寝たきりで哲学好きの東大生、ゲイや全盲の弁護士、“イケイケ”車いす女子など、濃すぎるメンバーが、ちまたの話題についてエッジの効いたトークを繰り広げる「B面談義」。今回は元女子プロボクシングの世界チャンピオンという新メンバーも加わり、男性の育休や、盛り上がるラグビーワールドカップなどについて赤裸々トークをお届けします!
2019年8月、世間を驚かせた小泉進次郎衆議院議員と滝川クリステルさんの結婚発表。人気議員のおめでたい話題でさらに注目を集めたのが「育休取得」発言!実は現在、日本の男性の育児休業取得率はわずか6%。今回のニュースを機に状況が好転するのではと期待されています。
今回の新メンバー、真道ゴーさんは、体は女性、心は男性として生まれました。ゴーさん、実は、元女子プロボクシングの世界チャンピオン!現役引退後、性別適合手術を受けて愛する女性と結婚。今は二児のパパ。“女→男”パパの子育て事情について、語ってくれました。
「産まれてすぐは手伝わないと、と頑張って、仕事をしながら夜起きるんですけど、それも数日。疲れがたまり、泣いてる声も聞こえず、眠ったまま起きない。奥さんに寝てる写真を撮られて、朝嫌みを言われるみたいな感じですね…」(真道ゴーさん)
仕事をしながらの育児は、男性も女性も大変!
哲学とウィスキーを愛する東大生・愼允翼(しん・ゆに)さんは、「育休」という言葉に、そもそも矛盾があると…
愼さん「休みというのは何もしないことであって、仕事をしてるじゃんって。『育児ってすごい労働じゃん』って思ってて、この矛盾って何を意味してんのかな、と考えたときに、保育士さんや介護者が不足してると、よく言われるけど、育児や介護は、その人じゃなければダメだという、プロ性が一番発揮される仕事。労働としての価値は、僕は絶対高いと思うんだけど。そういうものを育休といっちゃう、労働としてなめられてるんじゃないかなと考えたりしますね」
千原さん「育児休業というのは、育児という労働をするめにこっちの仕事を休むということでしょうけどね」
愼さん「でも別の労働だから、ちゃんと仕事として意識するって大事かなって思ってます」
夫と“ラブラブ”のゲイの弁護士・南和行さんは、育児を性別で負担させるのではなく、人それぞれの役割があるのでは、と問いかけますが…
南さん「うちの家は男同士のカップルでしょ。未成年後見(※)っていうのをしてたときに、一緒に住んでいる若い子どもがいてたんです。だいたい家事も吉田(南さんの夫)がして、なんかあった時に呼び出されるのも吉田。だから僕が、どっちかだったら、なんもしないお父さんの役割を僕がしてたんだけど、なんでかその子は吉田さんの方を『お父さんぽい』って。僕が何やってたかというと、見たい映画を自分で見にいったら、自分のお小遣いが減るけど、子どもを誘って2人で行ったら、吉田さんに『映画つれてってあげることになったからチケット代2人分ちょうだい』って言って、お小遣いがへらないようにとか、そういうことしかやってなかった」
千原さん「どこかのお兄さん、というか、カツオのやり口やで」
南さん「だから、その家でのお父さん、お母さんの役割分担って、本当にその人それぞれなんですよね。だから『俺、男だけど育休とったぜ』『イクメンだぜ』って外へのアピールのために言うのは、かえって家の中のことやってない裏返しのように思えるんですけどね」
※未成年後見人 何らかの事情で親権者がいなくなった未成年者の養育や財産管理を代わりに行う人のこと
夫婦で全盲の弁護士・大胡田誠さんは、子育てをするときに色々な苦労があると話してくださいました。子どもがいたずらをする時はとても静かになるため、全盲の大胡田夫妻がそのいたずらに気づくことが遅くなることもあるといいます。子育てに限界を感じることがある大胡田さんは、近所に助けてもらうようにしているそうです。
大胡田さん「子どもの爪ってすごく薄くて小さくて、花びらみたいなんです。だから目が見えないと、あれを切るのってすごく難しいんですよ。で、ご近所のお母さんに切ってもらったんです。目が見えないと、してあげられないこともたくさんあるんだけど、その分、たくさんの大人が育児に関わってくれてるというのは障害のお得なところかもしれないな、なんて、そんなふうに思います」
