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【特集】性暴力はいま(2)未成年が陥るデジタル性被害

記事公開日:2019年12月16日

性的な動画や画像がネットに拡散され、終わりのない苦しみが続く「デジタル性被害」。被害者の低年齢化が進んでいます。加害者が見せるのは、子どもたちの心の隙を狙う巧みな手口。SNSを通して誰でも簡単につながる時代に、子どもたちを被害から守る方法はあるのか。大人たちが果たすべき役割を考えていきます。

怖くても切れないSNSの関係

素性の分からない相手ともSNSなどで簡単につながり、若い女性たちが被害に遭ってしまうデジタル性被害。17歳のべあーさん(仮名)は、中学生のときにSNSで知り合った「女子中学生」を名乗る人物に、裸の画像を送ってしまいました。

画像(べあーさん)

「同級生で女の子っていうところで、同じ趣味とか特技があって。今度一緒に(趣味を)やろうっていう話から、意気投合しました」(べあーさん)

べあーさんは「話の合う同級生の女の子」ということで心を許し、画像の送付を断り切れなかったと言います。

「ずっと断り続けていると、相手からも写真を送られてきて、『私も送ったから早く送って』と言われます。送っても、『下着着てるのダメ』とか、『全部脱げー』とか言われて、『明日の朝早いから早く』みたいな感じで来たりとか。相手が本当に同級生で女の子かっていう信用もなかったのに、相手からも(写真を)送られてきたのでなぜか信用して、自分も写真を送ってしまいました」(べあーさん)

べあーさんにとって、ネットが唯一の居場所でした。画像を送った相手は、中学生になって初めてできた友達です。

「クラスとかにもなじめなくて。現実の世界では誰とも関わったり、話したりすることがほとんどなかったので。ネットの中だけは、知らない人でも自分と話してもらえる、自分の存在が認められてるのかなっていう感覚をずっと感じていました」(べあーさん)

不信感を抱きながらも、ようやくできた友達を失いたくないという思いから、今もつながっていると言います。

画像(スマホを操作するべあーさん)

SNSの性被害対策における限界

SNSの運営者もデジタル性被害には頭を悩ませています。
「学生限定」を謳い登録者数800万人を超える交流アプリがあります。同じ趣味の仲間と出会い、気軽につながることができると若者に人気です。

しかし2019年10月、運営会社が年内でサービスを終了すると発表しました。アプリを悪用し、学生になりすました大人によって未成年が狙われる事件が多発していたのです。児童買春や児童ポルノなど、去年1年間の被害者は214人にも上りました。アプリ運営会社の社長、石濱嵩博さんは、性的な投稿がないか30人体制でパトロールをするなど、対策に取り組んでいます。多いときは1日2000件にもなる不適切な投稿をひとつひとつ確認して削除。さらに、2019年4月から年齢確認システムを導入し、出会い目的で利用する大人を防ぐことも始めました。

しかし、こうした対策を講じても性被害を減らすのには限界があると石濱さんは感じています。

画像(アプリ運営会社 社長 石濱嵩博さん)

「例えばチャットの中身を見るとか、プライバシーを侵害して、プライベートな部分を僕たちが運営として監視しなきゃいけない。あとは自由につぶやけないように、事前に話した内容をこっちでチェックして、恋愛につながらないように操作しなきゃいけないとか。ある意味、管理社会、監視社会みたいなところまでやらないと、(性被害を)ゼロにできないと思っていて。元々つながりを増やすためにやっていたのにもかかわらず、どんどん狭いつながりしか作れないような、規制、規制、規制とならざるを得なくなった」(石濱さん)

変わるべきは大人側の意識

サービスを終了するアプリがある一方、世の中には同様のアプリがたくさん存在しているというのが現状です。性暴力被害に遭った10代の女性たちを支援しているNPO法人代表の仁藤夢乃さんは、今こそ性被害の対策をする必要があると訴えます。

画像(NPO法人代表 仁藤夢乃さん)

「私たちが関わる少女たちのなかにも、SNSアプリを使って性被害に遭った子が100人以上います。このアプリは閉鎖されますが、他にも同じように使われているアプリはたくさんあります。加害者たちはそこに流れていくだけだと思います。これまでもSNSを通して加害者たちが性加害を行ってきたことが問題になったにもかかわらず、放置されてきました。これからは、どうしたら加害を防げるのかということを検証していく必要があると思います」(仁藤さん)

怖いと知りながらも、子どもたちはSNSでのつながりを切れません。子どもとネット問題について研究している兵庫県立大学准教授の竹内和雄さんは、世の中が変化しているので大人も変わらなければならないと考えています。

画像(兵庫県立大学 准教授 竹内和雄さん)

