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虐待を防ぐには どう叱ればいいの?

記事公開日:2019年11月20日

今、子どもへのいきすぎたしつけが虐待に発展するケースが社会問題となっています。2019年4月には、東京都の条例で「保護者による体罰の禁止」が日本で初めて明文化されました。しかし、子育て中の人たちからは「お尻ペンペンもダメ?」「どうやって叱ったらいいの?」と、戸惑う声が…。子どもに手を上げてしまったこともある親を交えて、子どもをどう叱ればいいのか考えます。

つい子どもに手を上げてしまう親の気持ち

子どもを叱るとき、しつけのつもりが、気づくと感情的になってしまうことも…。
2019年4月、東京都の条例で「保護者による体罰の禁止」が明文化。子どもにわかってもらうためにどう叱れば良いのか…、叱るのに苦労しているという、ざくろ家にお邪魔しました。

画像(走り回る子どもたち)

ざくろさんの子どもは、遊び盛り、食べ盛りの男ばかりの三人兄弟。夕飯時には…
 ざくろさん「ちょっと」
 子ども「え?」
 ざくろさん「ちゃんと前見て食べて」
 子ども「なんで」
 ざくろさん「何でじゃないよ!」

リビングでそれぞれにくつろぐ子どもたち。夜9時になると、子どもたちをお風呂に入れようと…
 ざくろさん「お風呂入りなさい!お風呂!ダメダメ、これ後にして!」
 子ども「待ってよー」
 ざくろさん「待てないから言ってんでしょ!いいから!もう、9時過ぎてるの!ねぇ、聞いてるの!?」

遊び盛りの子どもたちが学校から帰って来て寝るまでの時間は、ざくろさんのイライラが続きます。その毎日の繰り返しに、ざくろさんの我慢の限界を超えることが…

画像(ざくろさん)

「『ママのバカ!』『うるさーい黙れ!』とか、すごい言ってくるので、正直とっさに出ますね。バシーンて。頬っぺたパチッとか、頭バシンとかはあります。言うこと聞かなくて暴れるときは、ちょっとお庭にポイッと出してみましたけど。ま、実際お庭とかにポイッて出すと、子どもも、なんか『助けて!』とか言うんですよ。これ完全にちょっと虐待と誤解されると思って『ちょっと入って』と言って入れるみたいな。それやっちゃったあとは必ず『あしたからは怒らないようにしよう』とか、反省はするんですけど、やっぱり難しいというのが正直なところ」(ざくろさん)

ざくろさんは、子どもに手を上げずにすむ方法を、模索しました。育児本を読んだり、子どもが納得して次に進めるように筋道立てて丁寧に話をしてみたり、ご褒美作戦などなど…。すべてをやり尽くしてしまった感があるといいます。ただ、子どものためを思い、「ほったらかしにすると、将来ろくな大人にならないんじゃないか」という思いがあるといいます。

その他にも、しつけのためについ手をあげてしまったことがあるという、カッパさん「叱るっていうより怒るって感じになってる」や、夕顔さん「余裕がなくなってきたりとかすると早くしてよ、パン!」、だいこんさんは「3回言って聞かなかったら叩くっていうことで、お尻ペン!」など、日々の子どものしつけには苦労が…。

一方で、子どもの頃に親から手を上げられたことがあるネクタリンさんは、自分の子どもには手をあげたことがないといいます。

画像(ネクタリンさん)

「(手をあげること)それがしつけ。と、いう時代に私は育ったので、今聞いていて、親心でそうやって手を出すっていうのは、すごくよく分かるんです。でも、逆に私、1回も手をあげたことがないんです、子どもに。それは、叩かれたり、外に出されたりした時に、『痛い、悲しい、辛い、傷つく』しか覚えていないんですよ。なんで怒られているのか、全然理由が分からないから、繰り返す。だから、言葉でもいいと思うんです」(ネクタリンさん)

体罰が子どもの脳の発達に影響を与える

子育てに一生懸命になりすぎて、つい手を上げてしまう。しかし、親にとってはしつけのつもりでも、叩かれた子どもにはマイナスの影響もあると言います。体罰と子どもの脳の発達について研究している、福井大学子どものこころの発達研究センター教授で小児科医の友田明美さんにお聞きしました。

画像(福井大学子どものこころの発達研究センター 教授 友田明美さん)

「1回だけだったら大丈夫だろう、大したことないだろうとお尻を叩いたり、言葉で怒鳴ったりする。そういう親御さんから子どもさんへのしつけが頻度や強度を増すと、場合によっては、脳まで傷つけてしまうということになりかねないんです」(友田さん)

画像(体罰による脳への影響)

「たとえば、前頭前野は感情や犯罪抑制力に関わる大事な場所で、そこが厳しい体罰を受けることによって萎縮していました。場合によってはうつ病の一種、それから犯罪抑制力とかが関わっているということで、非行を繰り返したり、そういうことにつながりかねない。そして扁桃体というのは感情の中心です。ここは、強いストレス、言葉の暴力によって、変形しますし、不安とか恐怖を助長する働きがある。悪い行いをしたときに罰として押し入れに閉じ込めるなど、子どもさんに悪い行いをして反省してもらいたいという親御さんの強い気持ちはよくわかるんです。でも、むしろ逆効果なんですね」(友田さん)

