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障害者雇用 定着のためのヒント

記事公開日:2018年09月03日

障害者と企業がより良い関係で働くための方法を探る「障害者雇用 もっと両思いを増やそう!プロジェクト」。この春から、障害者雇用に新しい風が吹き始めています。その一方で番組には働く障害者の悩みも多く寄せられています。プロジェクト第3弾の今回のテーマは「定着」。明日から使えるヒント満載です。

うまく働くコツは職場の配慮と自身の工夫

「障害者雇用 もっと両思いを増やそう!プロジェクト」に雇われる側として参加してくれているのが、求職中の慶野千尋(26歳・ADHD)さん。実際にうまく働けている人はどんな工夫をし、そこにはどんなヒントがあるのでしょうか。

慶野さんが訪れたのは、都内で不動産管理業を営む会社。そこで働くのは事務職の田中さん(26歳・広汎性発達障害・入社9か月)。これまでアルバイトを転々としてきましたが、ここでは落ち着いて働き続けられています。田中さんの仕事は、データ入力。会社が管理するマンションの修繕履歴を打ち込んでいます。

画像(不動産管理業を営む会社で働く田中さんと慶野千尋さん)

この会社では、障害者への配慮としてさまざまな制度を用意しています。そのひとつがメンター制度。障害者1人につき1人、必ずメンターとして先輩社員がつきます。田中さんのメンターは、吉田佳江さんです。吉田さんは田中さんが働きやすくするために、さまざまな配慮をしています。

たとえば、1つ目は“過集中”を防ぐための配慮。
過集中になりやすい田中さんのために、1日に何度も声をかけ、体調の変化に気を配っています。田中さん自身も、自分でタイマーをセットして定期的に休憩をとるようにしています。

2つ目の配慮は「業務依頼書」。
耳から聞いただけでは情報を受け取りづらい田中さんのための工夫です。同じ部署のメンバーから田中さんにお願いしたい仕事が、納期とともに書き込まれています。すべて文書で一覧でき、納期も書き込まれているため、優先順位がつけやすいという利点もあります。

画像(田中さんが使っている業務依頼書の一部)

さらに、仕事はすべてメンターの吉田さんを窓口にすることで、整理が苦手という特性をカバー。隣の席にいる吉田さんのおかげで、田中さんは安心して仕事ができるそうです。

田中さんがうまく働き続けられているのには、本人の工夫もあります。田中さんは、この会社に入る前、外部の就労支援プログラムを受けていました。働き続けるためのノウハウを先に知ったことが、とても大きかったのだとか。

田中さんが受けたプログラムでは、パソコンの使い方といったスキルよりも、社会人としての基本的なマナーや、ストレスへの対処法に重点をおいています。田中さんは、これによって仕事で受けるストレスへの心構えができたのです。自立して働ける準備を整えていたからこそ、会社と良い関係を作れたのだそうです。

画像(企業で障害者雇用を担当している中川博英さん、障害者のための労働組合の久保修一さん)

慶野さんが訪問した田中さんの職場について、障害者のための労働組合・書記長、久保修一さんはこう話します。

「私は、この会社はすごく基本に忠実だと思っているんですね。というのは、メンター制度とか相談窓口を1人に決めるとかは、厚労省の合理的配慮のガイドラインにすべて書かれていることなんです。配慮という面ではこれ以上ない制度という見方もできますけど、雇った人を人材育成のテーブルに載せているのかどうかということに尽きると思うんですね。」(久保さん)

企業で障害者雇用を担当し、自身もうつ病当事者である中川博英さんはこう話します。

「私たちの会社ではSNSを使って、たとえば『休みます』とか、何か困ったことがあったときには相談できるようなシステムを作って、言葉では発せられないというときにはそういったものを活用して相談できる体制を作っていたりしています。」(中川さん)

久保修一の障害者雇用スパルタ塾

障害者のための労働組合で書記長を務める久保さんが、寄せられた声にちょっぴり辛口なアドバイス!
まずは満足できる仕事を任せてもらえないという悩みから。

「採用された当初は、法定雇用率達成のために私を雇ったと言わんばかりの仕事の少なさで上司に相談したら、『散歩してきてもいいし、ネットでも見ていたらいい』と言われ、心をくじかれました。とても差別されていると感じますし、モチベーションも下がります。」
(めーはんさん・精神障害・40代・就労して3年)

「配慮の行き違いというか、会社側は配慮している、働いている側はもう少し仕事をしたい。そこのコミュニケーションができてないのかなという気が、率直に感じます。入社当時にひどいことを言われていれば3年は勤まらないので、『遊んでていいよ』という言葉の前後に、たとえば『慣れるまでは』とか、『まず会社に来てもらうことが大事だよ』とかそういった言葉が入っていたのかなと。3年間で私も慣れてきたので、というような話を、最初の面談をした上司に伝えれば、たぶんさほど問題なく、『大丈夫?じゃまず、これから増やそうか』というようなコミュニケーションが行えるような気がしますね。
そもそも障害者雇用というのは労働契約で、法律で決められた契約行為のひとつ。
障害者雇用促進法の4条に、働く障害者は自覚を持って、自立に向けた努力をせよという一文があり、その次の第5条で、会社はその障害者の努力に対して応じる義務があるとあります。もし言いづらかったとしても言うのが義務ですね。ですから働く以上、こういった不満を抱えたのであれば、そのまま伝えても良いと思います」(久保さん)

