ハートネットメニューへ移動 メインコンテンツへ移動

【特集】性暴力はいま(1)デジタル性被害 終わりのない苦しみ

記事公開日:2019年12月16日

最近、若い女性たちに広がっている「デジタル性被害」。本人の知らない間に性的な動画や画像がネットに拡散され、被害者は大きな苦しみに直面します。なぜ被害に巻き込まれてしまい、どうすれば被害を防げるのか。デジタル性被害の深刻な現状とリベンジポルノ防止法の問題点について考えます。

ある日突然、被害者になる

大学生のハル子さん(仮名)は、自分の性的な動画を勝手にアダルトサイトに載せられる被害に遭いました。きっかけは3年前にオンラインゲームである男性と知り合ったこと。男性に好意を寄せていたハル子さんは、ネットで通話中に求められるまま、自慰行為を見せてしまいました。

「『会えないから、寂しいから、そういう動画を映してほしい』みたいな話になって。いやだったけど、相手が望むなら仕方ないっていうか」(ハル子さん)

1年後、ハル子さんはその動画がネットに上げられているのを見つけます。実は、男性がハル子さんに黙ってパソコン画面を録画していたのです。

「ショックな気持ちが大きかったです。そういうことに応じてしまった自分に対して、なんであんなことしたんだろうという思いと、相手に対して怒りというよりも失望というか」(ハル子さん)

男性に連絡し、その後、動画は削除されました。しかし5か月後、別のサイトに動画が載せられているのをハル子さんは発見します。

「転載されるのが一番怖くて嫌だったので、それを見つけたときは絶望した気持ちでした。しかも(有料サイトに)お金で売られてたので。自分を性的な対象として買う人がいるんだというのがすごいショックで気持ち悪いなと思ったし、これ以上多くの人に見られたくないという気持ちがより強くなりました」(ハル子さん)

画像(デジタル性被害を語るハル子さん)

ハル子さんは、動画の削除要請を請け負う団体に動画を消して欲しいと依頼しました。

「一再生でも多く増えないようにという、願うような気持ちで。1秒でも早く削除されてほしいなと思って、30分おきとかにまだ消されていない、まだ消されていないと思いながらずっと見てました」(ハル子さん)

困難が伴う画像や動画の削除

「デジタル性被害」の対策を行う都内のNPO法人では、被害者からの相談を受けて画像や動画の削除に取り組んでいます。代表の金尻カズナさんは、自分の知らない間にネットに上げられてしまった画像を消して欲しいという依頼が最近増えていると言います。

画像(画像や動画の削除に取り組む金尻カズナさん)

「スマートフォンで誰もがカメラを持っている時代なので。寝ている間に撮られたり、それが拡散してしまう被害もありますし、普通の人でも巻き込まれるんです」(金尻さん)

このNPO法人では、依頼者の画像をキーワードで検索し、掲載されているサイトを洗い出します。そして、ひとつひとつ削除要請のメールを送り、削除されるには半年以上かかる場合もあると言います。難しいのは海外サイトの場合です。対応までに時間がかかり、そもそも応じてくれないことも少なくありません。削除率は9割程度で、いったんネットに上がった画像を完全に消すのは難しいと金尻さんは感じています。

「常に定期的にチェックしないと、またアップされるというのを何度も繰り返している。そこを人海戦術でやっていくしかないということですね。1つの団体にできる限界があります」(金尻さん)

終わりのない苦しみが続くデジタル性被害

動画が最初にネットに上げられてから1年半。
ハル子さんは「動画が再び拡散されるのではないか」という不安から夜も眠れなくなり、心療内科にかかるようになりました。

「本当は見たくないのに、でも自分しか確認する人がいないので、しかたなく。『ありませんように、ありませんように』ってスクロールして探してて、深夜ずっと確認してました。そのとき動画を見つけられなくても、本当はどこか別のサイトにあるんじゃないかと思って。全てを探す、全てを確認することはできないので、不安はずっとなくならなかったです」(ハル子さん)

動画を上げた側は何もせず、被害者だけが苦しまなければならないという現実。悔しさを感じているハル子さんは、心の区切りを付けようと裁判の準備を進めています。

画像(デジタル性被害を語るハル子さん)

「もう、一生消えることはない。多分一生このことがなかったことにならないから、終わりはないと思うんですけど、裁判とか示談とかで決着がついたら一区切りがつけられるかなと思います。でも動画はその後も上げられる可能性はあるので、終わりとは言い切れないかなとは思います」(ハル子さん)

デジタル性被害は誰にでも起こり得る

知らない間に画像や動画が拡散されてしまう「デジタル性被害」。性暴力被害に遭った10代の女性たちを支援しているNPO法人代表の仁藤夢乃さんは、ネット上に性的な画像や動画をアップされる女性が増えていると語ります。

