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働く場は企業だけじゃない 障害者の就労

記事公開日:2018年04月16日

いま全国には働くことが可能な年齢の障害者が300万人以上いると推測されています。そのうち一般企業に雇用されているのは約50万人。それ以外の方たちはどうしているのでしょうか。今回は、多くの障害者が従事する、もうひとつの働き方、「福祉的就労」についてご紹介します。

一般就労と福祉的就労

「一般就労」とは、企業や公的機関などに就職して、労働契約を結んで働く一般的な就労形態です。それに対して、そのような働き方が難しい障害者の就労を総じて「福祉的就労」と呼んでいます。

「一般就労」と「福祉的就労」の大きな違いは、障害者の職場における位置づけです。

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一般就労においては、経営者の指揮監督のもと、定められた勤務時間に出社し、命じられた業務をこなすことが求められます。要求される仕事量がこなせなかった場合は、給料を減額されたり、叱責されたりすることもあります。主体はあくまでも経営者側にあります。

一方、「福祉的就労」においては、労働はあくまでも福祉サービスや訓練の一環です。出欠、作業時間、作業量などは、利用者の希望によって定められます。要求された仕事量を達成できないからと言って、経営者がペナルティを与えるような指揮監督は許されていません。

福祉的就労の場では、障害者は「労働者」と「福祉サービスの利用者」という二つの顔をもつことになります。

かつては、授産施設、福祉工場、小規模作業所(共同作業場)などが福祉的就労の代表的なものでした。しかし、このような福祉的就労の場は、2005年の障害者自立支援法によって再構成され、授産施設と福祉工場は「就労移行支援事業」と「就労継続支援事業」に、小規模作業所の一部は「地域支援活動センター事業」に組み込まれました。

2つの就労継続支援事業

企業とは違う働き方で、障害者が収入を得ることのできる事業は「就労継続支援事業」です。「就労継続支援A型事業」と「就労継続支援B型事業」の2種類があります。

A型とB型の大きな違いは、「雇用契約の有無」です。A型事業には雇用契約があって、毎月定められた賃金が支払われますが、B型事業には雇用契約はなく、行った作業に対する工賃だけが支払われます。

A型事業とB型事業の比較

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※A型事業は、原則的には、各都道府県で定められた最低賃金を支払わなければなりませんが、減額特例が認められていて、平均賃金はそれを下回っています。

就労継続支援A型事業所のメリット・デメリット

「就労継続支援A型事業所」は、一般の企業に雇用されることが困難な障害者に対し、「働く場」を提供する事業所です。実際の業務や職業訓練を通して、知識や技能を身につけ、最終的には一般就労を目指すものです。

〇メリット
・フルタイムで働けば、「固定給」として、地方自治体が定める最低賃金以上の収入を原則的に受け取ることができる。
・一般企業と違って、支援者がつねに職場にいて、無理な働き方を強いられることはなく、仕事をすることができる。
・一般市場で流通するような商品の生産やサービスを提供する事業所では、一般就労に近い技能やノウハウを学ぶことができる。キャリアアップが達成されれば、一般就労への移行についても支援を受けることができる。
・経営者が積極的であれば、事業の拡大に寄与することもでき、仕事を通じての成長を実感できる。
・雇用契約により、労働基準法や最低賃金法などの労働関連法規が適用される。

〇デメリット
・事業所の質によるバラツキが大きい。
・雇用契約によって、従業員に固定給を払わなければならないので、事業者の経営能力によっては、経営破たんして、突然働き場所を失う可能性がある。
・従業員がフルタイムで働くと人件費がまかなえないために、本人が望まないのに短時間勤務を強いられる場合もある。
・福祉に詳しく、障害者にとって心地よい職場をつくれることができても、経営のノウハウをもたない事業者も多く、適材適所の発想ではなく、一律に単純作業に就かされるなど、一般就労をめざす障害者のキャリアアップにとって物足りない職場もある。
・本来、本人が望めば一般就労への移行を支援しなければならないが、経営上の都合から能力の高い障害者を、生産性を支える柱として、囲い込んでしまう事業所もある。
・福祉サービスの提供を十分行わず、補助金を搾取するような悪質な事業所も存在する。

就労継続支援B型事業所のメリット・デメリット

「就労継続支援B型事業所」は年齢制限もなく、職業的に高い能力を求められることもなく、福祉サービスを最優先する職場です。従来の授産施設がそのまま移行したものがほとんどで、主に社会福祉法人が運営に当たっています。

〇メリット
・体力的に職業生活を送るのが難しい重度の障害者でも働ける可能性がある。
・年齢制限がないので、高齢の障害者でも利用することができる。
・福祉分野での経験が長い専門的なスタッフが多いので、支援の面で安心できる。
・収入を得るのは難しいが、アットホームで障害者の日中の居場所として利用されているケースも多い。
・仕事に合わせて業務が発生するのではなく、利用者の能力に合わせた仕事を確保するので、経営が破たんする心配は少ない。

〇デメリット
・工賃は極端に低く、生活を補助するだけの収入を得ることはできない。交通費などを差し引くと、マイナスになるようなケースもある。
・「固定給」ではなく、「出来高払い」のところも少なくない。
・経営者側の収入は福祉サービスに対して支払われるので、収益とかかわりなく安定していて、事業拡大へのモチベーションが生まれにくい。
・営業力が弱いために受注先を得るのが難しく、仕事を安定して供給できない場合もある。
・単純作業が多く、キャリアアップを望むのが難しい。
・労働基準法や最低賃金法などの労働関連法規が適用されない。

A型事業所 B型事業所 それぞれの課題

A型事業所の事業者には、福祉サービスを提供するだけではなく、収益事業を展開できる経営的な能力も求められます。A型事業所の原型となる福祉工場は2002年には全国に107か所しかありませんでしたが、A型事業所は2017年時点で3630か所と飛躍的にその数を増やしています。増加の理由としては、社会福祉法人以外の株式会社などにも、運営を拡大したことが上げられます。

従来の障害者の働く場のイメージを一新するような画期的な事業所が誕生している半面、補助金頼みの安易な事業者の参入によって、破たんする事業所が生まれるなど、質的なバラツキが多いことが、現在、課題視されています。
(※記事『食い物にされる福祉 障害者はなぜA型事業所を解雇されたのか』でも取り上げています。)

一方のB型事業所は、工賃が極端に低いことが課題となっています。厚生労働省はB型事業所の収益性を高めるために、2007年から11年まで「工賃倍増5か年計画」を、2012年から14年までは、「工賃向上計画」を実施し、収益向上をめざしてきました。しかし、2000円から3000円レベルのわずかな増加は見られますが、まだ十分に効果は上がっていないのが現状です。

参照:『詳説障害者雇用促進法 新たな平等社会の実現に向けて』(永野仁美、長谷川珠子、富永晃一編)

いかがでしたか。今回は、企業以外の“働く場”で、障害者が収入を得ることのできる「就労継続支援事業」についてまとめました。
「障害者総合支援法」のもとで福祉サービスの一環として実施されている「就労支援事業」には、「就労移行支援事業」というものもあります。こちらは、2年の期間限定で、一般就労への移行をめざすトレーニングの場であり、賃金が支払われることはありません。
「就労移行支援事業」については、また別の機会に詳しく取り上げさせていただきます。

執筆:Webライター木下真

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