「障害者雇用をもっと実りのあるものにしたい!」と始まった「ブレイクスルー2020→ 障害者雇用 もっと両思いを増やそう!プロジェクト」。1年にわたるプロジェクトで障害者雇用のノウハウを集積させ、両思いになれた企業と障害者も。でも、その次に大きな壁となるのが、「働き続ける」こと。番組に寄せられた「みんなの声」には、働く現場でのお悩みも数多く寄せられていました。
そこで、プロジェクトで紹介できなかった声と向き合うための「LIVE相談室“チエノバ”」で、みなさんの声に耳を傾けました。声にこたえるのは、プロジェクトでおなじみの“スパルタ塾”の久保修一さん。生放送では、お伝えできなかったそれぞれの悩みに対して、具体的なアドバイスをいただきました!
久保さん:
厚労省が策定した「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」に、「情報を管理する者の範囲を必要最小限に限定する」という文言があるんです。だからこの会社がしているのはガイドラインに沿っていることになります。ただ、現場で一緒に働く人たちが知らないと、もめる場合もよくあるので、管理者以外でも配慮が必要な時はどこまで開示するかを本人と話し合うべきことなんです。
さらにこういう案件は、会社からは持ちかけにくいので本人から上司に言うことが大切なんです。そのときに大事なのは「わかって!」「あの人にも開示を!」という漠とした主張ではなく、あくまで、自分が働く上で必要な“配慮”として相談すること。自分がどんな配慮をどの人にしてほしいからこの人には開示してほしい、という伝え方をすればうまくいくはずです。
ガイドラインには「障害者雇用状況報告のために取得した情報を、他の目的のために本人の同意なく利用してはなりません」と書かれていますから、ポイントは本人が同意するという意思表示です。
また、会社側も障害者に対して利用目的を明示し同意を得ていなければならないのですが、その時に「障害者本人に対する企業の支援策」として情報を使う旨 説明して同意を得ておくと配慮に向けた話し合いがスムーズになります。
久保さん:
「上司が変わると困るから 上司を変えないでほしい」という心情は理解できるのですが、会社では無理な話。このケースの場合「伝わってるはず」とありますが、おそらく引き継がれていないですね。あまり知られていないと思うんですが、引き継ぎについて、ガイドライン上で情報管理者の守秘義務や個人情報保護法の取扱いが厳しく決められています。つまり本人の同意がいるということ。
会社は、義務ではないんですが、異動前に上司が本人と話して、何をどうやって引き継いでほしいのか、ヒアリングをした方が良いですね。ただ働く現場では、業務の引き継ぎでいっぱいいっぱいで出来ない場合が多いと思います。だから、このようなケースでは、改めて新しい上司に相談したほうが良いですよね。その際、前の上司が何についてどう配慮してくれたから“びっくりするぐらい”続いていたのかを考えてみてください。「何についてどう」配慮すればいいかが明確になっていれば新しい上司も理解しやすいですね。
久保さん:
もしかすると、ポーラさんはASDとADHDがあると書いてあるので障害の特性上、自分がやりたくなくても「やります」「出来ます」と自分で申し出ている可能性が高いですね。そういう場合は、その特性も合わせてもう一度説明して、自分も対処法を考えつつ、同僚とのやりとりの積み重ねが必要かもしれません。ポーラさんの言葉が場合によっては本音か、そうじゃないか、という感覚を同僚の人が築き上げていくしかないですね。始めは「本当にできるの?」と何度も確認する。そうしていくうちにわかってくるはずです。
もうひとつ考えられるのは、そういう特性じゃなくて、仕事が出来るからどんどん任されちゃう場合もあります。それは良いことでもあるんですが、任されることが多くなることによって、パンクしそうになるのならば、「言いましたよね」と、もう一度言って相談をする。このやりとりを何度も重ねていくしかないですね。また、出来るけれども本当に仕事を増やされているようなら、昇級交渉もありですね。
久保さん:
実は、一般雇用でも合理的配慮は得られると判例によって明確になっているんです。だからこの人も、仕事をしやすくするための配慮ならば求めて、合理的であれば会社は応じなければいけません。ただ会社側から提案することはないので、配慮を提案したい場合は自分から相談することが必要です。
中には、実際には採用されづらいことを心配して障害を明かさずに就職して、困難が多くなってきたときに開示することもよくありますよね。会社は障害があるという理由で解雇することはできません。その場合、よく陥りがちなのは「つらい」「大目に見てほしい」とただ免罪符として障害を開示すること。伝え方としては、「こうこうこういうところが業務に支障があって、こういうところを配慮してほしい」と、配慮の相談のために障害を開示すべき。いきなり障害を開示されて「つらい」とただ言われても職場はどう対処していいかわからない。
久保修一さん
1965年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科中退。日本で初めての障害者のための労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」書記長。
※「ブレイクスルー2020→ 障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクト」の記事はこちらから読むことができます。