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【特集】発達障害アバター大集合(3) グレーゾーン当事者が抱える生きづらさ

記事公開日:2019年11月06日

特性や傾向はあるものの、発達障害と診断されるには至らない「グレーゾーン」と呼ばれる人たちがいます。発達障害とは判断されず、一見、問題がないように見えますが、それぞれに悩みや生きづらさを抱えています。今回はグレーゾーンの当事者たちが仮想空間に集まり、アバターの姿になって思いを語り合いました。

グレーゾーン当事者の思い

ここ数年、徐々に発達障害のグレーゾーンに対する認識が広まり、当事者の団体も作られました。しかし、周囲の目を気にして、声を上げられない人がまだ多くいます。

そこで仮想空間にハートネットTVのスタジオを用意。グレーゾーンであることを周囲に明かしていない6人の当事者たちがCGアバターの姿で集まりました。匿名性を守るために本人とは違う顔つきにしています。

発達障害に詳しい児童精神科医の吉川徹さんもアバター姿で登場。吉川さんによれば、発達障害のグレーゾーンははっきりと定義しにくいものだといいます。

画像(児童精神科 医師 吉川徹さん)

「発達障害の1つ1つの特性に関して、強いほうからすごく薄いほうまでグラデーションだということが言えます。たとえば、診断の基準で、5項目当てはまれば診断ができるという場合、4項目とか3項目とかは満たしているが、それ以上ではないという方がグレーゾーンと判断される。ただ、グレーゾーンの見方自体はほかにもいろいろあるので、なかなか定義ができないということになります」(吉川さん)

画像(発達障害グレーゾーンを表すグラデーション)

明確な線引きが難しいグレーゾーン。当事者のみなさんはどのように考えているのでしょうか。

オムさん(30代)は、注意の欠如や衝動性の強さなど、ADHDの傾向があると病院から診断されています。

画像(オムさんのアバター)

「ADHDの、とくに不注意、そして衝動性の部分が強いなと感じています。あとは短期記憶が弱いので、人の名前を聞いてもすぐ覚えられなくて、何度か聞き返してしまう。結果的に、それは相手からすると、名前を覚えないということで、『私のことどうでもいいと思っているんでしょう』とか『馬鹿にしているんでしょう』とか誤解をされることはありますね」(オムさん)

げんぶさん(30代)は興味の偏りがある、対人関係が苦手など、ASDの傾向があると、セルフチェックで分かりました。

画像(げんぶさんのアバター)

「自分は対人関係にちょっと問題というか特性があって、好きな話だと興味を持つんですけど、特別興味のない話だと、気がほかに紛れてしまって、『ちゃんと話聞いてないだろう』とか言われたりします」(げんぶさん)

はっきりした診断が出ない まいこさんのケース

まいこさん(30代)は、複数の人との会話やテンポの速いやりとりが苦手だと病院から診断されています。仮想空間のスタジオでも会話に入りにくく、緊張している様子です。

画像(まいこさんのアバター)

「やっぱりこういう複数人での会話で入るタイミングというのがなかなかつかめなくて、いろいろ考えていてもパッと言葉に出せないようなところがあります」(まいこさん)

そんなまいこさんは、日常生活ではどんな生きづらさを感じているのでしょうか。普段の様子を取材しました。

関東近郊にある会社で事務員として働くまいこさん。昼休みになるといつも会社を抜け出して、1人でお弁当を食べます。

「自分の席で食べてもいいんですけど、(同僚たちが)近くで盛り上がっている声を聞くと、自分は何でああできないんだろうってさみしくなっちゃうので」(まいこさん)

複数の人とのやりとりや情報量の多い会話が苦手。会社でも同僚とうまく話せず、孤立しています。

「なんか自然に話せなくて。『一緒にいてもつまらない』って言われて。私は一緒にいないほうがいいのかなと思って。自ら距離を置いて離れていくようにして。『ずっとうまくいかないんじゃないかな』とか『生きていけるのかな』って絶望感に襲われて」(まいこさん)