「前提として、ネットが彼らの居場所になっている。そういうことも含めて受け止めてあげないと、彼女たちを救い出すことができない。確実に世の中は変わってきて、ネットもリアルも含めて、彼女たちは懸命に生きていることを受け止める姿勢が大人側にないといけない。『被害者が悪い』と言う大人が多いので、彼らがどうしていいか分からなくなってしまう。追い詰められて、相談もできない。それがかえって悪い加害者の餌食になる子が増える、そういう悲しい現実を感じてしまう」(竹内さん)

さらに仁藤さんは、社会の風潮が加害者にとって好都合な状況を生んでいると警告します。

「『なぜそんなことをしたのか』という疑問を被害者に投げかけること自体が暴力だし、当事者を追い詰めることになると思います。性暴力被害は、相手を信頼させたり、断れない状況を作って加害行為を行います。『なんでやったの?』という声が大きい社会は、被害者を責めるような声です。そういう社会では被害者たちは被害を訴えることもできないし、自分を責めてしまいます。それは加害者にとって都合の良い状況だから、私たちが変わっていくことから始めないといけないと思います」(仁藤さん)

求められる抜本的な対策

SNSを通じた性被害をどう防いでいけるのか。竹内さんが取り組んでいる試みがあります。兵庫県立大学のソーシャルメディア研究会では、未成年によるSNSの投稿を学生たちがチェックしています。これは、性被害につながる恐れのある芽を未然に摘もうという試みです。なかには中学生による投稿もあり、低年齢化が進んでいることが分かります。

画像(兵庫県立大学 ソーシャルメディア研究会)

不適切な投稿に対しては、警察から投稿者に注意喚起のメッセージが送られます。この取り組みについて一定の成果は見られるものの、竹内さんはさらなる対策が必要だと考えています。

「兵庫県と分かる子を対象にして(不適切な投稿は)減ってきています。ただし、抜本的な対策にはなっていなくて、水際でやっています。1人でも被害に遭う子を減らしたいと学生たちは頑張っていますが、抜本的な対策ではないです。これが私たちができる限界です」(竹内さん)

一方、仁藤さんはこの取り組みによって、被害に遭った子どもたちが声を上げられなくなると心配します。子どもたちが悪いことをしている存在に見えるからです。

「本当に必要なのは、加害者たちこそ通報すべきです。日本では被害を防止しようと考えたときに、被害者の教育とか、被害者を抑制しようとか、被害者の自由を奪うようなことばかりが行われています。被害者に何かを求める以上に、加害者たちにこれはいけないことだということを、私たちが伝えていかなければいけないと思っています」(仁藤さん)

ネットの性被害を減らすために必要なこと

高校生の娘が被害に遭ったという、母親からのメールが番組に届きました。

「娘が高校生のとき、性的な動画を撮られ、ネット上に拡散されました。そのことが学校に知られると『お前のおかげで学校の評判が落ちる』『親はどういう教育をしているんだ』などと言われ、自主退学を迫られました。学校には被害に遭った生徒に対して心情を理解してほしいと強く思いました」(被害に遭った高校生の母親)

こうした学校の対応はまったく間違えていると、竹内さんは指摘します。

画像(兵庫県立大学 准教授 竹内和雄さん)

「『なぜやったのだ』と、被害に遭っているのに責められるという事例はたくさんあります。子どもたちの多くは、ネットでトラブルがあったときには先生に相談しない。なぜなら『先生は暴走する』と言うのです。学年集会をしたり、みんなで糾弾するから、先生は相談対象になっていない。一番分かってほしい先生が相談できないという、そこを変えていかなければならないと思います」(竹内さん)

では、子どもたちが性被害に遭ったときに、大人はどのように対応すべきなのでしょうか。仁藤さんは、自分たち大人が意識を変える必要があると考えます。

画像(NPO法人代表 仁藤夢乃さん)

「『どうして被害に遭ってしまったの?』と思う人は多い。被害者を責めることにつながるので、私たちがまず性暴力が起きる構造について勉強する必要があると思います。そして『あなたは悪くない』と、当たり前のように私たちが言えるようにならないといけない。ケアの充実と、加害者をどのように加害させないように抑制していくのか、そのような議論を始めないといけないと思います」(仁藤さん)

まずは性被害に遭った子どもたちの声を受け止める。そして、加害者に目を向けていくことがデジタル性被害を減らすために必要です。

【特集】性暴力はいま
(1)デジタル性被害 終わりのない苦しみ
(2)未成年が陥るデジタル性被害 ←今回の記事
(3)声を上げはじめた被害者たち
(4)みんなに知ってほしいこと
(5)みんなに“もっと”知ってほしいこと

※この記事はハートネットTV 2019年12月10日放送「性暴力1 私の画像を消してください 広がるデジタル性被害」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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