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「こども食堂」ってどんなところ?

記事公開日:2018年10月05日

全国約2300か所に展開する「こども食堂」。貧困家庭を意識しながら、地域の子どもたちに食事を提供する事業であるとともに、地域の人々をつなぐ地域交流拠点としての役割も期待されています。9月18日、東京・赤坂で、理解者や支援者を増やすためのオープンセミナー「こども食堂ってどんなところ?」が開催されました。そこで紹介された事例も含めて、こども食堂のいまをお伝えします。

“自発性”と“多様性”がこども食堂の命

こども食堂は、2018年4月現在で、全国約2300か所で開催されていることが全国調査で明らかになりました。調査を実施した法政大学教授の湯浅誠さんは、今回のオープンセミナーの主催団体「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の理事長。「中心に旗振り役がいないのに、わずか3年足らずで数千か所のこども食堂が、全国で同時多発的に新たに立ち上がったというのは、大変珍しい現象だ」と話します。長年社会活動家として貧困者の支援活動にかかわってきた湯浅さんにとっても、こども食堂は、これまで体験したことのない勢いと広がりがあると感じられるそうです。

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法政大学教授の湯浅誠さん

こども食堂に関しては、補助金を設けている自治体は限られていて、財政基盤は弱く、専従スタッフもいないケースが圧倒的多数です。行政の協力が十分得られていない反面、制度の縛りを受けずに、無理のないやり方で、自由な運営を行っています。

規模としては、自宅の一部を開放して、数人の子どもたちを集めてこぢんまりと開催するこども食堂もあれば、地域の公民館を借りて、一回に300人近くが集まって、お祭りのようににぎやかに開催するところもあります。主催者は、お寺の僧侶、食堂のオーナー、商店街の店主、PTAの有志、保育士などさまざまで、ボランティア精神を発揮し、思い思いのスタイルのこども食堂を運営しています。

「2300か所あれば、2300通りのやり方があっていい。“自発性”と“多様性”がこども食堂の命」と湯浅さんは話します。

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参加者は、こども食堂の運営者、支援団体メンバー、自治体福祉担当者、企業関係者など

昨年、農林水産省が行った「子供食堂向けアンケート調査」によれば、平均的な参加人数は一回20人程度で、開催頻度は、月に1、2回が73%で、毎日開催しているところは約3.3%。過半数のこども食堂は無料で、有料としているところでも料金は100円程度です。

子どもの食事支援を目的に始まったこども食堂ですが、月1、2回の開催でも、手応えを感じられると言います。というのも、「地域交流の場」として、さらに子どもの「見守りの場」として機能しているからです。

貧困などの事情を抱える家庭の子どもたちは、地域のイベントなどに参加することは少なく、どのような方法でそういう子どもたちに足を運んでもらうかは、こども食堂の課題のひとつです。東京・江戸川区が2年前に行った調査では、子どもに情報が届いていなかったり、「貧困だと思われたくない」と周りの目を気にしたりして、来てほしい子どもに来てもらえていない状況も明らかになりました。

そこで、貧困対策を前面に出しすぎずに、誰もが集う地域交流拠点であるというしつらえが重要になります。その上で、課題を抱えた子どもたちがいれば、その事情が周囲の大人に自然と伝わり、さらに専門家への支援へとつながることが少なくありません。

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「地域交流拠点」と「子どもの貧困対策」。こども食堂のふたつの大きな柱

湯浅さんはかねてから「現代の貧困は見えにくいのが特徴だ」と主張していて、支援すべき子どもと接点をもつことさえ難しいのが現状です。だからこそ、子どもたちが訪れやすい、多種多様な子ども食堂があり、そこで子どもたちが地域の大人と顔見知りになって、「何かあれば力になるよ」というまなざしのもとで過ごすことに、大きな意義があると言います。

