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もしかして発達障害? 幼稚園・保育園での悩み

記事公開日:2018年10月31日

子育てをしているなかで「もしかしたら発達障害があるのかも・・・」という不安を感じることはありませんか。「そもそも発達障害ってなに?」という基本的な疑問から、幼稚園や保育園での対応についてまで。子育てに悩むママたちに寄り添い、専門家や先輩ママたちと一緒に考えます。

そもそも「発達障害」ってなに?

番組に寄せられる、乳幼児期の子育てに関する不安やお悩み。
なかでも多いのが、「うちの子は、もしかして発達障害なのでは」という不安の声です。

声が大きい、落ち着きが無い、かんしゃくがひどいなど、育てにくさを感じています。
ひどいイヤイヤ期だと思ってやり過ごしていますが、もしかしたら発達障害ではと心配しています。
(千葉県/2歳5ヶ月の女の子がいるママ)

そもそも「発達障害」とは、どのようなものなのでしょうか。

発達障害は、脳の働き方が他の人と少し異なっているために起きるといわれています。
「ある特定の分野だけが極端に苦手」など、周りからはわかりにくい障害です。

画像(発達障害のタイプ)

発達障害には、主に3つのタイプがあります。

●自閉スペクトラム症
ことばの遅れ、コミュニケーションが苦手、特定のものへの強いこだわり などが特徴
●ADHD(注意欠如・多動症)
注意力が散漫、落ち着きがない、衝動的 などが特徴
●学習障害
読み、書き、計算などの学習のうち、特定の学習(ひとつ、または複数)に関して極端な困難がある

これら3つのタイプは、互いに合併して起きることもあります。

画像(発達障害の明確な境界線はない)

脳波や血液検査などでは診断ができないため、ここからが発達障害という明確な境界線はありません。社会性や人間関係などにあらわれる障害であることもまた、乳幼児期の診断を難しくする一因になっています。

長年、発達障害の子どもたちの診察や支援を行っているお茶の水女子大学・名誉教授で、小児科医の榊原洋一さんはこう指摘します。

画像(お茶の水女子大学 名誉教授 小児科医 榊原洋一さん)

「子どもの発達には大きな個人差があり、個性があります。そのため、なかなか判断が難しい部分があります。個人差の中で、特に困難な状態につけられた名前が発達障害なのです。親がいちばん心配するのは、『これまでのしつけが間違っていたのでは』といったことですが、発達障害としつけは関係がありません」(榊原さん)

ママたちの悩み「個性?それとも発達障害?」

コノハズクさんは、3歳の長女に自閉スペクトラム症の傾向があるといわれています。

画像(コノハズクさん)

「まだ言葉が一言も出ていなくて、こちらの言っていることも理解していないのかな、と。手をつないでいないと、すぐ走り出してしまって。待っててね、とお願いしても難しいみたいです」(コノハズクさん)

そんな時にいつも悩むのが「もともとの気質の問題なのか、発達障害が要因で起きていることなのか」です。

そうした状況で、子どもに対し、どのように接するのがいいのでしょうか。
榊原さんは「発達障害のあるなしに関わらず、子育ての基本は同じ」と言います。

画像(榊原さん)

「子どもが急に走り出していなくなってしまうなど、対応に悩むような行動をしているとき、それが気質なのか、個人差なのか、発達障害なのか考えることがあると思います。ですが、ご家庭での子育ては状況に応じて考えていくので、いずれであっても大きな差はないのです。例えば、子どもが急にいなくなったのには、理由があるかもしれません。見守るような気持ちで、ふだんのしつけをしていくことが基本だと思います。」(榊原さん)

発達障害と診断されるまでの「どっちなんだろう」と悩む時期が一番つらかったというママたち。

よつばさんは、三人の子どもがいる先輩ママです。
長女のウイちゃん(中学1年生)、長男のサクくん(小学4年生)に発達障害があります。ウイちゃんが4歳ぐらいまでは「半分ちょっと記憶がないぐらいしんどかった」と当時を振り返ります。

画像(よつばさん)

「本当に右向いて左向いたらいなかったですし。お家の中でちょっと感情的になって、わーって泣いて叫んで、気づいたら脱走してて追いかけるっていうのを、1日中繰り返している感じでしたね」(よつばさん)

ママ友に「うちの子、なんかちょっとみんなと違うような気がする」と相談すると、「みんなそんなもんだよ」と善意の励ましを受けました。しかし、それでホッとすることはなく、むしろ塞ぎがちになっていきました。

3歳の長男がいるシーバスさんもまた「大丈夫だよ、一緒だよ」という周囲のことばに追い詰められた時期があったと語りました。

画像(シーバスさん)

数を数えられなかった息子に、シーバスさんは「なんで1,2,3も数えられないの」と言ってしまったのだといいます。

「絶対言っちゃいけないことを息子に言ってしまって。そのときに多分もう不安というよりも、恐怖にかられてしまって」(シーバスさん)

お母さんごめんなさい、と繰り返す息子を見て「もう限界なんだな」と思ったことが、支援にたどり着くきっかけになったと言います。

不安なときは療育センターに相談を

先輩ママ・きくさんの長男ピタくん(高校1年生)は、小学校入学後にADHDと学習障害があるとわかりました。

画像(きくさん)

男の子を育てるのが初めてだったため、はじめは「こんなもんかな」と思っていたそうです。
「診断をもらいに行こう」と思うきっかけとなったのは、ルールや危険なことについて教える際、「同じ教え方ではこの子には伝わっていないのかもしれない」と気づいたことでした。

