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【特集】性暴力はいま(3)声を上げはじめた被害者たち

記事公開日:2019年12月19日

これまで沈黙を強いられてきた性暴力の被害者たちが、声を上げはじめました。性暴力被害にあった当事者や支援者たちが街頭でスピーチする“フラワーデモ”は毎月開催され、現在は全国30都市を超える広がりを見せています。誰にも言えずに苦しみ続けてきた性被害者たちが声を上げはじめたなか、私たちはどのように向き合えばよいのでしょうか。当事者たちの声を伝え、被害者をなくすために何ができるか考えていきます。

声を上げはじめた性暴力の被害者たち

性暴力の被害にあった人や、周囲の人たちが街頭で思いを伝えるフラワーデモ。2019年4月に始まり毎月11日に行われ、その輪は全国に広がっています。

群馬県高崎市では、高校3年生のとき、そしてその後も2度に渡り性的暴行の被害に遭ったみづきさんが、約2分間のスピーチを行いました。

画像(スピーチを行うみづきさん)

「私が初めて性暴力を受けたのは高校3年生のときでした。そのとき駆けつけた男性警察官にまず最初に言われたのは、『あなたも悪いよね』という言葉でした。私はこれまで3回の性暴力に遭いました。でもこれらのことを私は10年以上の間、なかったこととして生きてきました。でも、私がこうして話している瞬間にも、過去の私と同じように苦しみと絶望のなかにいる人が大勢いて、助けを求めたいのに求められず、苦しんでいる人たちが大勢いて、誰の助けも得られずに自らの死を選んでしまうという人が大勢いるということを知って、それを思うと私はここで声を上げずにはいられないのです。自分の過去もなかったことには、できないのです。性暴力のない社会をつくりたい。でも私一人でできることではないです。多くの方の理解や協力が必要です。だから私はここで声を上げていきたい。訴えていきたい。変えようと思えば社会は変えられる。行動を起こしていけば、変えられると私は信じています」(みづきさん)

女優でタレントの秋元才加さんは自身の経験を振り返りながら、このスピーチに胸を痛めます。

画像(秋元才加さん)

「性暴力という言葉の概念は幅広いと思います。自分に似たようなシチュエーションがあったか考えてみると、痴漢とかに遭ったりしましたが、そのとき無意識に『これは違うはずだ、きっと間違いだ』と避けようとしている自分がいたと思いました。そして、自分の想像以上に被害に遭われている方が多いことに、つらい気持ちになりました」(秋元さん)

みづきさんの「なかったことにしたくない」という言葉。評論家の荻上チキさんは、声を上げる人たちに込められた思いを、こう受け止めます。

画像(荻上チキさん)

「もともと『#MeToo』という、性暴力被害に遭った方が実名だったり、匿名だったり、告発や声を上げるという動きがありました。そうした動きはネット上で共有されて『私もこういった目に遭った』『私もこういった社会を変えたい』という声が次々と上がってきました。そうしたなかで、さまざまな刑事司法、裁判で問題点や矛盾点が明らかになってきた。そうしたものにいてもたってもいられない、なんとかしてほしい、『これは私たちの世代で十分だ。もう止めてほしい』という方がこれだけ多いということを痛感します」(荻上さん)

全国に広がるフラワーデモへの共感

フラワーデモは、3月に相次いだ性虐待に対する無罪判決に抗議するため、2019年4月11日に東京で行われた集会が始まりでした。しかし、そこに集まった人々が自身の性暴力被害の体験について語りだし始めたことがきっかけで、自身の被害体験も語れる場として毎月開催されるようになり、12月には全国31か所で行われました。なぜここまで全国に広がったのか、それは性暴力が日常の身近な場所で起きているからだと発起人の1人で作家の北原みのりさんは考えます。

画像(北原みのりさん)

「1人でもいいから声を上げたいという方が、いろいろな地域にいらっしゃいます。大きな都市に出て行ってデモに参加するのではなく、性暴力が私たちの日常で、生活のなかで一番安全であるべき場所で起きている。だからこそ、自分の生きている場所で声を上げたいという方が立ち上がっています。その声の広がりが全国に広まっていると思います」(北原さん)

フラワーデモは街を歩いて抗議をするという一般的なデモではなく、仲間と集まって語り合うという形です。このことも、被害者の方たちにとって声を上げやすくなっています。

「性暴力被害者は勇気がないと語れないというのがあった。私たちがここで見て思ったのは、『安全な場所であれば語りたい。シュプレヒコールではなく、私の話を聞いてほしい』という思いによって変えていきたいという強い声だと思います。多くの性暴力の被害は過去に起きたことで、子ども時代に起きたことで、証人はいないし証拠もない。でも、なかったことにはできない。自分の人生を止めてしまうような体験を話すことによって止めたい。未来を変えたいという願い、祈りのような声だと思います」(北原さん)

