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特集 世界でもっとも男女平等な国(1)父親の育休取得率7割!

記事公開日:2018年12月18日

各国の男女格差の度合いを指数化して順位をつける「世界ジェンダーギャップ指数」。いわばジェンダー平等に関する“成績表”ですが、日本の順位は149カ国中110位。
女性活躍推進が叫ばれる中、まだまだ格差が大きい日本。いったいどうすればその格差は埋められるのでしょうか。そしてそもそも目指すべき理想の姿とは?今回の特集では、10年連続1位のアイスランドを取材。「世界でもっとも男女平等な国」の暮らしの実態と、これまでの歩みからヒントを探ります。

■特集 世界でもっとも男女平等な国
(1)父親の育休取得率7割! ←今回の記事
(2)世界が注目!あえての“男女分け”幼児教育
(3)声をあげた女性たち ジェンダー平等への道のり
(4)歩みを止めない 真の男女平等社会を目指して

  

育児休暇は“特権”と考えるアイスランドの父親

日本から、北西へおよそ8,000キロ。北欧の島国アイスランドは世界で最も男女平等な国と言われています。世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数で、男女格差が最も少ない1位に、10年連続選ばれているのです。

1位に選ばれている主な理由は、政治や経済の分野での女性の割合が高いこと。現在、アイスランドの首相は、カトリーン・ヤコブスドッティルという40代の子育て女性。法律で、男性・女性の割合を一定以上に定める「クォータ制度」を導入し、企業の役員や国会議員の4割以上が女性となっています。

また、ほとんどの家庭が共働きです。なぜ、女性が子育てしながら働き続け、議会や企業での意思決定の場に参加するほどキャリアアップすることが「当たり前」になることができているのでしょうか。その鍵は、“男性”の暮らしぶりにあります。子どもを持つ父親の多くが、自ら育児休暇を取得しているのです。

街なかで子どもを連れた男性たちに聞いたところ、全員が育児休職を取得していました。

画像(インタビューに答える父親)

・30代の父親
「2歳と4歳と生後1週間の子がいます。どうして(育児休暇を)とらないの?給料ももらえるし、子どもといる方が、仕事より楽しいよ。子どものためにも絶対とるべきだよ!」
・50代の夫婦
「私たちふたりともとりましたよ。9年前かな。」
・父親(年代不明)
「3ヶ月くらいとりましたよ。みんなが育児休暇をとる権利があるんだ。利用すべきだよ。」

アイスランドの父親の育児休暇の取得率は実に74%!日本の父親の取得率5.14%(平成29年度調査)と大きな違いです。
現在、育児休暇中だという夫婦を訪ねることにしました。

レイキャビック市の中心に暮らすオッドニーさんとロックワルドゥルさん。今年7月、2人目の子どもが生まれたばかりです。今は2人で休暇をとっています。

画像(赤ちゃんを抱くオッドニーさんとロックワルドゥルさん)

夫婦が育児休暇をとるのは2度目。最初は長女が産まれたときです。この時、2人は話し合い、同じ期間に休みをとることにしました。

「私は女性も社会に出るべきだと思っているわ。仕事をすることで、経済的にも人生においても『自立』できるから」(オッドニーさん)

「子どもの世話をしていると、子どもとのつながりを感じて。『ああ自分はこの子を愛してるんだ』『子どもと一緒にいるべきなんだ』と実感できるんです」(ロックワルドゥルさん)

なぜ、アイスランドでは父親の育児休暇取得率が高いのでしょうか。それには制度の秘密があります。

画像(アイスランドの育休制度)

母親だけが育児休暇をとる場合は、6か月が限度。
しかし、2人でとる選択をした場合は、さらに父親・母親のどちらが取得してもよい3か月が追加されます。このほかに、子どもが8歳になるまでの間にいつでも取得できる4か月の休みも保証されているのです。

会社では、グラフィックデザイナーとして子ども向け商品などを手がけているロックワルドゥルさん。休み中の今は、経済学の通信教育を受けたり、デザインの勉強をしたりしています。赤ちゃんに呼ばれることもしばしば。それでも、自分の選択に満足していると語ります。

画像(赤ちゃんを抱きながらパソコンに向かうロックワルドゥルさん)

「キャリアは保留することができるというのが私の考えです。仕事を投げ出しているわけでも、辞めるわけでもない。休暇が終わったら、また復帰するだけです。つまり『特権』を得たのだと捉えています。子どもが大きくなってからではなく、早い時期から親子の絆を強めることが、未来にとって大事だと思います」(ロックワルドゥルさん)

育休を権利として保障するアイスランド

父親が積極的に育児に参加するアイスランドの社会。
日本とは違い、アイスランドが男女平等で育児も役割分担をできるのはなぜか。北欧のジェンダー政策を研究している立命館大学の大塚陽子さんは、「男女平等」に対する考え方の違いだと指摘します。

画像(立命館大学教授 大塚陽子さん)

「日本では男女平等を『労働』の問題と捉えがちですけど、アイスランドでは個人の『権利』の問題として捉えている点が大きく違います。たとえば、育休は親が子どもと過ごす権利として保障されているんです」(大塚さん)

日本にも育休制度があるが、父親はキャリアに影響することを懸念して権利を行使できないのではないか。そのような疑問について、大塚教授は国の政策で解消できる問題だと説明します。

「アイスランドでは、政府が企業に介入するということもあります。個人の権利ですので、きちんと守られないと、よくないことですので」(大塚さん)

社会においても男女平等のアイスランドでは、上場企業の役員や、国会議員の半数近くを女性が占めています。さらに弁護士や医師などの専門職や技術職も55%が女性です。日本とは大きな差がありますが、そこには働き方の違いがあると大塚教授は分析します。

画像(日本とアイスランドの役員・議員の男女比率)

出典:世界経済フォーラム2017

「日本とは大きく働き方が違うということですね。アイスランドでは、パートタイム労働は単に労働時間が短いだけで、フルタイム労働と同一労働・同一賃金になっています。そして、アイスランドでは女性の3割近くがパートタイムなんです」(大塚教授)

日本とは「パートタイム」の位置づけが異なるアイスランド。パートタイム労働であっても、会社の役員や管理職に登用されるといいます。キャリアと子育てを両立できる社会が確立されているのです。

次回は、男女平等な国で、ジェンダー教育に取り組むある学校に潜入します!

【特集、つづきは…】
(2)世界が注目!あえての“男女分け”幼児教育
(3)声をあげた女性たち ジェンダー平等への道のり
(4)歩みを止めない 真の男女平等社会を目指して

※この記事はハートネットTV 2018年10月3日放送「平成がのこした“宿題”第2回『ジェンダー格差』」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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