かつての夢だった服飾関係の求人に応募しました。
今はパートとして働きながら、少しずつ仕事に慣れようとしています。

女性(37):
「(女子会に)行ってなかったら、今もずっと部屋にいて、ひきこもっている。ひきこもっていると思います。自分も頑張れるのかなと、ちょっと前向きに考え始めていて、このまま頑張りたい」

「ひきこもり女子会」を行う団体では、女性たちが少しでも社会とつながるための支援がさらに必要だと考えています。

ひきこもりUX会議 林恭子さん:
「一人で孤立し、日々たたかう人たちの限界、疲れきっている様子も伝わっている。苦しさをそのまま受け止めて、決して否定することなく受け止めた上で、彼女たちがどう生きていきたいかを、後ろからサポートする場や支援が必要」
※林恭子さんの記事は、こちらから読むことができます。

ひきこもる人たちへの支援は、公的機関でも行われています。
ただし、職場や学校で男性から精神的に傷つけられるなどしてひきこもった女性も少なくないため、女性に特化したこうした取り組みが重要になってきていると感じました。

実態をしっかりと把握し、支援につなげていくことが求められています。

取材:大澤深雪記者(社会部)

※この記事は2018年1月29日(月) 放送「おはよう日本 けさのクローズアップ」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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