もしかして発達障害? 幼稚園・保育園での悩み・偏食

もくじ

そもそも「発達障害」ってなに?

番組に寄せられる、乳幼児期の子育てに関する不安やお悩み。
なかでも多いのが、「うちの子は、もしかして発達障害なのでは」という不安の声です。そもそも「発達障害」とは、どのようなものなのでしょうか。

発達障害は、脳の働き方が他の人と少し異なっているために起きるといわれています。「ある特定の分野だけが極端に苦手」など、周りからはわかりにくい障害です。

発達障害には、主に3つのタイプがあります。

●自閉スペクトラム症
ことばの遅れ、コミュニケーションが苦手、特定のものへの強いこだわり などが特徴
●ADHD(注意欠如・多動症)
注意力が散漫、落ち着きがない、衝動的 などが特徴
●学習障害
読み、書き、計算などの学習のうち、特定の学習(ひとつ、または複数)に関して極端な困難がある

これら3つのタイプは、互いに合併して起きることもあります。

脳波や血液検査などでは診断ができないため、ここからが発達障害という明確な境界線はありません。

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社会性や人間関係などにあらわれる障害であることもまた、乳幼児期の診断を難しくする一因になっています。

長年、発達障害の子どもたちの診察や支援を行っているお茶の水女子大学・名誉教授で、小児科医の榊原洋一さんは、子どもの発達には大きな個人差・個性があり、(発達障害であるかどうかの)判断は難しい部分がある、と言います。

「個人差の中で、特に困難な状態につけられた名前が発達障害なのです。親がいちばん心配するのは、『これまでのしつけが間違っていたのでは』といったことですが、発達障害としつけは関係がありません。子どもが急に走り出していなくなってしまうなど、対応に悩むような行動をしているとき、それが気質なのか、個人差なのか、発達障害なのか考えることがあると思います。ですが、ご家庭での子育ては状況に応じて考えていくので、いずれであっても大きな差はないのです。例えば、子どもが急にいなくなったのには、理由があるかもしれません。見守るような気持ちで、ふだんのしつけをしていくことが基本だと思います」(榊原さん)

小児科医の榊原さんによると、アメリカでは発達障害のある子どもたちのことを特別なニーズのある子どもたちと捉え「Children with special needs」と呼んでいるといいます。

「子どもに主体がある」「子どものニーズに合わせる」という考え方は、発達障害のあるなしにかかわらず、どんな子どもにとっても大切な視点ではないでしょうか。

「わが子はもしかして発達障害かもしれない」と不安に感じたら、ひとりで抱え込まず専門家につながってみましょう。地域の子育て相談の窓口や、大きな病院の「発達障害や小児科の専門医」あるいは、かかりつけの小児科医にも相談することができます。

発達障害のある子どもの“偏食”

長年、発達障害の子どもたちのカウンセリングを行ってきた、東京学芸大学教授の髙橋智(さとる)さんは、「発達障害の子どもたちの半数以上に何らかの偏食がある」という調査報告が出たことなどから、原因を探るための研究を進めてきました。

髙橋さんは、発達障害の当事者137人に、偏食について聞き取り調査を行いました。すると、その背景には、発達障害のある人に特有の「感覚過敏」などの感じ方があるとわかりました。

例えば、赤くて丸い、おいしそうに見える、この「イチゴ」。

画像(いちご)
発達障害のある人の中には、「気持ち悪さ」や「怖さ」を感じる人が多くいました。イチゴの表面にあるいくつものツブツブが、目に飛び込んで来るというのです。

一方、こちらのコロッケ。

画像(コロッケ)

サクサクした食感の衣ですが、発達障害の人の中には、口の中を針で刺されているように感じられ、「痛くて食べられない」と訴える人が少なくありませんでした。
このほかにも「食べ物をかむ音が耳障りでがまんできない」など、音や臭いについても同様の感覚過敏の傾向が確認され、食事がとれない原因となっている実態が浮かび上がりました。

「従来は“好き嫌い”“わがまま”と言われがちな問題だったが、これは生理学的な問題。そもそも食に対する見え方の問題や、口に入れた感じ、中にはうまくそしゃくができなかったり、飲み込みが困難な方がいて、そういった特性や身体的な問題が、食の困難・偏食を大きく規定していることがわかった」(髙橋さん)

発達障害の当事者が抱える問題を、当事者の目線で解決していこうという研究がここ数年で進んだことで、「偏食は好き嫌いの問題ではない」ということ、また、周囲の無理解に苦しむ子どもたちの実態もわかってきました。

ワガママで食べないのではない、ということを周囲に知ってもらうだけでも、本人のつらさが軽減されるのではないでしょうか。

 

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