続いては、9月20日から始まったラグビーワールドカップ!史上最強とも言われる今回の日本代表。強豪チームを相手に、どこまで突き進むことができるのか、その活躍に期待が高まっています。
ところで、大会の影響で意外なものが不足すると言われているのが、ビール!ラグビーファンのビールの消費量は、サッカーファンの6倍以上といわれています。今、飲食店はビールサーバーを増やしたり、「飲み放題」を取りやめたりするなど、対策に追われています。
ビール片手にラグビー観戦をする人たちが多くなる中、気持ちが開放的になることも。そんなお酒を飲む人たちに、全盲の弁護士・大胡田さんは言いたいことがあるそうで…
大胡田さん「私はあんまり飲まないんですけど、ビールって、人を開放的にしてくれますよね。昼間、白い杖ついて私が歩いてても、声かけられることはあまりないんです。だけど、夜の繁華街を歩くと、結構声かけてくれるんですよね。『お兄ちゃん、どこ行くんだい?』とか。ありがたいっちゃありがたいんだけど、言うても酔っぱらいなわけですよ。フラフラ道案内してくれるというか、むしろ僕のほうが支えて歩くみたいな(笑)。だから声かけてくれるのは嬉しいんだけど、しらふのときに声かけてくれても嬉しいぞ、と思いますね」
しらふのときにも、もっと声をかけてほしいという大胡田さん。声のかけ方は一工夫するといいと、“イケイケ”車いす女子の中嶋涼子さんがアドバイスします。
中嶋さん「『大丈夫ですか?』って言われたら、『大丈夫です』って返しがちだから、『何かお手伝いしましょうか?』って助かりますよね」
大胡田さん「ですよね。『大丈夫ですか?』なら、『大丈夫です』って言っちゃうよね」
続いてはさまざまな議論があった「表現の自由」について。
中嶋さん「私も障害者の性とか排便障害でウンコデーとか話すじゃないですか。それはいろんな人に障害者を理解してほしくて、結果いろんな反響があった。ユーチューブでも障害者の性について語った動画が300万再生ということは、障害者の性をタブー視していて、聞きたいけど聞けない人がいっぱいいたから、いっぱい見てくれたと思うんです。たとえばその動画が削除されちゃったらすごいショックですし、それは見たくない人は見なければいいだけで」
愼さん「ほんとにそのとおりだと思う。でも、障害者がいるだけで気持ち悪いって人もいるかもしれない。でも、いたからといって、われわれ町に出て行くし、生きていくわけです。ただ表現というのは、そもそも人を傷つける可能性というのが常にあって。でも、そのときに傷つけられたと思った側が自分の傷を見つめて、自分の弱さを振り返って反省して、強く生まれ変わるためのきっかけ、その勇気を作るようなきっかけじゃないといけないと思ってるから。だから、そういうものを排除するのは人間をどんどん病的にしていって、勇気というものを排除していくようなもんだなと思ってて」
弁護士になりたての頃、「品行方正である弁護士」のタブーに切り込もうとブログにストレートな下ネタを書いていた南さん。そのブログが表現としては「しょーもない」、と気付いたのはある裁判を担当したことがきっかけだっといいます。
南さん「ろくでなし子さん(※)という人の裁判に関わったことなんですね。ろくでなし子さんは逮捕されても、『私はべつに怒られるようなことはしてない。だから、やめません』と言ってる。その信念と、表現としての面白さがあるところを見たときに、結局僕はタブーに切り込んでると言いながら、ただの炎上狙いみたいなことをやって、自分のことを恥ずかしく思ったから、自分のブログはすぐやめたんだけど…」
※ろくでなし子さん 女性器をかたどった作品展示や3Dプリンターのデータ配布が「芸術」か「わいせつ」かを巡り裁判に。作品展示については無罪が確定。3Dプリンターのデータ配布については最高裁に上告中(2019年10月時点)
今回もバラエティに富んだ話題で熱~く盛り上がったB面談義。次回はどんな議論が繰り広げられるのか、お楽しみに!
※この記事は2019年9月30日(月)放送 ハートネットTV「B面談義#11」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。