ようやく声を上げられるようになった性暴力の被害者たち。一方で、司法の現場は被害者を受け止められていないのではないかと、荻上さんは懸念しています。

「現在の司法のあり方ですと、強姦、強制性交等罪と認められるためには、抵抗が著しく困難な暴力や暴行、あるいは脅迫などが伴うこと。あるいは、抗拒不能であるとか意識がない状態、そうしたいくつかの要件があって、さらに抵抗を試みたであるとか、さまざまな要件があってようやく有罪として認められます。でも、具体的な被害に遭った場面で抵抗ができるかどうか。抵抗できないと考えたから固まるであるとか、立場の問題とかいろいろなことがあって、逆らえないわけです。あたかも司法そのものが、そうした人たちに対するセカンドレイプのような形になっているのではないか。そんな抗議が、多くの人たちに共有されていると思います」(荻上さん)

誰にも言えない苦しみを知ってもらいたい

フラワーデモに参加している人たちは、どのような思いでスピーチをしているのでしょうか。
大学生のアヤカさん(仮名)は、小学生のときに近所の上級生から性器を触られる被害に何度も遭いました。そして、誰にも言うなと脅されていたと振り返ります。

画像(アヤカさん)

「脅しが使われたのが、実際に性暴力を受けているときで。『暴力をおとなしく受けないとばらす』みたいな受け取り方でした。性暴力を受けている状態から逃げ出したいという気持ちはもちろんありましたけど、どうすればいいかわからなかった。両親には心配をかけたくないから言えないみたいな」(アヤカさん)

今も、電車などで見知らぬ男性が近くにくると、極度の緊張状態になります。それでも、家族と被害について話したことはなく、1人で苦しさを抱えてきました。しかし、フラワーデモの存在を知り、人に伝えたいという思いがわき上がってきたと言います。

そして、11月に名古屋のフラワーデモに参加して、初めて自らの経験を話すことを決意。アヤカさんは、何度も直して書き上げたスピーチを読み上げました。

画像(スピーチを行うアヤカさん)

「自分が女性であることを受け入れられない。恋愛や結婚に前向きになれない。そこから生まれる、どうして他の女の子と同じようになれないんだろうという気持ち。どれも受けた性暴力さえなければ、絶対に生まれなかった思いだと思っています」(アヤカさん)

アヤカさんはこれまで胸の内に抱えてきた苦しみを、集まった人たちに向けて訴えます。

「私は性暴力を受けてから今に至るまで、一度たりとも両親とそのことについて直接話をしたことがありません。話さないのではなく、話せないのです。親だからこそ話せないんです」(アヤカさん)

最後に、勇気を振り絞って人前に立ったアヤカさんが、みんなに知ってほしいことを伝えました。

「もしもあなたの周りの方が、性暴力の被害にあったことをあなたに打ち明けたとき、こう言葉をかけてほしいです。『つらかったね』『よく耐えてきたね』と。私たちはあなたのことを信じて打ち明けています。打ち明けるまでに、私たちはたった1人でたくさん悩んで苦しんで考えてきました。たくさん時間がかかると思います。でも、どうか私たちがあなたに話せるようになるまで時間をください。それが私の願いです」(アヤカさん)

まだ十分ではない性暴力被害者へのケア

番組には被害者から切実なメールが届いています。

「性暴力受けたなんて人に言えないです。私は5年以上継続的に受けてました。その時点で言えないです。いつでも逃げれたでしょって言われそうでこわい」(りりさん)

画像(秋元さんと荻上さん)

全国に広がるフラワーデモ。それでもまだ声を上げられない女性は多いと荻上さんは考えます。

「内閣府の調査では、女性の13人に1人が無理やり性交等をされる被害に遭っているというデータもあります。でも実際に警察が立件している案件や、相談にいっている案件はもっと少ない。それだけの数が言えないという状況にあるわけです。だから『加害者は何をやっているんだ』、それから『社会はまだまだ寄り添いきれていないではないか、対応しきれていないではないか』といったことも浮き彫りになります」(荻上さん)

被害者に寄り添い、被害者をなくすために何ができるのか。次回は被害者のケアについて考えます。

【特集】性暴力はいま
(1)デジタル性被害 終わりのない苦しみ
(2)未成年が陥るデジタル性被害
(3)声を上げはじめた被害者たち ←今回の記事
(4)みんなに知ってほしいこと
(5)みんなに“もっと”知ってほしいこと

※この記事はハートネットTV 2019年12月11日放送「性暴力2 生放送 みんなに知ってほしいこと」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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