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【特集】子どものSOSの“声” (3)保護された後

記事公開日:2019年05月14日

今年2月、国連子どもの権利委員会は、日本の児童福祉のあらゆる場面で子どもの意見が尊重されていないと勧告しました。それは児童養護施設や里親の元などで暮らす子どもたちについても言えることです。親の不在や虐待などによって「保護」された後、子どもたちはどのような思いでいるのでしょうか。保護された経験のある若者たちに、経験や本音を聞きました。(これまでのシリーズについてはこちら→ 【特集】 子どものSOSの“声”

保護された後の子どもたちの声

「私が保護されたのは10歳のときでしたが、自分の希望を聞かれたことは一度もありませんでした。急に養護施設に行くことになった私は、高校生くらいの頃に里親制度を知りましたし、その頃には遅く、改めて特殊な環境だったのだと思います」(千代さん 30代)

「面と向かってなかなか思っていることは言えませんでした。里親さんから追い出されるのではないか、そう思うと感情を捨てることで何も感じないようにし、耐えていました」(めいさん 20代)

NHKみんなの声「児童養護 あなたの『声』に耳を傾けてくれる大人はいましたか?」より

児童虐待や親の不在などにより、児童養護施設や里親の元などで養育される社会的養護の子どもたちは、いま全国に4万5千人います。家庭で養育が困難とされた場合、子どもがまず過ごすのは一時保護者や民間の委託を受けたシェルターなどです。

画像(さまざまな保護施設)

期間は原則2か月以内で、安全を確保するため、外部の接触が制限され、原則学校には行けません。その後、家庭に戻れない場合は、児童養護施設や里親、自立援助ホームなどへ行くことになります。本来、この時点で選択肢が示されて、子ども自身が意見を言えることが望まれます。また、施設などに移ってからも、意志が尊重されることが理想です。

しかし、実際はどうなのでしょうか。保護された経験があり、当事者として発信する活動をしている若者たちに話を聞きました。

一時保護所では?

集まってくれたのは、幼い頃、親の不在や虐待などで保護された経験のある5人。
ブローハンさん(27)、昌子さん(26)、万里さん(23)、弥生さん(仮名・25)、愛夢さん(仮名・20)です。

保護されたあとも、自分の意見を聞いてもらえず、不安な日々を過ごしたと言います。最初に過ごす一時保護所では自分の意見を聞いてもらえたのでしょうか?

画像(万里さんとブローハンさん)

ブローハンさん「そもそもしゃべれないもんね」

弥生さん「しゃべれないし、職員さんもしゃべりかけてこないから、しゃべっちゃいけない場所なんだなって」

愛夢さん「そう、しゃべっちゃいけない場所って思ってるじゃん。でも、何かあるんだったら夜中に話しかけてくればいいのにみたいに言われて。でも、夜中しゃべっちゃいけないって言われてるし」

画像(弥生さんと愛夢さん)

弥生さん「職員室に夜中の時間しか自由時間がないから、泣きながら私、『家に帰りたいです』みたいな。『こんなところに高校も無断欠席になってて、つらい、不安だ、どうやって人生に責任取ってくれるんだ』みたいなのを泣きながら言いに行ったら、『今、お前泣いてる時間じゃないだろう。今寝る時間だから布団に戻れ』とか。私がお風呂1週間入れなくて、『体かゆいよ、帰りたいよ』って言ったら『はい帰りたいって言った、帰す』みたいな」

ブローハンさん「預けられた一時保護所があまりにもひどすぎて、自分の家がまだましだって思うから、帰りたいってなったけど、その声、聞いた言葉だけをうのみにされてて、本当はどうだったのっていう、さらにその奥を拾ってくれなかったよね」

弥生さん「そうだね」

一時保護所を出た後は?

母親から虐待を受け、16歳のときに保護された愛夢さんは一時保護所を出るとき、十分な説明を受けなかったと言います。

画像(愛夢さん)

入所から10日が経ったある日のことでした。

愛夢さん「私は、一時保護所のときに、福祉司が来たときに、里親と施設どっちがいい?って聞かれて。ほいって来た人に、全部荷物持って、って言われて、全部荷物持って外出て」

ブローハンさん「それが里母?」

愛夢さん「違う、それは児相の福祉司。え、私は何をするんだろう、みたいな。どこに行くかもわからない状態で、電車乗ろうとして電車来たときに『猫平気だっけ?』って言われて」

ブローハンさん「よく覚えてるね、そんな会話」

愛夢さん「え、だってビックリしない? いや、これ『平気じゃない』って言ったら、また同じとこに戻されんの?みたいな。それで知らない家に着いて『今日からここがあなたの家だからね。ここ里親さんの家だから』みたいな。結果を聞く、なんか勝手に決められて報告される、みたいな」

一時保護所を出たあと、児童養護施設や里親の元では自分の意見を聞いてもらえたのでしょうか?

