場面緘黙(かんもく)とは 基礎情報・支援情報

場面緘黙

もくじ


特定の場面でだけ話せない場面緘黙(かんもく)とは?

「かんもくネット」代表で臨床心理士の角田圭子さんによると、場面緘黙(かんもく)とは『家などではごく普通に話すことができるのに、例えば幼稚園や保育園、学校のような「特定の状況」では、1か月以上声を出して話すことができないことが続く状態のこと』を言います。

子どもは自分の意思で「わざと話さない」と誤解されることがありますが、そういう状態とはまったく異なり、人見知りや恥ずかしがりとの違いは、「そこで話せない症状が何か月、何年と長く続くこと」「リラックスできる場面でも話せないことが続くこと」があげられます。

場面緘黙は症状によって次の5つのグループに分類されます。

① 場面緘黙傾向
② 純粋な場面緘黙
③ ことばに苦手がある場面緘黙
④ 複合的場面緘黙(発達的問題や心理的問題の合併)
⑤ 遅発発症の場面緘黙(学校での孤立やいじめによる発症が多い)
(※イギリスの場面緘黙支援の第一人者マギー・ジョンソンさんによる支援のための分類)


場面緘黙がどのようにして発症するのか?そのメカニズムはまだ研究段階ですが、発症要因(原因)は、「不安になりやすい気質」などの生物学的要因がベースとしてあり、そこに心理学的要因、社会、文化的要因など複合的な要因が影響しているのではないかと考えられています。

例えば入園や入学、転居や転校時などの環境の変化により、不安が高まって発症することが多く、クラスでの先生からの叱責やいじめがきっかけとなることもあります。

角田さん:場面緘黙の人は0.5%といわれています。200人に1人ですから学校に1人いる可能性があるかなと思います。女の子のほうがやや多いというふうに考えられています。どうしても親のしつけが悪いからじゃないかという誤解がとても多いのですが、子どもによっていろんな要因があって、親のしつけで場面緘黙になるというわけではありません。

 

望まれる周りの理解とサポート

認知が進まず、心ない言葉をかけられることもある場面緘黙。周りにはどのようなサポートが望まれるのでしょうか。角田さんは「場面緘黙の子どもは、おとなしい子どもが多く、見過ごされがち」と早期発見と対応の重要性を訴えます。

角田さん:場面緘黙への支援を受けずに成長すると、症状改善が遅れるだけでなく、うつや他の不安症状、不登校や人間不信などの二次的な問題が生じやすくなります。子どもの場合はまず、園や学校の先生、それからスクールカウンセラーに相談し、それから不安症や発達障害に詳しい医師や心理士、言語聴覚士がいる発達センターや教育センター、クリニックにも相談しましょう。専門家だけで治せる症状ではないので、家庭と学校などが協力して、まず『安心できる環境』を調整することが最も大切です。

一方で、大人の場面緘黙の治療や支援はまだ行われていないのが現状です。

角田さん:『社交不安症』に詳しい医師や心理士に相談すると、場面緘黙の理解がある人に会える可能性があります。就労については、診断を受けて福祉就労枠での就職をする人もきくようになってきました。就労支援センターやハローワークで相談してみましょう。

 

場面緘黙の見分け方、チェックシート

場面緘黙かどうかの判断の基準は次の2つ(A・B)です。
※正確な診断は、不安症や発達障害に詳しい医師や心理士、言語聴覚士がいる発達センターや教育センター、クリニックに相談しましょう。

画像(場面緘黙かどうかの判断の基準)

※補足1
Bについて場面緘黙と区別が必要な状態は下記です。

●家庭を含むすべての生活場面で話せなくなる状態を全緘黙といいます。ショックな出来事の後に急激に全緘黙となった場合は、「トラウマ性緘黙」といって急性のストレス障害であり、場面緘黙とは異なります。
●「失声症」は、ある日突然声が出なくなる症状ですが、思春期や更年期の女性に発症が多く、場面緘黙とは異なります。
●「けいれん性発声障害」は、声帯の過緊張と声門の過剰閉鎖のために、声がとぎれとぎれとなる発声障害で、場面緘黙とは異なります。
●うつ症状のために全般的に会話意欲が失われている場合は、場面緘黙とは異なる対応が必要です。
●家庭で身体的虐待や精神的虐待がある場合、場面緘黙や場面緘黙に似た状態を示すことがあります。この場合は、家庭への福祉的支援等が必要です。
●場面緘黙への対応や支援が十分でなく、緘黙の範囲が広がって全緘黙の状態となることがまれにあります。

※補足2
場面緘黙の症状の子どもがあわせもつことが多い状態は下記です。
診断の有無にかかわらず、苦手なことへの支援や対応が望まれます。

●吃音や言葉の理解、言語表現について、ことばに苦手がある場合は、言語面への支援が必要です。
●ASD やLD、ADHDをあわせもつ場合は、それらへの理解や支援が必要です。
●子ども自身が、自分と周囲の違いに気づく時期から、うつや社交不安症などの不安症のリスクが高まります。家庭と学校など周囲の理解が必要です。


※「かんもくネット」代表・臨床心理士の角田圭子さんにお話を伺いました。
角田さんは、臨床心理士として場面緘黙の子どもたちの支援の現場にも関わっています。

 

 

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