「この子の頭にちゃんと届くように教えてあげるには、どうしたらいいんだろうなって思ったんです」(きくさん)

発達が遅れているのでは?と思ったときに、相談できる場所があります。そのひとつが療育センターです。
ここには保育士や臨床心理士など専門家がいて、子どもと親の支援を行っています。

画像(世田谷区発達障害相談・療育センター)

「われわれ支援者は、支援が必要なお子さん、あるいは困っているお母さん・お父さんの応援団だと思っています。直接的にできること、できないことがありますが、保護者の方が疲れ過ぎる前に、相談にきてほしいと思っています」(臨床心理士)

療育センターには、親同士がつながる交流の場も用意されています。
先輩ママのタンポポさんも、息子が小さかった当時、同じような悩みを抱えている人たちと知り合えたことが大きかったと話しました。

療育の他に、この時期にやれることはあるのでしょうか。
小児科医の榊原さんは、子ども同士のコミュニケーションを挙げます。

「例えば、保育園・幼稚園に入ると、子ども同士の中で、いろいろなコミュニケーションがあります。子ども同士で、ことばを覚えたり、いろいろなルールを覚えたりします。そのような場所には、できるだけ入れてあげたほうがよいと思います」(榊原さん)

幼稚園や保育園での工夫

いま、発達障害のある子のために、さまざまな工夫を行う幼稚園や保育園が増えています。

例えば、一日のスケジュールを伝えるときは、ことばだけでなく、目でもわかるようにします。
発達障害のある子どもは、耳で聞くより、目で見た情報のほうが理解しやすい場合が多いからです。

画像(イラストで1日のスケジュールがわかる工夫)

また、次に何をするのかわからないと不安になる子どももいますが、見通しがつくと安心して次の行動に移ることができます。

画像(集団行動について説明する写真つきのカード)

さらに、運動会など集団で行う活動を、写真を使って説明する園もあります。
自分の動きが理解しやすくなり、安心して本番を迎えることができるそうです。

画像(声の大きさを四段階で示したイラスト)

発達障害のある子の中には、状況に応じて声のボリュームを調節することが難しい子もいます。
そんな子には、声の大きさをイラストで目に見えるように説明してあげると、少しずつ理解していくそうです。

画像(気持ちを落ち着かせるためのスペース)

また、万が一パニックになったときのために、集団から離れて落ち着けるスペースを確保している園もあります。

全員で一斉に集団行動をさせること自体を見直した園も。
埼玉県久喜市の栗橋さくら幼稚園では、子どもたちが、やりたいことをとことんできる「コーナー保育」に切り替えています。

画像(コーナー保育の様子)

「コーナー保育」とは、スペースを区切り、それぞれのコーナーで、別々の遊びを自由に行うことです。ブロックのコーナー、お絵描きのコーナーなど、目的ごとに「遊びの空間」が決まっています。

発達障害のある子の中には、たくさんのおもちゃが視界に入ると、目移りして落ち着かなくなる子もいます。遊ぶ場所が決まっていることで、興味のあることに集中でき、他の遊びをする子とトラブルになりにくくなります。納得するまで遊べるので、こだわりが強く行動の切り替えが苦手な子どもでも、その後の気持ちの切り替えが楽になるそうです。

このように配慮が必要な子どものために工夫した結果、どんな子にとっても過ごしやすい環境になったそうです。また、何をして遊ぶのかが子どもたちに任されているので、先生の指示がなくても、自ら考えて動くようになったといいます。

しかし、このような工夫をしている保育園・幼稚園ばかりではありません。
先輩ママたちは、どうやって乗り切ってきたのでしょうか。

よつばさんは、先生にしてほしいことをきちんと伝えたそうです。

「子どもが困っているとき、こちらからしてほしいことを園に伝えて、『先生のほうでも、うまくいった対処方法があったら教えてくださいね』と、先生方と一緒にチームになりましょうという気持ちでいきました」(よつばさん)

長男が自閉スペクトラム症と診断を受けたタンポポさんは、周りの保護者に伝えた経験を教えてくれました。

画像(タンポポさん)

「『うちの子はこういう子です』っていうのを保護者の前で言ったんですよ。そうしたら、そんなに理解のない人がいなかったんですよね。みんな分かってくれたので。本当に言ってよかったなってすごく思いました」(タンポポさん)

発達障害のあることを言わなくても、わが子の特徴について思いきって伝えてみると、理解を示してくれる人も少なくないといいます。

小児科医の榊原さんによると、アメリカでは発達障害のある子どもたちのことを特別なニーズのある子どもたちと捉え「Children with special needs」と呼んでいるといいます。

「子どもに主体がある」「子どものニーズに合わせる」という考え方は、発達障害のあるなしにかかわらず、どんな子どもにとっても大切な視点ではないでしょうか。

「わが子はもしかして発達障害かもしれない」と不安に感じたら、ひとりで抱え込まず専門家につながってみましょう。今回ご紹介した「療育センター」以外にも、地域の子育て相談の窓口や、大きな病院の「発達障害や小児科の専門医」あるいは、かかりつけの小児科医にも相談することができます。

※この記事は2018年05月26日(土)放送 すくすく子育て×ウワサの保護者会「ちゃんと知りたい!子どもの発達障害」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。
※すくすく子育て「もしかして発達障害?」お悩みQ&Aはこちら

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