まいこさんは、幼い頃から人の輪に入れずいじめも経験しました。なぜそうなるのか知りたくて、これまで6軒もの心療内科を渡り歩いてきました。

そして2019年6月、病院ではじめて発達障害の可能性があると指摘されました。まいこさんは、自分の努力不足ではなかったのだと安心したと言います。

画像(まいこさんの検査結果)

「ちょっとほっとしたような。ようやく原因が分かったのかもしれないって。自分をもう責めなくてもいいのかもしれないと思ったら、ほっとして涙が出てきました」(まいこさん)

特性を調べる検査では、抽象的な概念や速さを求められることが苦手だと判明。しかし医師の判断は「グレーゾーン」。会社に勤めて日常生活も送れていることなどから、「発達障害」とは認められませんでした。

障害者でもない、でも健常者でもない。自分が何者なのかますます分からなくなり、大量の本を買い込んで読み漁るようになりました。

画像(まいこさんが購入した大量の本)

「『はっきりしないけど生きづらさを抱えている』という自分と同じような悩みが書かれている本が多い。確かな証拠がないというか宙ぶらりんというか。いまだに『自分は何なんだろう?』って分からない状態が続いています」(まいこさん)

当事者を苦しめる「グレー」という曖昧さ

グレーゾーンという曖昧さが、大きな葛藤を生んでいる現実。まいこさんの様子を見て、当事者のみなさんはどう感じたのでしょうか。

「たくさん本を買われて、自己分析されていた姿はかつての自分とそっくりでした。そうやって自分を探し続けなければいけない状況に置かれていることにも、なんだかとても共感しました」(オムさん)

利一さん(40代)はこだわりが強い、対人関係が苦手など、ASDの傾向があると病院から診断されています。

画像(利一さんのアバター)

「目に見える形での障害の場合はいろんな人に理解されやすいんでしょうけれど、でもグレーゾーンの場合は、目に見えないことが多すぎるし、あと人に対してもなかなか説明できない、そういうもどかしさもありますね」(利一さん)

今回の仮想空間スタジオでは、一般のグレーゾーン当事者もインターネット経由で参加し、コメントボードへの書き込みをしてくれています。

「まさに『グレー』という言葉が象徴しているように、問題があるのかないのか微妙という体感をずっと感じていました」(観客席の当事者)

「甘えと認識されそうで職場では絶対言えないですよね」(観客席の当事者)

悩みや生きづらさを打ち明けたくても、理解されないのではないかという不安。2年前にグレーゾーンの人の当事者団体を設立したオムさんはこう話します。

「私は自分の経験のほかに、自分で会を運営しているので、いろんな人の意見を聞くことが多いのですが、やはり、特性によってつらいと感じる感情があっても、『それぐらい普通だよ』『誰しもあることだよ』『考えすぎだよ』『まじめすぎるから』と、否定される方が多いですね。これは家族や友人、もしかしたら医者とか行政でも同じで、だからあえて話さないという人もいるように感じます。私もそう感じたことはあります」(オムさん)

画像(仮想空間のスタジオの様子)

げんぶさんは、周囲との関係を考えて、診断をあえて受けていないと言います。

「診断を受けるのがちょっと怖いというのがありますね。診断を受けて、発達障害ということで、なんか白と黒ではっきりと分かれてしまうのが自分の中でちょっと怖いというのがあるので、曖昧なままでいたほうが気が楽でいられるというか、やっぱり周りからそういうふうに見られるとあんまりいいこともないので、そういうラベリングが怖いというのはありますね」(げんぶさん)

周囲に打ち明けることなく、1人で苦悩を抱え込んでしまうグレーゾーンの人たち。当事者が何に苦しみ、どんな助けを必要としているのか、より多くの声に耳を傾ける必要がありそうです。

【特集】発達障害アバター大集合
(1)自閉スペクトラム症とバーチャル空間
(2)自閉スペクトラム症のひとの困りごと
(3)グレーゾーン当事者が抱える生きづらさ ←今回の記事
(4)グレーゾーンの人が生きやすくなるには

※この記事はハートネットTV 2019年11月6日放送「シリーズ 発達障害アバター大集合 “グレーゾーン”のひと集まれ!」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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