障害者雇用の両思いを増やすためにはどうすればいいのかを探る「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクト」。第5回は、働きたい当事者に必要な「社会力」と「自己管理力」について紹介。なぜ、資格や技術ではないそのような力が必要なのか、どうすれば身につくのか? 就労移行支援の現場から、すぐに役に立つヒントをお届けします。
働きたい当事者にはどのような力が必要なのか?社会福祉法人理事長として、就労移行支援に取り組む岸田耕二さんは、長く働くために必要な力は、人とうまくやっていくことのできる「社会力」と、自分の体調や感情をコントロールする「自己管理力」が大事だと言います。
なぜ働くうえで、業務以外のこうした力を身につけることが重要なのでしょうか?
「働くのに必要な力、というとどうしても技術とか資格を思いがちですが、やはり人と接していくということが求められるので、こうした力が必要。これによって、信用・信頼や自信をつけることにつながっていく。」(岸田さん)
神戸市にある事業所では、精神障害や発達障害などのある20人が在籍し、実際のオフィスに近い環境で訓練を行っています。
仕事に集中すると周りが見えなくなり、人間関係につまずくことに悩んでいた鈴木さん(仮名、ADHD)。職員の門田滎雅さんが、面談や業務中のフィードバックを通して、相手への伝え方、表情の作り方、休憩の取り方などを、客観的な視点に基づいてアドバイスすることで、客観的な意見を知り、特性に対する自覚と対処法を身につけています。
自己理解を深めることで気分や体調の波との付き合い方を学んだ人もいます。宮崎陽弘さん(自閉症スペクトラム・気分障害(うつ))は、高校時代から9年にわたる引きこもりを経験。受験勉強でつまずいて以来、何をしてもやり遂げられないことに悩んできました。
しかし、簿記の勉強をきっかけにスケジュール管理に取り組み、やるべきことを可視化。計画通りにできないときには気にせず次の日へと繰り越すことや、どんなにやる気が出ないときでもスマホを充電するなど、小さなことでも行動することで、やる気は後から出てくることも学びました。その後、宮崎さんは、簿記一級に合格!資格より大事な達成感や自信を得ることができました。
鈴木さんと宮崎さんの変化を「体調が安定して健康になり、何が得意かも分かって自信が持てると、目標や希望が見えてきて働きやすくなる」と説明する岸田さん。そのために自己管理力が重要になるのです。
・スーツの身だしなみ/フケがついていない?シャツが出ていない?
・「ありがとうございます」「申し訳ございません」「お疲れさまでした」など挨拶を意識する。
・できなかったところや忘れやすいところなど、メモをとる。
・書類の「見やすさ」など、相手のことを考えて行動する。
・いきなり用件を言わず「すみません」など、ひと言断りを入れてから話しかける。
・会話するときや質問するときは、人との適切な距離感を意識する。
・自分の特性に合わせて休憩の取り方を工夫。(1時間に10分など)
・業務についてだけでなく、“体調面や感情面”なども報告・連絡・相談が大事!
・過集中など症状・特性を自覚する。
・自身の性格を理解し、必要であれば周囲に伝えておく。
働く障害者のための労働組合書記長・久保修一さんは、「仕事を自分にあわせる」ことや「会社や周囲に期待しすぎない」ことも大切と言います。
「『お給料もらえればいいや』と割り切ってしまってプライベートを充実させるというのも、長く働くコツだと思います。」(久保さん)
事前に準備し、心構えをしっかり持てば長く働ける。そんな思いが広がることが期待されます。
※この記事はハートネットTV 2018年12月10日放送「シリーズ ブレイクスルー2020→ 障害者雇用 もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction5」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。