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B面談義クリスマスエッセイ 能町みね子さん サムソン高橋さん

記事公開日:2018年12月24日

千原ジュニアと濃すぎるコメンテーターが「ちまたの話題」についてエッジの効いたトークをする「B面談義」。今回のテーマ「クリスマス」にちなんだエッセイを、能町みね子さんとサムソン高橋さんが寄稿してくださいました。

「ありがとうマライヤ」 能町みね子

photo 漫画家・エッセイスト 能町みね子
著書・テレビ出演多数。
相撲愛好家でNHKのニュースシブ5時では相撲解説を担当。

 ちょっと前は私も「非モテ」的なメンタリティを誇示しており、私はキリスト教徒でもないし、日本のクリスマスなんて所詮代理店に操られたカップルやファミリーのためのお祭よ!などと思っていたんですが、もうだいぶ精神も熟してきまして、年末に向かってわーっと盛り上がってバンッと24~25日に花火が打ち上がるように人民がはっちゃけ、その後の後奏のような数日間で急に改まってみんなあわてて伝統・神道・日本みたいな顔をしてお正月を迎えるという、その一連のお約束に愛着が生まれてきました。

 もうクリスマスの雰囲気は別に嫌でもない。街が商戦で盛り上がっちゃうのは仕方ないし、自分は自分の好きなクリスマス時期の楽しみ方ができるようになりました。なんならこのシーズンは、クリスマスソングが歌いたくなるくらいやや浮き立った気持ちでいますよ。

 もちろんクリスマスソングはアホみたいにぶちかませるものがいいです。マライヤ・キャリーですよ。マライヤの「恋人たちのクリスマス」、カラオケで入れてみたら、英語の速さについて行けないのは想定内としても、途中からはメロディーすらうろ覚えでやんの。でも全然いいんですよ、いちばん最初のところがやれれば。

 最初に鉄琴かな?がかわいく鳴って、第一声ね。もうこのときは当然立ち上がってなきゃダメですよ。みんなが注目してる状態で、
「ア~アアア~イ……」
 ここですでに口角が上がるよね。この「ア~アア」の音をぶらすところでアドレナリン出る。
「ア~アアア~イ………ドワナロッフォ~クリスマ~ス……」
 1行目を丁寧にいったら、そっから次は2行目「ゼ~!リズジャスワンシンガア~イニ~」と4行目「アンダー!ニスザクリスマストゥリー」と6行目「モ~!ザンユークッデーバーノウ」と「!」を定期的に挟んで人を飽きさせない。そして7行目ですよ!
「メークマーイウィッシュカー!ム、トゥルウ~……」
 ここでためる、もうキューッと目もつぶっちゃう、口もすぼめて
「ウウウ~ウ↑ウ↑ウウ~~~……」
 音を揺らして、カラオケ部屋の全員の気持ちを一点に集める!
 そして一気に「オーーー!!ラァイウォン、」とぶつける!かと思いきや、「フォー」で気を確かに持って、一気にしぼって「クリスマ~~ス……」
 そこから見せ所!針の穴を通すように!
「イ~イイイ、イ~イ~イイ~~~~~ズ………」
 ここまで来れば9割達成だよ!よくやった!
 最後は針の穴じゃなくて流しそうめんをイメージして、スルスル~っと、小さいけどぶれない程度の音量で
「ユウウウ~~~~~」
 そこからピアノがジャジャジャジャジャジャと楽天的に鳴り出すのであとはジャンプしながら適当に歌おう!その先はよく分からないから!
 カラオケ行ってきます!

【B面談義クリスマススペシャル動画はこちら

「クリスマスは嫌いじゃない」 サムソン高橋

photo ゲイライター サムソン高橋
雑誌「SAMSON」編集者・ライターとして勤務後、フリーに。ゲイ雑誌などで連載。

 NHKから、クリスマスについて書けという発注が、ゲイライターの私にきた。NHKから、ゲイライターに、クリスマスについて。何もかもが漠然としすぎててとまどっている。

 そもそも自分の人生には、クリスマスというものがほとんど存在しなかった。

 私の誕生日は12月なので、親もケーキを月に二度買いたくはなかったのだろう、私のおたんじょうび会とクリスマスは双方の中間地点にぼんやりと合同開催されてしまっていた。物心がはっきりとつくまで、私は「クリスマスというのはひょっとして私の誕生日を世界が祝ってくれているものなのかもしれない」と思っていたくらいだ。幼かったあの一時期、私は確かにイエス・キリストだった。
 神の子の家庭は貧しいと決まっているもの。クリスマスが存在しなかったのと同じくらい、いや、それ以上に私の人生にはサンタクロースが存在しなかった。一匹も存在しなかった。サンタクロースを子供はみな信じているという世間の言説が、私は幼稚園児にして理解できなかった。当時の私の主な生活は、パチンコ屋に行く父に帯同して球拾いロボットとして働いたり、サラリーマン金融からの取り立てが来ると両親を押し入れに隠して「おとうさんもおかあさんもいません」と怖いお兄さんに澄んだ瞳で答えるといったもの。サンタクロースが侵入する余地は1mmもない。
 これについては思い出すシーンがあって、ある時、テレビでかわいらしいアイドルが司会者に「サンタさんっていつまで信じてたん?」と話を振られていた。たわいのない質問である。しかし、私は彼女の瞳が一瞬虚ろになり、とまどうように言葉が途切れたのを見逃さなかった。下衆なゴシップ誌で彼女が極貧の母子家庭に育ったことを知っていた私は、思わず「やめて!」と眼と耳をふさいだのだった。

 時は流れ、私が成人したころ、日本はバブル経済に沸き、クリスマスはほのぼのした家族イベントではなく、男女がそれを口実につがう一大イベントと化していた。その一夜だけのために、皆が半年かけて貯めた大金をホテルやプレゼントに注ぎ込んでいた。あのときの日本は確実に狂っていた。
 そしてそのクリスマスにも、私にはまったく縁がないものだった。ゲイだから、ではなく、モテなかったからである。

 そう昔でもない話だが、ある冬の日にハッテン場であるゲイサウナに赴いた。客はいつもよりまばらで、レベルの低い印象だった(自分も含めて)。空振りで外に出て、缶ビール(のつもりの第三のビール)でも飲むか…と近くのコンビニに寄ったら、明らかにゲイとわかるガチムチの男二人が寄り添って酒を物色していた。邪魔と思うよりもわが身の惨めさが先だって身を引くと、彼ら二人の片手にそれぞれ美しくリボンがかけられた包みがあるのに気付いた。その夜がクリスマス・イヴだったことに私はそのとき初めて気付いたのだった。

 クリスマスにいい思い出などひとつもない。だが、クリスマスの時期は嫌いではない。街が華やかに彩られ発光し、なんとなく浮足立った季節。最近はハロウィンなるイベントで前が断ち切られたようになってしまっているのが惜しいくらいだ。
 タイは仏教国だが、近年クリスマスは日本同様派手なイベントとして成立している。それから年末年始になだれ込み、2月の旧正月を祝い、クリスマスの派手な飾りはそのまま4月の一年で最大のお祭り、タイ正月のソンクラーンまでほったらかしになっていたりする。年の半年近くが浮ついた感じになるのだ。日本もそうなったらいい。そしたらその日だけの惨めさも気にならなくなるだろう。

B面談義クリスマススペシャル動画

※この記事はハートネットTV 2018年12月24日放送「B面談義 クリスマススペシャル」に関連して作成しました。

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