画像(昌子さん)

昌子さん「なんか、ボックスとかもあるじゃん、声を入れてください、みたいな」

万里さん「テレビとかでしょ、ゲームとかでしょ。寝る時間とかも言いましたし。聞いても『うん、じゃあ話しとくよ』みたいな感じで終わっちゃう」

愛夢さん「『へぇ、そうなんだ』みたいな、聞き流す感じだったから、もう話す気もなくなっちゃった」

施設や里親の元で暮らす子どもには、児童相談所の担当者が定期的に訪問し、話を聞きます。しかし実態は異なります。

昌子さん「全然、(担当者が来ることは)なかったな。私は長かったけど、(人が)変わるから。1年に1回とか半年とか」

万里さん「来るたびに人が違う」

昌子さん「お菓子を持ってきてくれる人と思ってた」

万里さん「その人が何をできるのか。どこまでできるのか。児童相談所の人に施設の話を聞かれて、そこで、『施設のここがこうで』とかってちょっと言いづらかったかな。自分の話した内容が結果的には回って、その職員さんにいっちゃうから」

画像(万里さんとブローハンさん)

昌子さん「言っちゃうんじゃないかって、不安があったってこと? まあでも、言われちゃうかもって思うよね」

愛夢さん「疑うよね」

昌子さん「重要な話し合いをしたことがないかも」

愛夢さん「重要な話し合いは全部大人たちの中で決められちゃうんだよ」

昌子さん「重要な話し合いを人生で経験したことない。私のときは、『はい出るしかない、はい中学校、はい高校は行かない、はいもう1人暮らし、はいどうしますか』みたいな。選択肢はないから」

ブローハンさん「こういうことやってみたい、ああいうことやってみたいっていっても、結局返ってくる言葉って、現実的な話か、ふわっとした話しか返ってこないから、わかりづらいものが返ってきて、自分の将来像がわかんない状態で、決定権というか、そもそも選択肢がよくわかんない状況だった気がする」

子どもの声を聞き取る仕組みの課題とは

18歳まで児童養護施設で暮らし、現在は社会的養護の当事者団体で副代表を務める中村みどりさん。社会的養護の子どもの多くが、自分の意見を十分言えてこなかったと考えています。

画像(社会的養護の当事者団体 副代表 中村みどりさん)

「私が育った児童養護施設のときも、言っても無駄だと諦めていたとか、自分の進路選択に意見を聞いてもらえるということはほとんどなく、決められたレールの上を歩いていくみたいな、すごく受け身だったなぁと感じました」(中村さん)

意思決定の場にすら入れない、選択肢も提示されない子どもたちの現状。なぜ、これほど子どもたちの声がかき消されてしまうのでしょうか?

「理由は2つあるかなと思っていて、1つはやはり職員数が十分ではないということだとか、その中で時間が限られている、子どもたちにしっかり関わるということが難しいという状況があるかと。もう1つは、子どもたちが例えば里親に行きたいと言っても、子どもたちの希望や意見を聞いて、その希望に添った形の里親さんの受け皿というのが、今の状況では十分ではないというところがあるかと思います」(中村さん)

子どもの声を保障する仕組みについて研究している栄留里美さんは、子どもの声を聞き取る仕組みがもつ課題について指摘します。

画像(大分大学 助教 栄留里美さん)

「児童相談所に対して不服があった場合に意見を申し立てる児童福祉審議会という仕組みや、あるいは第三者委員といって、児童養護施設などに、施設長が任命して置かれている第三者の立場の仕組みなど、さまざまありますが、子どもたちからあまり知られていないという問題があるかと思います。例えば、措置に対して申し立てる児童福祉審議会の私どもの2017年の調査では、要保護児童が9万人いると言われていますけれども、子どもからの相談が5件しかなかったので、ほとんど機能していないのではないかと考えています」(栄留さん)

せっかくの子どもの声を聞き取る仕組みも、子どもに知られていないことによって使われていない現状。子どもの声を保障するための対策が求められています。

【特集】子どものSOSの“声”
(1)大人が聴き逃さないために
(2)子どもたちを保護する活動
(3)保護された後 ←今回の記事
(4)「アドボケイト(代弁者)」という考え方

※この記事はハートネットTV 2019年5月14日放送「シリーズ子どものSOSの“声”(2)『意思を尊重するために』」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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