地域の思いと知恵を結集して

今回のオープンセミナーでは、2か所のこども食堂の事例が運営者により紹介されました。

ひとつ目は、東京・調布市の「こども食堂かくしょうじ」です。紹介者は事務局長の細川真彦さん。覚證寺という寺の住職で、本堂の地下に作った多目的ホールを会場として、2016年4月にこども食堂をスタートさせました。細川さんは小中学校のPTA会長も経験し、地元で子どもにかかわる大人たちとの交流があり、こども食堂は、そのような仲間とともに立ち上げました。

細川さんたちは、当初は一人親家庭の子どもたちを中心に声をかけました。その後は、子ども同士の口コミで徐々に増えていき、多いときには100人近くの子どもが参加したこともありますが、いまは80人台で推移しています。開催頻度は月に2回で、子どもたちは遊び場にやってきて、ついでにご飯を食べていくような気楽な感じだと細川さんは話します。

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住職の細川真彦さん(「こども食堂かくしょうじ」の会場にて)

食材の調達は、肉や魚以外は寄付でまかなっています。お米は多くの方が寄せてくれるので困ったことはないそうです。野菜に関しては、地元の農家が届けてくれたり、地域のつながりからカット野菜の卸会社が毎回まとめて提供してくれます。

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小中学生だけではなく、幼児連れの母親たちもやってくる(こども食堂かくしょうじ)

地元の顔見知りの人たちと始めたこども食堂でしたが、いまはSNSを見て応募してくるボランティア志望者や大学生など、地域外の人も加わって子ども支援の輪が広がっています。

ふたつ目のこども食堂は、東京・品川区の「クロモンこども食堂」です。紹介者はクロモンカフェの店主である薄葉聖子さん。自分が経営する8畳2間の小さなカフェでこども食堂を開催しています。3年前の薄葉さんは、こども食堂と言っても 、子どもが食堂ごっこをするものだと勘違いしていたくらい意識は希薄だったそうです。しかし、その後、子どもが一人で食事をする「孤食」が増えていることや「子どもの貧困率」が高いことを知り、たった一人でこども食堂をスタートさせました。

「一人なら明日からでもこども食堂は開ける、ダメなら止めればいい」と、気負いもなく始めた活動でしたが、気がつくと、通算129回も開催し、延べ4257人に食事を提供し続けてきました。

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薄葉聖子さん(クロモンカフェの店頭にて)

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クロモンカフェは畳敷きで家庭的な雰囲気

運営を続けてわかったのは、思った以上に人手が必要だということでした。本当は食事づくりだけに集中していたいのですが、事前に開催日を子どもたちに知らせたり、食材の寄付やボランティアの申し出に対応したりなど、食事づくり以外の仕事が少なくありません。

そこで、薄葉さんは、品川区役所や品川区社会福祉協議会と相談して、「しながわこども食堂ネットワーク事務局」を開設してもらい、地域や企業とこども食堂の間をつなぐ体制を整えてもらいました。現在は、企業やボランティアは、こども食堂に直接ではなく、ネットワーク事務局を通じて、協力を申し込む形になっています。

あるハンバーガーチェーンは店舗で使う消毒用のアルコールを継続的に提供してくれています。大手百貨店で乾物を食材として提供してくれるケースもありますし、ある電子機器メーカーは、自社の防災備蓄の食材を賞味期限が切れる半年前に届けてくれます。子どもの貧困を何とか解消したいという思いで一致している多くの人たちが、さまざまな知恵を出し合っています。

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讃岐うどんチェーン店の社員がうどん作りを指導。こんな活動も

こども食堂だけで、深刻な貧困や虐待が解決するわけではありませんが、おいしいごはんを前にすると、どんな事情を抱えた子どもでも、思わず顔がほころびます。誰にでもかかわることができて、どんな子どもにも受け入れられる活動で、社会的な意義が大きい。こども食堂が急速に広がる理由がわかるような気がしました。

執筆者:Webライター木下真

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