子どもに手を上げてしまうことがよくないことは、親もわかっています。そのため、その悩みを相談することができずに、一人で悩みを抱え込んでしまうこともあるといいます。また、大学生と高校生の子どもをもつ夕顔さんは、親を見る世の中の目に違和感を抱いています。

「世の中って、子どもがおかしいと『親の顔が見たい』って言葉ありますけど、あれって母親のことですよね。『親はどうなっているんだ』っていう目が自分に向けられている。理不尽だなって。『なんで私?全部 私?』って思うことはよくあって」(夕顔さん)

たとえば、学校から配布されるプリントに「早寝、早起き、朝ごはん」と書いてあると、「親として、早寝、早起きさせて、朝ごはんも食べさせて、ちゃんと育てないと…」というプレッシャーを感じてしまう。そんな息苦しさが、親を追い詰めている側面があります。

よい親になろうという気持ちが裏目になることも

児童虐待事件を数多く取材してきたルポライターの杉山春さんは、「よいお母さんでありたい」という焦りが強くなりすぎると悲劇を招くこともあると言います。

画像(ルポライター 杉山春さん)

「2010年に大阪で23才のお母さんが、子どもを50日間放置して亡くした事件の取材をしました。その母親は、専業主婦時代は、周囲の人に聞いても完璧な子育てを目指していた。そして、2人目が生まれるとそれができなくなり、離婚。さらに、できない自分をかくして助けを求められなくなる。いつもすてきな自分じゃないと誰にも許されないと思っていたんだろうなと取材してわかってきました」(杉山さん)

「親はこうあるべき」という社会からの圧力をまじめに受け止めすぎるとつらい、という杉山さん。しかし、子育てに自信が持てない親がさらに戸惑ってしまう出来事がありました。

画像(2019年4月「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」保護者による体罰の禁止)

保護者による体罰の禁止を定めた「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」が2019年4月に施行されたのです。どう叱ればいいのか悩んでいる保護者たちにとって、とても気になるものです。

子どもに伝わる4つの叱り方

思春期や、聞き分けのない子を叱るのは大変です。そこで、子育て支援に長年携わっている恵泉女学園大学学長の大日向雅美さんに、子どもに伝わる叱り方について、話を聞きました。ポイントは4つあると言います。

画像(恵泉女学園大学学長 大日向雅美さん)

ポイント① 感情的はダメ 感情を込めて叱る
「過去やったことを引きずり出したり、『ロクな人間にならない』と言って未来を潰してみたり、友だちを出して比べ合い叱りをしたり、ネチネチ、これが感情的です。感情を込めて叱るというのは、『もうこれだけは許せないのよ、やめてね』と、思いを込めて。声を震わせて言う人もいるでしょう。思いが込められていることが大事なんです」(大日向さん)

ポイント② 現場を見ていない父は要注意
「お仕事でいないお父さんが妻から、『日中こんなことあったの、だからあなた叱って』と言われて、叱るパターンは子どもにとって一番いけないんです。子どもは子どもなりの言い分があるわけですよ。『お父さんは見てないだろ』って子どもは一番言いたいわけです。その不信感がある。それは避けなきゃいけない。『ママから聞いたけど、どうなんだ?』という切り出し方ならいいですよ」(大日向さん)

ポイント③ パーツで叱る
「叱るときには行動を叱ってあげてほしい。とってもいい子だっていうことはわかっているよっていうメッセージがまず大前提。『本当は君はいい子なんだけど、君がしたこの行動はよくないよ』っていう叱り方をしてあげてほしい。行動を叱らないで全人格を潰してしまうことがあるんです。叱るときはパーツで叱る」(大日向さん)

ポイント④ すぐに効果を求めない
「子どもの発達によって理解力もいろいろですから、1回で全部解決する問題ではないですよね。繰り返し、繰り返し言うことも必要。『許せないんだ』っていう切実なる思いをどれだけ子どもに伝えられるかなんです。お母さん、お父さんが震えるほど怒っていることを自分がしてしまったんだっていうことの、その記憶でいいんです。そこだけで留めておくべきです」(大日向さん)

そして、どう叱ればいいのか悩み、つい手を上げてしまったことのある保護者に、体罰を受けた子どもの脳を研究している友田さんはこう伝えます。

画像(福井大学子どものこころの発達研究センター 教授 友田明美さん)

「自分たちは子どもをお尻を叩いて育ててきた、もう手遅れではないかと思われるかもしれませんけど、大丈夫です。ちゃんと親と子の間に築かれる絆、愛着が形成されることによって、脳は十二分に回復していきます。褒めたり認めてあげたりすることで、お子さんの脳から神経伝達物質ドーパミンという、やる気の出る物質が出るんです。そのドーパミンの働きによって、子ども自身が意欲を持ち、集中力が増します。ですから、自信を持って褒めてください。そして、これからは叩いたり怒鳴ったりする子育てではなくて、楽しい子育てをしていただきたい」(友田さん)

親を悩ませる「子どもの叱り方」。条例で親を締め付け、「親」の規範を押し付けるのではなく、孤立した育児環境を見直し、社会全体で子育てできるような状況になることも求められています。

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※この記事はウワサの保護者会 2019年6月1日放送「シリーズ 虐待を防ぐには②~どう叱ればいいの?~」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。
※「#もしかして…虐待を考える キャンペーン」 詳しくはこちらのサイト

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