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介護が始まったばかりのあなたへ(2)介護で倒れないために

記事公開日:2019年10月29日

介護が始まったばかりのあなたに向けて「後悔しない介護をするために知っておくべきこと」を、専門家に聞くシリーズの第二弾。今回は、介護する側が倒れないようにするために、多くの人が悩む問題への対処法と、「自衛」するためにどうすればよいかを、NPO法人UPTREE代表の阿久津美栄子さんに伺いました。

かかるお金は「親の財産から」が基本

介護にまつわる相談に来てくださる方々の二大お悩みは「お金」と「家族」についてです。

まず介護にまつわるお金は、親自身の財産から出すことが基本です。よかれと思って子どもがお金を出そうと思いがちですが、親自身の財産から出せる範囲でやりくりしていくほうが、結果的にうまくいくものです。

また、介護を主に担当する人に、他の兄弟が金銭的にサポートするなどでうまくいくケースもあります。介護のスタートラインに立ったばかりで、目先のことに必死だとは思いますが、そうしたお金のことをきちんと決めておくことで、後々に揉めないようにすることが大切です。

画像(NPO法人UPTREE代表の阿久津美栄子さん)

たとえば介護に関わる経費は、介護者が立て替えることが多いですが、年月を経ると金額も大きくなりがち。そして、介護保険で賄えるものばかりでなく、親の資産から持ち出しになることもあります。そうした出入金は、記録を残すことをお勧めします。それにより、兄弟や親族とのトラブル回避にもつながります。

そして介護には、家族間のコミュニケーションがとても大切です。誰が主たる介護者となるのか、兄弟でどう助け合うか。お金の問題も含めて、家族間でよく話し合っておくことは、介護のゴール、つまり死別を迎えてから後悔を残さないためにも重要となります。

倒れないための「自衛」 サービスの利用

誰にとっても、仕事や子育てをしながらの介護は大変なものです。介護する側が倒れないために、「自衛」することをお勧めしています。

在宅で介護をしている人はさまざまな介護サービスを利用できます。
自分でなんでも背負いこまずに、施設に通うタイプの通所介護(デイサービス)や、自宅で受けられるサービス、宿泊するショートステイなどを上手に活用しましょう。とくにショートステイは介護する人の「レスパイト(休息)」に非常に役立ちます。

ショートステイは、大きく分けて短期入所生活介護と短期入所療養介護の2つがあります。
短期入所生活介護は、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどの介護老人福祉施設で受けられる、宿泊できるデイサービスのようなもの。もうひとつの短期入所療養介護は、介護老人保健施設や介護療養型医療施設で受けられ、リハビリや医療ケアなどの医療サービスを受けられるショートステイです。

「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービス

画像(施設に通う、通所介護(デイサービス)・通所リハビリ(デイケア)・通所介護※地域密着型・療養通所介護・※地域密着型・認知症対応型通所介護※地域密着型。自宅で受ける、訪問介護(ホームヘルプ)・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリ・夜間対応型訪問介護※地域密着型・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ※地域密着型。宿泊する、短期入所生活介護(ショートステイ)・短期入所療養介護。)

※地域密着型は施設やサービス事業所と同じ市区町村に住む住民の利用が基本となります。
※サービスの詳細、費用の目安はテーマ別情報・窓口の「介護・リハビリに関する相談窓口・支援団体」に記載の厚生労働省「介護サービス情報公表システム」をご参照ください。

また、通い、宿泊、訪問を組み合わせた、『小規模多機能型居宅介護』や『看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)』もあります。

「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービスをうまく組み合わせて、できるだけ介護以前の生活スタイルを続けるようにしましょう。先に紹介した介護手帳などに自分のスケジュールを書き出すことで、自分の時間を確保しやすくなります。

自分の「居場所」づくり

趣味やプライベート、悩みを共有できる人との会話などは、介護によって孤独に陥ったり疲労をためがちな介護者にとって大切な“自分の居場所”になります。私自身がそうでしたが、それが“仕事”となる場合もあります。ですから、仕事をお持ちの方は、ぜひ続けていただきたいと思います。ただ、子育てと仕事の両立には会社の理解や家族の協力も欠かせません。状況を開示して「助けて」と言える勇気を持ちましょう。

自分の居場所としては、介護者同士の情報交換の場として設けられた「介護者サロン」の存在があります。

私たちが立ち上げた「ケアラーズカフェ」にも多くの方がいらっしゃいます。初めて訪れた介護者の方は必ずと言っていいほど、こわばった顔でいらっしゃるもの。私たちは、スタッフ2名が同席し、その方のお話をしっかりと傾聴します。アドバイスなどは何もしませんが、話すだけ話すと、その方は自身の中で答えを出し、そして笑顔になります。そうした中で、その方はステップアップされ、介護を続けていかれます。

画像(ケアラーズカフェ)

また「介護手帳」に続いて、LINEによる情報提供もスタートしました。
そこでは、ロードマップの紹介や、「まずすること」をわかりやすく説明しています。私自身、かつての介護の経験を振り返り、こうすればよかったという思いはあります。「後悔しないために」をキーワードに、現在、介護をなさっている皆さんのサポートをしていきたいですね。

画像(UPTREEがスマートフォンアプリ内で提供するサービスの画面)

介護が始まったばかりのあなたへ
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※この記事はハートネットTV 2019年2月6日放送 ハートネットTV「平成がのこした“宿題” 第6回『超高齢社会を生きる』」に関連して取材したものです

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