画像(NPO法人代表 仁藤夢乃さん)

「特に若い世代にとって、SNSやネットで知り合った人と恋愛関係になるのは特別なことではなくなってきています。そこにつけこまれる形で被害に遭うことがある。ある13歳の女の子は、ネットで知り合った会社員を名乗る男性と恋愛関係になり、その男性から性的な画像を送るようにとメールが来ました。『怖いな、大丈夫かな』と思ったけど断れない状況で、『僕のこと好きなら送ってよ』と言われて送りました。また、実際に男性と会って性行為をしたらその様子を撮影されて、彼女はそれを普通の恋愛なんだと思い込まされていた。それが1年くらい経ってネットで販売されていたことが分かって、被害に気付いたということがありました」(仁藤さん)

女性は撮影された画像や動画がネットで拡散されることを想像していません。被害に気付かず、被害が何度でも繰り返されてしまう可能性があるのが、この問題の深刻なところです。

子どもとネット問題について研究している兵庫県立大学准教授の竹内和雄さんは、デジタル性被害は特殊な問題ではないと指摘します。

画像(兵庫県立大学准教授 竹内和雄さん)

「このような問題を見た大人の反応が、『そもそもネットをするから悪いのでは?』とか『もっとリアルを大事にしろ』という声が多い。子どもたちにとってネットも自分たちのリアルで、ネットとリアルの境界なく生きている。ネットが彼らの居場所になっているということを理解しないといけない。特殊な子たちの特殊な問題と捉えがちですけど、これは子どもたちの中心の課題となっている。このあたりを私たちがどのように受け止めるか、考えなくてはならない強烈な問題提起だと思います」(竹内さん)

被害者の救済に不十分な“リベンジポルノ防止法”

番組にもデジタル性被害について多くの声が寄せられています。

「ネットで知り合った人に体や顔が見たいと言われ、断れなくて何枚か写真を撮って送りました。その写真を消してくれたかどうかは今でも分かりません。私が知らないところでネットにあげられていたらどうしようって不安に今でも襲われます。」(20代 女性)

「お付き合いしていた人に写真を撮られたことがあります。データ流出などが怖いから削除してほしいと頼みました。そうしたら『俺がそんなことすると思うのか』と怒りだしました。そして写真も削除しないと言い出したので、解決するために人に間に入ってもらうはめになりました。」(40代 女性)

みんなの声「『私の画像を消してください』デジタル性被害の体験談」より

いつ被害に遭うか分からないという不安を抱え続けるデジタル性被害。顔が見えないネットの世界でも、信頼関係によって安心できるからこそ画像を送ってしまうと仁藤さんは語ります。

「顔が見える関係性のなかでも性暴力被害は起きています。性暴力被害の加害者の多くが顔が見える知り合いだと言われています。ネットでも信頼させたような状況を利用して被害が起きているのが現状だと思います。顔が見えないから信頼できないということではありません。子どもたちのなかでもSNSを、この人は信頼できるかどうか考えながら使っています。そのなかで、信頼できると思わせるような手口があって、そこで被害に遭うということに注意しなくてはならないと思います」(仁藤さん)

デジタル性被害の対策として、2014年に“リベンジポルノ防止法”が施行されました。しかし、被害者の救済には不十分だと竹内さんは考えます。

画像(仁藤さんと竹内さん)

「私的な性的画像を出すと処罰されるという法律ですが、画像を削除しなければならないという義務はありません。(画像を)アップした人を処罰してもどんどん拡散され続けて、そちらの方が問題。画像の削除に対する支援が十分ではなく、そこが一番根が深い問題だと思います。」(竹内さん)

画像や動画の削除はサイト側の判断に任されているという現状。仁藤さんはさらに問題点を指摘します。

「親告罪なので、被害者が被害に気付いて被害を訴えなければ事件にならないという法律。デジタル性被害は被害者が被害に気付かないということが問題であって、どこで自分の動画が流されているか、どんなサイトで流されているのか分かりません。場合によっては会員制サイトで有料で売られ、登録しないと気づけないこともあります。私たちが出会っている少女たちのなかにもたくさん被害者の子がいますが、それに気づいて親告しようというところまでいかない子がほとんどです。」(仁藤さん)

一度拡散すると終わりのない苦しみが続くデジタル性被害。次回は被害者を減らすために、どのようなことが必要か考えます。

【特集】性暴力はいま
(1)デジタル性被害 終わりのない苦しみ ←今回の記事
(2)未成年が陥るデジタル性被害
(3)声を上げはじめた被害者たち
(4)みんなに知ってほしいこと
(5)みんなに“もっと”知ってほしいこと

※この記事はハートネットTV 2019年12月10日放送「性暴力1 私の画像を消してください 広がるデジタル性被害」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

あわせて読みたい

新着記事