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子どもの「相対的貧困」 食い止めるには

記事公開日:2019年05月16日

平成の30年間を通して格差が広がり、貧困が固定化するなか、今、7人に1人の子どもが「相対的貧困」の状態にあると言われています。貧困の社会的連鎖を食い止めるには、どうすればよいのでしょうか?貧困の連鎖を食い止めようとする取り組みから、問題解決に何が求められるのかを考えます。

貧困の社会的連鎖 その背景

食べるものにも事欠くような絶対的貧困とは異なり、一見すると分かりにくい相対的貧困。そのため、多くの子どもたちが豊かに生活できるようになるなかで見過ごされてきました。相対的貧困によって教育の機会を制約される子どもたちがいるという状況を放置してしまうことで懸念されるのが、「貧困の社会的連鎖」です。

「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークの世話人でもある沖縄大学教授の山野良一さんは、貧しさは自己責任によるものではなく、そこには社会的な構造の要因があることを説明します。

画像(沖縄大学 教授 山野良一さん)

「私たち研究者が、必ずこの問題を考える時に社会的連鎖っていう風に『社会的』とつけてほしいって言うんですけど。この連鎖は決して、必ずつながっていくわけではないんですね。逆にこのつながりを薄くするために教育制度があるわけだし。子どもに対する社会保障の制度があるんだと思うんです。そこらへんが日本の状況がどうかってことが問われてると言う意味で、社会的という意味なんですね」(山野さん)

子どもだけでなく親も支援するWACCAの取り組み

貧困の社会的連鎖を食い止めるには、どうすればよいのでしょうか。

神戸市にある「WACCA」では、経済的な事情で塾に通えない子どもたちに、ボランティアが無料で勉強を教えています。利用者のほとんどがシングルマザーの家庭で、その多くは非正規雇用です。

WACCAでは、母親たちがよりよい条件の仕事につくための支援も始めています。高齢者施設で働きながら子どもを育てている坂本さん(仮名)は、介護福祉士の資格を取ろうと、この場所で勉強しています。現在の月収は10万円ほどですが、資格を取り正社員になれば、月収が数万円増える見込みです。

画像(資格取得のためにWACCAで勉強する坂本さん(仮名))

「今さらそういう資格を取る?とか、なかなか応援してもらえる機会っていうのは少ないんですけど、ここは、なんかお母さん資格を取るんだって?みたいな話になって、いいよ今取っときなー、頑張って取りなーみたいな感じで、すごく応援をしてもらえるので自分のやる気を起こさせてくれる」(坂本さん)

WACCA代表スタッフの茂木美知子さんは、母親が将来に希望を持てることが子どもにも良い影響をもたらすと考えています。

画像(WACCA代表スタッフ 茂木美知子さん)

「子どもって、実は親が自分のことをすごく可愛がってくれるし面倒を見てくれるけど、負担になってるんじゃないかとか、そういう風に思ってる所もあったりするんですよね。すごく気をつかったり。でも、お母さんが自分のやりたいことをやったということを間近に見られるのは、やっぱり子どもにとって、とても良いことかな」(茂木さん)

WACCAでは、一人一人の状況に合わせた就労準備の支援も行っています。夫のDVによる離婚後、息子を育てるために働いていた加藤さん(仮名)。WACCAに出会ったのは、精神状態が不安定になり、仕事を辞めた頃のこと。ここで徐々に元気を取り戻し、少しでも働きたいと希望するようになった加藤さんに、茂木さんは、短時間のアルバイトとしてリサイクルショップを紹介しました。

画像(茂木さんと加藤さん(仮名))

「離婚したての頃はやっぱりなんか、自分だけ置いていかれるような感じと言うか、もう世間となんか全然違う空間におるようになってしまったから。(アルバイトの)2時間でも外におることで、子どもにも良いし、自分にも良いし」(加藤さん)

加藤さんは今後、少しずつ働く時間を増やし、子どもの受験の費用を作りたいと考えています。

子どもの貧困削減へ 求められる経済的支援と地域支援

こうしたWACCAの取り組みを、全国ネットワークの世話人でもある沖縄大学教授の山野さんは高く評価します。

「子どもの居場所、子どもの学習支援だけじゃなくて、親御さんたちも、家族丸ごと支援をしようとしている。親御さん同士もつながっていってるし。親御さんの居場所にもなってるってことなんですよね。本当に素敵だと思います」(山野さん)

一方で、国も対策に乗り出しています。平成26年に子どもの貧困対策に関する大綱を決定しました。教育の支援、生活の支援、保護者の就労支援、そして経済的支援というその4つの骨子について、山野さんは次のように指摘します。

画像(子どもの貧困対策に関する大綱)

「この大綱を順番通りに大事だと国も言ってるんですね。見ての通り、経済的な支援っていうのは一番後回しなんですね。ところが日本っていうのは、例えば児童手当の額も先進国に比べると非常に少ないので。先ほどの児童扶養手当の問題を含めて、そうしたことも、もう少し進めていくべきじゃないかなと、私は考えます」(山野さん)

さらに今後は貧困率についても国として削減目標を立ててほしいと訴える山野さん。これからは地域での支援が求められていることを指摘します。

画像(沖縄大学 教授 山野良一さん)

「孤立の問題があると思うんです。昭和の時代は地域がまだまだ生きている時代で、親族の支援もあった。ところが平成になって、地域の中で子どもたちの姿は見えなくなってきています。そういうなかで、地域がもう少し支援ができるようにしていかなければいけないと思うんです。それを後押しするのが、市町村の役割だと思うんですね。まずは市町村が、子どもの貧困をどんなふうに発見していくのか、対策をしていくのか、さっきのWACCAのような団体を支援していくのか、そういった計画を打ち出していく。それをこの大綱のなかでも義務化させることが、1つは必要なんじゃないかなと思っています」(山野さん)

現在、国はこの大綱の見直しを検討しています。大綱の決定から5年が経ち、見えてきた課題をどう生かしていくのか、模索は続きます。

※この記事の前編はこちら(『平成がのこした宿題「子どもの貧困」~なぜ見過ごされてきたのか~』)で読むことができます。

※この記事は2019年2月5日(火)放送のハートネットTV 「平成がのこした宿題5 子どもの貧困~連鎖どう食い止めるか」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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