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【特集】発達障害アバター大集合(2) 自閉スペクトラム症のひとの困りごと

記事公開日:2019年11月05日

人とのコミュニケーションが苦手だと言われている、自閉スペクトラム症。しかし、バーチャル空間のなかでは、チャットやアバターを利用することでコミュニケーションがとりやすくなるということがわかってきました。そこで当事者がアバターの姿で語り合う“オンライン当事者会”を開催。普段どんなことで困っているのか、どういう方法で対処するといいのか、さまざまな意見が交わされました。

自閉スペクトラム症の人たちが話しやすい空間とは?

バーチャル空間に、自閉スペクトラム症の当事者がアバターの姿で集まり、語り合う「オンライン当事者会」。

今回、オンライン当事者会の開催を目指してきた自閉スペクトラム症のこーさんと「ハートネットTV」が協力して、番組の中で初めての会を開いてみることになりました。

画像(こーさんのアバター)

バーチャル空間には、当事者会を開く場所を自由にデザインすることができます。こーさんは、自閉スペクトラム症の人たちにとって居心地のいい、話しやすい空間がどんなものなのか、デザイナーと一緒に検討しました。

「だだっ広い、誰でも入れるスペースというよりは、個人でいられる小さい隅っこがいっぱいあるような…」(こーさん)

SNSでも、当事者の皆さんに意見を聞きました。

画像(SNSでこ-さんに寄せられた意見)

「対面は苦手。どこを見たらいいかわからない」
「壁が白くて狭い部屋にいるとパニックになる」
「図書館的な本や机があると落ち着く」
「やっぱり隅っこがいいです」

さまざまな意見を取り入れて完成したのが、こちらのバーチャル空間です。

画像(完成したオンライン当事者会のバーチャル空間)

一見、広い図書館のようですが、ところどころに狭いスペースもたくさん用意されています。当事者の皆さんから寄せられた「隅っこが落ち着く」という意見を反映しました。

なかに入っていくと、他人との距離感が選べるように壁やテーブル、イスが配置され、本棚には本や花瓶などが並んでいます。頭上からは木漏れ日が降り注いでいます。

画像(空間を中から見た様子)

テーブルの足元には、青い円形のマークが取り囲むようにいくつも並んでいます。

「たくさんの人がいる場所だと、いつ、何をすればいいのかっていうのが、よくわかんなくて困っちゃうことがあるんですけど。こういう風にマークがついていれば、ここに立ってるときは話していい、とか、役割が明確になって話しやすいと考えて、このマークをつけました」(こーさん)

画像(テーブルの周囲に集められた青いマーク)

自閉スペクトラム症の人が安心して参加できるようにとの配慮が行き届いた、心地の良い環境。このバーチャル空間を見て、児童・発達が専門の精神科医・樋端佑樹さんはこう話します。

画像(樋端佑樹さんのアバター)

「選べるってことが大事ですね。それぞれ好きな環境は人によって違いますからね。僕はこんなのが好きだとか、こういう所が落ち着くんだ、というのも多様だと思いますので。そういうのを作っていくのも、楽しいことかなと思います」(樋端さん)

オンライン当事者会(1) 自閉スペクトラム症のひとの困りごと

さっそくオンライン当事者会が始まりました。司会はこーさんです。視覚情報でのコミュニケーションのほうが楽という方が多いため、会話はパソコンで文字を打つチャットで進められます。

話題は「困りごと」。1人1つずつ発表し、どう対処していけばいいか、アイデアを出しあっていきます。

まずは、9年前に自閉スペクトラム症の1つである高機能自閉症と診断されたすずさんです。

画像(チャットで表示されたすずさんの困りごと)

すずさん「職場で相談するにも、いちいち資料を用意しないとうまく説明できません。そのため相談を始めるまでに時間がかかりすぎます」

こーさん「時間がかかっても『正確に伝えるほうが誠実』だと思ったりもしますが、スピードを求められることもありますよね」

すずさん「仕事はなおさらそうだと思います」

こーさん「職場でのコミュニケーション、皆さんどうしていますか?」

この質問に答えたのが、ばばさんです。

画像(ばばさん)

ばばさん「私の場合はあえて“雑談”には入らないようにしています。ただ、仏頂面だとそれもどうかなと思うので、内容によっては表情だけ変えています」

この3月に自閉スペクトラム症と診断されたという藍色さんも、ばばさんと同意見です。

画像(藍色さん)

藍色さん「私もばばさんと同じです。人とコミュニケーションがうまくとれません。空気を読めない発言をしないように黙っていることが多いです」

ばばさん「藍色さん、共感してくださりありがとうございます^^」

続いて、ばばさんが困りごとを語り始めました。

ばばさん「私は職場でミスをしたときにパニックになってしまいます」

すずさん「同じく、私も困っています」

藍色さん「困ったときはどうするのか、が決まっていれば少しはマシになるかもしれません」

こーさん「私は、このバーチャル空間の個室のような場所を見つけて、まずは逃げます…」

そして、藍色さんの困りごとは家族とのコミュニケーションについてでした。

藍色さん「思っていることの言語化ができなくて、一番近い存在の主人にも困りごとを相談できません」

すずさん「せめてSOSだけでも発信できると、少しはマシにならないでしょうか?」

ボーっとした感じが自分らしいと、おばけのアバターを選んだという朋さんも、アドバイスを送ります。

画像(朋さん)

