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障害者雇用の新メソッド!“超短時間雇用”とは?

記事公開日:2018年10月01日

障害者雇用の両思いを増やすためにはどうすればいいのかを探る「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクト」。第4回では、お互いにいま一歩踏み出せない現状を打破するための取り組みを紹介。東京大学准教授の近藤武夫さんが提唱する「超短時間雇用」のメソッドを紐解きながら、企業も障害者もwin-winとなる方法を探ります。

キーワードは「超短時間」と「仕分け」

「任せられる仕事を用意できない…」「短時間でも働きたいのに…」。そんな企業や当事者の悩みを解決できるかもしれないのが、東京大学准教授の近藤武夫さんが提唱する「超短時間雇用」という新しい働き方。

画像(超短時間雇用を提唱する、東京大学 准教授 近藤武夫さん)

近藤さんが目を付けたのは、最低でも週20時間以上働かなくてはいけないという国の決まり。それにこだわらず、15分という短い時間からでも雇っていくことで、もっと働ける選択肢を増やしていこうという仕組みです。

画像(障害者雇用と認定される労働時間 1人・週20時間以上 ※法定雇用率に換算される基準(従業員数45.5人以上) )

でも、そんな「超短時間」の仕事はあるのでしょうか。そこでポイントになるのが「仕事の仕分け」。実際に近藤さんのメソッドを取り入れた取り組みを見てみましょう。

画像(超短時間雇用のポイント)

「超短時間雇用」とは…

慢性的な人手不足に悩む神戸市垂水区の商店街。その悩みの解決策として「超短時間雇用」に取り組むことにしたのです。「魚屋」と「飲食店」を経営する木下広忠さんもその1人。事業拡大のためネット販売に興味はあるものの、人手不足のため手が回らない状況。そこで障害者雇用をするためにまず行ったのが「仕事の仕分け」。
日々の仕事を「本人でなければできない仕事」と「他人に任せられる仕事」に分けていきます。

画像(「本人でなければできない仕事」と「他人に任せられる仕事」に分けていく)

候補が出たら、そのうちどれを任せれば効率的かを見極めるためにも1日のスケジュールを書き出します。1日の中でどの時間を他人に任せられれば自分に余裕が生まれるのか、見えてくるのです。

画像(木下さんの1日のスケジュール)

木下さんは伝票整理の仕事を超短時間雇用で任せることにしました。

この「仕分け」は思わぬ副産物を残すことも。仕事の見直しにつながり、社員それぞれの専門性を再確認できることで効率や生産性が向上。「企業力」が上がる可能性があるのです。

そして超短時間雇用を進める中でもうひとつ重要なのは、決めた仕事以外はさせないこと。

商店街でパン屋を営む末武徹也さんは、もっとお客さんと接する時間を作りたいと、週に1日、1時間の超短時間雇用を始めました。

画像(パンの成形をする紗織さん(20))

この仕事に応募してきたのは、将来の夢はパン職人という沙織さん。知的障害があり人とコミュニケーションを取るのが苦手なため、様々な仕事を任されるパン屋では働けないかもと不安を抱いていました。超短時間雇用では時間も短く仕事内容も「デニッシュの成型」のみ。安心して働けていると言います。

超短時間雇用のメリット・デメリット

末武さんと沙織さんのようにwin-winの雇用関係が理想ですが、一方でデメリットもあります。

メリットデメリット
企業側 ・人手不足の解消
・残業が少なくなる
・無理に長時間の仕事を作らなくてもOK
・法定雇用率を満たせない
・決めたこと以上のことをお願いできない
働く側 ・慣れない環境・仕事にもチャレンジしやすい
・自分の体調や体力に合った働き方ができる
・決めた仕事以外はしなくて良い(苦手なことはしなくてOK)
・短い時間から働ける
・収入が少ない
・一定期間で仕事がなくなる可能も

特に働く側にとっては、収入が少ないのが大きな課題です。

しかし、体力がある人などは、ダブルワークをしたり、短い時間から始めて徐々にステップアップし、20時間まで増やすことも可能です。大切なことは選択肢がたくさんあること。当事者にとっても社会と関わることは、“生きがい”や“やりがい”につながるのです。

広めるには地域のサポートが必要

画像(東京大学 准教授 近藤武夫さん)

超短時間雇用を広めるうえで必要なのは、「地域でサポートする仕組み」と近藤さん。障害者雇用では体調を崩して仕事を辞めたり、仕事単位で人を雇うため、仕事がなくなる場合も少なくありません。そんな時、企業や当事者が問題を抱え込むのではなく、自治体や就労移行支援事業所などと協力し地域でサポートする仕組みを作ることで持続可能な取り組みになるのです。

初回放送「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction1」の内容は、記事「もっと増やそう両思い! 障害者雇用プロジェクト始まります」で読むことができます。第2回「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction2」の内容は、記事「障害者雇用プロジェクト お互いを知ることから始まる“両思い”」で読むことができます。第3回「障害者雇用 もっと両思いを増やそう!Action3」の内容は、記事「障害者雇用 定着のためのヒント」で読むことができます。

※この記事はハートネットTV 2018年10月01日(月)放送「シリーズ ブレイクスルー2020→ 障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction4」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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