画像(障害者のための労働組合・書記長 久保修一さん)

同僚に申し訳なさを感じているという声も寄せられました。

「難病があり車椅子を使用しながら一般就労しています。残業が続くと体力的に厳しいので最近、仕事量を減らしてもらったのですが、人手不足な職場で同僚は皆自分の仕事をこなすだけで手一杯な中、私の仕事まで引き受けてもらって私だけ早く帰ったりすることにどうしても抵抗があります。この申し訳なさとこれからどう向き合っていけばいいのか分からない。」
(はなこさん・30代)

「申し訳ない、謝ってという日々とどう向き合えばというのがありましたけど、これは向き合うことはできません。それを続けると必ず抑うつやうつなどになるはずです。その結果、働けなくなる。じゃあ、最初みたいに我慢して、無理して残業して働いていると、これも体を壊して働けなくなる。そうやって自分を追い込んでしまいますよね。自分で長く働くために申し出た以上、申し訳なく思わない。長く働くために言ったんだから、こんなことを思っていたら長く働けないというふうに割り切って、視野を広げる。そういった工夫が必要かなと思いますね。」(久保さん)

評価が認識のギャップを埋める手助けに

「みんなの声」に声を寄せていただいた方の1人、五位野岳史(37歳・ADHD)さん。自分に自信がなくて悩んでいるという状況から一歩踏み出したと聞き、取材させていただきました。

画像(五位野岳史さん 37歳・ADHD)

五位野さんは1年半前から、放課後等デイサービスで働いています。
ニックネームは「ごいちゃん」。子どもたちに慕われているにもかかわらず、「うまく対応できていないのでは」と思ってしまうのだとか。モヤモヤを抱えたまま悩みを深め、これまで3回、仕事を辞めたいと申し出たことがあります。

そこでこの日、五位野さんは上司に悩みを打ち明けることに。

五位野さん「結構モヤモヤしたまま、家に帰っちゃうことが多くて。今日も野球が終わったあとに、『終わりだよ』ってはっきり言えなくて、モヤモヤとしたまんま終わりにしちゃったらね。ちょっと。」
上司「『ごいちゃん有り難う!』とか『ごいちゃんファインプレー!』とか、声は現場ですごいかかってるじゃないですか。それでもやっぱり、圧倒的に足りない?」

職場の人は「できている」と伝えているにもかかわらず、五位野さんには届いていなかったのです。そこで、五位野さんから、日報を作って、その日の体調や困ったことを上司と共有したいとの提案がありました。翌日、五位野さんは、上司の武口さんと一緒に、1日を振り返れるシートを作成。自分自身の評価と職場からの評価を書き込んで、ギャップを確認できるようにしたのです。

画像(五位野さんの振り返りシート)

そして、子どもたちとままごと遊びをしたあと、初めての振り返り。
あれ?楽しそうに遊んでいたのに、遊びが△!?

五位野さん「女の子と遊んでるときね。遊びをもうちょっと提供できたらとかもうちょっと工夫できたらとか、もうちょっとのれたら面白かったかなと思ったりとか。もっと遊び方を広げられるように促すともっと良いのかなと思って、△ですね。」
武口さん「子どもが『暇!』ってなっちゃった?」
五位野さん「暇? そうだね。暇。そんなにはなってない。暇にはなってない。」 武口さん「だったらOKだと思うけどな。」

武口さんの評価は100点。
書くことで初めて、お互い認識のズレが埋まりました。その後、振り返りは毎日続けているとのことです。武口さんも忙しいため、見てもらえるのは、月に1回。それでも五位野さんとしては、書くことで、苦手なことを把握できるため、助けになっているそうです。

こうした対応について、「この場合、『大丈夫だよ』と口頭で励ますことに意味がない。また、振り返りよりも、五段階評価など数値で評価されることが重要」と久保さんは指摘します。中川さんも同様に「本人も一生懸命努力しているので、きちんと数字で評価してあげることと同時に、次のステップに進むためには目標設定が大切」だといいます。

最後に久保さんからは、「福祉と雇用はまったく別。障害者の前に従業員として見なければいけないので、厳しい。障害があってただでさえ大変なのに、もっと大変なことに挑戦するのだから、多少の荒波は承知の上だといえばフォローできる人もきっとたくさんいる。法律は残酷な面もあるがとても公平なので、どうか社会をすねないでもらいたい」という熱いメッセージをいただきました。

次回以降は、実際に両思いを増やすべく、プロジェクトをさらに進めていきます。
久保修一さんの「スパルタ塾」は引き続きWEB上で続けていきますので、乞うご期待!

初回放送「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction1」の内容は、記事「もっと増やそう両思い! 障害者雇用プロジェクト始まります」で読むことができます。第2回「障害者雇用もっと両思いを増やそう!プロジェクトAction2」の内容は、記事「障害者雇用プロジェクト お互いを知ることから始まる“両思い”」で読むことができます。

※この記事はハートネットTV 2018年7月23日放送「シリーズ ブレイクスルー2020→ 障害者雇用 もっと両思いを増やそう!Action3」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

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