朋さん「身近な人に理解してもらえないとつらいですよね。カードを使うとかも手かもしれません」

ばばさん「精神科の先生から『相談内容をメモしてから受診してね』と言われ、それから困りごとをメモする習慣をつけてからだいぶ解決できました」

朋さん「ばばさん、それいいですね」

こーさん「私は、パートナーと週1で会議のような時間を作っています。スケジュールを確認したり、雑談したりと、些細なこともすり合わせができるようになってきました」

藍色さん「こーさん、いいですね」

朋さん「こーさん、それもすごくいいですね」

ばばさん「定期的に話す時間を作るのはいいですね!」

こーさん「よかったら使ってみてください!」

藍色さん「言葉に詰まってしまい、泣いてしまうというのがいつものパターンです。皆さんのご意見参考になります」

こーさん「すぐに解決策を見つけるのは難しいかもしれませんが、こうしてみんなで話すと共感できたり視点が変えられたり、励みになりますね」

オンライン当事者会(2) 客席からの相談

参加者によって活発に意見が交わされたオンライン当事者会。このバーチャル空間には、全国からたくさんのお客さんも自宅のパソコンからアバターで参加しています。

お客さんからも、困りごとについて相談がありました。

はるかなさん「コミュニケーションについて質問です。私は一度嫌悪感を持ってしまった人とうまく付き合うことが難しいです。皆さんはどのように気持ちを切り替えてますか?」

画像(スタジオのお客さんのアバター)

藍色さん「仕事上であれば割り切って仕事だけの付き合いをします。プライベートであればそっと離れていきます…。気持ちを切り替えるのは難しいですね。ひきずってしまいます」

朋さん「そうだなあ。。向こうもこちらを宇宙人とか思っているかもしれないし、こちらも苦手な相手を宇宙人と思うようにしています。異文化の人だからしょうがないと考えてみます」

がきんちょさん「観客席から失礼します。自分も、適度に距離をとることが多いですね。で、相手を変えようと執着しないことが大事だと思います」

朋さん「『相手を変えようと執着しない』っていうのは私も大事だと思います」

れんなさん「その嫌いな人が家族だと離れようにも離れられないですよね…」

はるかなさん「そうなんです。距離を置くことが難しい関係だったりすると割り切り方がわかりません」

藍色さん「私は家族であっても距離を置いています」

こーさん「第三者を入れて関係性を作っていくのもいいかもしれないですね。職場ならジョブコーチなどなど」

はるかなさん「『私はこう思うけど間違っているかも』という不安が常にあります。でも他の人の意見を聞いて、間違ってないと思えると安心します」

バーチャル空間が秘めた可能性

とても盛り上がったオンライン当事者会。参加した皆さんの感想を伺いました。

画像(オンライン当事者会の様子)

藍色さん「今日はこのような場に参加することができてよかったです。皆さん同じような困りごとや考えを持っていることを知れて安心しました」

すずさん「本番に弱くて、今回はうまく話せませんでした」

朋さん「インターネット経由で参加できる当事者会や自助グループがもっともっと増えたらいいなあと、ずっと思っていましたので、今日の開催はとても嬉しいです!」

ばばさん「オンラインという形で、当事者会を行うと、皆さんの意見を目で見れて、とてもいいですね」

こーさん「皆さんの発言の内容だとか反応がすごくキャッチしやすくて、コミュニケーションをとりやすかったです。こういった場を求めている方は多いと思いますので、また開いていけるように準備していきたいと思っています。」

オンライン当事者会に参加した精神科医の樋端さんは、バーチャル空間にはいろんな可能性があると話します。

画像(樋端佑樹さんのアバター)

「困りごとに対してアイデア出しあうというのは、気づきと癒やしを得られますよね。自分の部屋で、居心地の良いところから参加できるっていうところもありますし。こういうバーチャルと組み合わせるとまた違った展開が生まれる感じですね。あと不登校の方、ひきこもりの方なんかにもいろんな可能性があるかな、と思います」(樋端さん)

コミュニケーションに困難を感じる人にとって新たな可能性を秘めたバーチャル空間。今後の発展が期待されます。

【特集】発達障害アバター大集合
(1)自閉スペクトラム症とバーチャル空間
(2)自閉スペクトラム症のひとの困りごと ←今回の記事
(3)グレーゾーン当事者が抱える生きづらさ
(4)グレーゾーンの人が生きやすくなるには

※この記事はハートネットTV 2019年11月5日放送「発達障害アバター大集合 自閉スペクトラム症のひと集まれ!」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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